角野隼斗(かてぃん)さん 取材後記

Hanakoママwebで3回にわたり、角野隼斗さんの取材記事を掲載しました。以下、取材までのいきさつや記事への反応を、個人的にまとめます。

取材対象としての角野隼斗さん

角野さんを知ったのは、4月の自粛期間中に観たピアノ動画がきっかけです。渋谷に1日だけストリートピアノが置かれ、4人のピアニスト達が「丸の内サディスティック」を演奏。4人とも個性的で「(ピアノの)時代が変わった!」と衝撃を受けました。

私は2020年1月まで中国に駐在していました(現在は、娘と二人で日本退避中)。政府のネット規制により、YouTubeを一切見られない生活だったので、自由な演奏スタイルにびっくりしました。

角野さん(当時はかてぃさんとして認識)は東大卒でピティナ制覇、という経歴が印象的でした。そして「ストリートピアノ文化が長続きするために」という文章を拝見して、一気に興味を持ちました。

実は、私、「日本におけるストピ文化の社会的意義」(硬い!)についていつか書きたいと考えています。2019年頃から設置台数も増え、テレビ番組でも人気ですよね。


しかし、盛り上がったものはいつかその存在意義を厳しく問われるものです。一部の人のもの、騒音、と今でもいろんな意見がありますが、角野さんは「キーワードは公益性でしょうか」と文章を結んでおられました。

・・・思慮深い!自由に語るけど、誰も傷つけない。バランス感覚がずばぬけている。

ちょうど、私は教育テーマをよく書いていたため、編集部に企画提案しました。しかし、「なぜ角野さんなのか?」というところで思いのほか難航。
「すごい人なのはわかる。でも、彼を取材することで、読者が子育てや教育への示唆を得られるのか?」
・・・確かに。周囲のママ達に事前調査しても、「完璧すぎる。下々の我々との共通点がはたしてあるのか?」と言われちゃいました。

こりゃいかん、ということで、企画を何度も練り直して、実現したのが今回の3回シリーズです。

もちろん初めておめにかかるわけで、しかも海外駐在やコロナを挟んでひさしぶりの人物インタビュー。私、めちゃくちゃ緊張してしまいました。カメラマンは張り切って450枚も撮影! 私のオーダーとおり、爆笑カットも撮ってくれました。

第1回 幼少期~小学校時代 
第2回 中高時代 
第3回 音楽家として

記事への反応

皆様はどんな感想を持たれましたか?

今まで角野さんをご存じなかった方々も関心を持ち、お勧めした動画にアクセスしてくださったそうです。ファンの方々の反応も、Twitterで拝見しましたが概ね好意的でした。丁寧にご覧いただき感謝いたします。

でも、深く話せる友人達からはこんな意見も。
「ハイレベル過ぎて、真似できない」
「東大も、ピアニストも、がんばっても両方無縁な人がほとんど」
「ゲームにはまっても、どうしようもない子だったら親は止めてたはず」

角野さんが優秀すぎるってところで、読者側が「思考停止」に陥ることもあるようです。私としては、何かひとつでも共感してもらえたら、と企画したのですが。やはり、人は「挫折・困難→努力→成功」という分かりやすいストーリーを求めるのか、などとしばらく考え込みました。

でも、今回の記事をきっかけに、子育てについて考える機会をもてたら、それだけで十分です。日々、家事・育児・仕事にと走り続けていると、考える時間をとることさえあきらめてしまいますから。

「自己肯定感」の呪縛

他に、私の周囲で反応が大きかったのは
第3回「流行りの『自己肯定感』について触れたかったけど、そんな質問がつまらなく感じた」というくだりでした。

「自己肯定感を育む声かけを」なんてよく目にしますが、私はだいぶ食傷気味。答えは、子どもの中にありますから。それをどう一緒に見つけて、信じて、見守るか。というか、子どもって別人格ですから、親がどうこうしようなんておこがましいのかもしれません。

それでも、私が娘と向き合う中で考えていることは・・・(だいぶ話がそれます、すいません)

いきなり、重たい話になって恐縮ですが、娘と接する時になんとなく思い浮かべること。
それは、アウシュヴィッツで生き残った人達の共通点を調べた調査結果です。
①どんなことにも、意味を見出す力
②状況や自分をコントロールできているという感覚
③なんとかする、できるという感覚
④他者への貢献、使命感
⑤ユーモア
いや~、5歳児を前にして、これ?って感じですが(笑)、これです。まさか収容所に入れられることはないと思いますが、「人間としての強さ、優しさ」が凝縮されている気がするのです。

「好き」が一番、と納得

「『好き』を究める、それを見守る」
今回、すとんと腹に落ちました。私も、両親にそうやって育ててもらいました。もしかしてわがまま?って思ったりもしましたが、自分で選んだことには責任持ちますし、覚悟します。

今も好きなことを仕事にしているので幸せです。普通は、海外のビジネススクールに行ってまでライターにならないので、ひそかに肩身が狭かったのですが、今回の取材で完全にふっ切れました。

世の中、周囲から反応が返ってくる仕事ってそうはありません。そして、拍手がもらえる瞬間なんてごくわずか。9割くらいは、自分と向き合い、自分の中で折り合いをつけてやっていくものです。それでも、手を抜かずに誠実に続けられるか・・・。これって「好き」じゃないとなかなかできません。

「でもさ、その好きが食べていけないことだったり、マジしょーもないことだったらどうするの?不幸になるってわかっているなら、なんとかしてあげるのが親じゃない?」
と、つっこむ友人。的を射すぎた指摘なので、これはしばらく宿題にさせてください(笑)。でも、幸せか不幸せかという価値判断も、子どものものだと思うんだけどなぁ。

終わりに

話が散らばりましたが、とにかく、角野さんは「しなやかで決して折れない」人だとお見受けしました。今後、どのような決断や挑戦をされようときっと深慮を重ねてのことでしょう、遠くから応援します。

電話で取材ご協力いただいた角野美智子さんにもいつかお話をうかがいたいですね。お母さまご自身が、どうやって今に至る価値観や子育て哲学をもたれたのか、とても興味があります。(角野美智子さん『「好き」が「才能」を飛躍させる子どもの伸ばし方』

若い男性が親子関係のことをきかれるなんて抵抗があるのでは?と、内心申し訳なく思っていたのですが、まったくそんな素振りを見せず話してくださった角野隼斗さん、そして突然の電話にも真摯に対応してくださった美智子さんに、改めて心より感謝申し上げます。

後日談:角野さんがお使いの、CASIOの真っ赤なプリヴィア(電子ピアノ)を購入しました。しかも弟夫婦まで同型同色を購入!親族一同、影響されています(笑)。

*この記事は、(株)イープラス様の許可を得て執筆しました。


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