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駐妻が見た中国㊱中国人ママ会に参加して考えたこと

2021.02.22by 岡本 聡子

Hanakoママwebリニューアルにともない、私が取材・執筆した記事を、関係者の許諾を得て、こちらに転載しています。

2018年より中国・広州に滞在中の5歳児ママです。独身時代は上海で暮らしたことがありますが、現地で子育てしてみると驚きと発見の連続。(現在、コロナによる退避のため、一時帰国中)英語メインの幼稚園に転入した娘。授業は英語、日本人生徒もいるけれど、同級生は7割が中国人。

6時間近く続いたママ会

最近、友達とけんかして幼稚園を休みがちな中国人クラスメイト、ルーシー。ファッションデザイナーであるルーシーママの発案で、交流会が企画されました。幹事は、クラスのお世話係で日本語堪能な中国人、通称ゆうこさん。ルーシーママは「今日の費用は、私に全部支払わせて」と気合十分です。

10組が参加したママ会ですが、日本人は私達親子だけでした。

降園後、門の前で待ち構えていたルーシーの車に乗り、親子3組で3時半にお店に到着しました。子ども達は、すぐに大きな遊び場に入って、大喜び。しかし、残りの参加者はなかなか現れません。

「皆、いつ来るのかな?」という私に、「帰宅したり、習い事に行ってから来るみたい」とゆうこママ。最終的に、全員がそろったのは18時でした。うーん、夕食会になってしまいました。私の見積もりでは、18時くらいには解散するつもりだったのですが。

延々と会は続き、21時を前にして「うち、もう寝る時間だし、明日も幼稚園があるから帰るね」と、思い切って切り出して、ようやくお開きとなりました。それでも「寝る時間早いね、うちは夜11時くらいまで起きているよ」と言われました。

私「朝、起きられるの?」

他のママ「起きられないから、遅刻する。仕方ないよね。学校は遅くとも9時半までには登園してっていうけど」

私「うちはバス通学だから、8時20分にはバス停だよ」

皆「はやっ! うちの子は、まだ寝てるよ。中国人は昼寝するから寝足りなくても大丈夫なんだけど(笑)」

子ども達にまかせておいても、日本人は昼寝せず、中国人は全員昼寝する、というふうにすっぱり分かれます。幼稚園側は、なるべく昼寝をさせたいようですが。

その晩、我々が寝たのは22時半。楽しかったけれど、親子とも疲れはてて爆睡しました。

10人中3人が妊婦さん!

ママ会には、我が家と家族ぐるみで仲の良いローラ一家も参加しました。両親はもちろん、シッターもついてきて、料理のとりわけや世話を焼いています。どうも大人の人数が多いと不思議に思ってきいてみると、他の家もシッターが来ていました。ママの代わりにシッターが来て、後半ママにバトンタッチするというケースも。

そして、何人かパパも参加。後で判明しましたが、不動産グループの経営者達なので、時間が自由になるそうです。

この日は、妊娠中のママが3人いました。「私、3人目妊娠中なんだけど、今、シッターが1人しかいなくて、大変なのよー。早く増やさないとね」と笑っていました。シッターが1人いればなんとかなる気がするけど……多分、家事担当のお手伝いさんがいるはずですし。

一人っ子政策が廃止されたため、街中で子どもがとても増えている気がします。特に、妊婦さんをよく見かけます。

「北京や上海に比べて、広州は暖かいから妊娠しやすい。だから広州は子どもが増えている」と周りのママは言います。

中国統計年鑑2018年版では、2017年の広東省の出生率*は13.7%。全国平均12.4%、北京9.1%、上海8.1%を大きく上回ります。広東省を含む南方地方の出生率は、いずれも全国平均を超えており、人口は増えています。一方、北部は概して出生率が低く、死亡率が上回る地方も多く、南北格差が生じています。

いわゆる「一人っ子政策」は1979年から2015年まで実施されました。しかし、人口動態の変化により急激な高齢化が問題となり、廃止されました。次いで2016年からは「二人っ子政策」が始まりました。こうして、いったんは、出生数が増えましたが、その後は伸び悩んでいます。教育費の高騰、20歳代女性の減少、都市部の非婚化・晩婚化などが原因とみられ、ますます少子高齢化に歯止めがかかりません。

ん? 3人目妊娠中のママがいましたよね。個別事情まではきけませんでしたが、広州の人口が増え、経済発展していくであろうと実感しました。

サプライズのお誕生日ケーキ。後ろに立つ女性はシッターさん

「私が、全部支払うわ」

ゆうこさんにも助けられ、私もなんとか会話に参加し、楽しい時間は過ぎました。娘は、クライメイトと走り回って遊んでいます。お誕生日のママがいたので、大きなケーキが運ばれ、皆でお祝いをしました。

最後に集合写真を撮って、いざお会計。予告どおり、ルーシーママが「私が今日は全部支払います!」と宣言。お菓子、ケーキ、夕食、遊び場料金と、おそらく7、8万円はかかりました。幹事のゆうこさんは「いやー、それはちょっと」と困っていましたが、他のママ達は「OK、ありがとう」。それなら払わせてあげましょう、という反応でした。

これが中国式なのか、お金持ち式なのかはさだかではありませんが、素直に受け入れるのがスマートなやり方みたいです。「次回もやりましょう!」と言ってお別れしました。こうして、代わる代わるおごりながら関係を深めるのか中国式なのですね。

後日、日本人ママ達にこの話をすると「ラッキーじゃん! 私も行きたい」vs 「どうして? びっくりするし、気を遣う」と反応が分かれました。

中国人との「誰が支払うか」問題は奥深い
日本人は、同じ立場なら割り勘が当たり前の文化です。一方、中国において割り勘は「その場限り」を意味するので冷たく受け取られます。そして、誰がその場で支払うかをめぐる駆け引きはなかなか難しいです。

中国人からの誘いを受けると、ほぼ彼らがおごってくれます。

最初は「どうして?」「もしかして私のこと好きなの?(いや~、恥ずかしい勘違いですね!)」「これをネタに、頼みごとをされるのでは」と疑心暗鬼になりました。でも、興味や好意をもった相手、迷惑をかけた相手にはおごる文化だとわかりました。

問題は、誰が支払うか明確でない場合。

たとえば、知り合って初めて、どちらともなく言い出して食事に行った時。最後は「私が」「いや、私が」とお勘定競争になります。実は私も、会計票のとりあいでとっ組み合いをしたことがあります。もう、デザートあたりからそわそわしちゃいます。

営業職として会食慣れしている夫も、中国人に敗れることが度々ありました。トイレに行くふりをしてお会計終了。これは日本でもよくありますね。恐ろしいのは、QRコードを読み込んでスマホ決済できる店がほとんどだということ。気づかない間に、テーブルの下で支払いが済んでいます。

夫が「うわー、やられたー!」と悔しがる姿を何度か見かけました。ここまでくると微笑ましくなります。

ルーシーママも、「支払わせてくれてありがとう、仲良くなれて嬉しい」という安心した様子でした。郷に入れば郷に従え、なんでしょうね。私もようやく感覚がつかめてきました。

*ここでは普通出生率を使用。計算式は、1年間の出生数/当該年の人口×1000

皆で集合写真(パパとシッターさんは写真に入らず)

中国については、2005年「上海のMBAで出会った 中国の若きエリートたちの素顔」(株式会社アルク)を加筆・改題し、2016年「中国のビジネスリーダーの価値観を探る」を出版。


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