見出し画像

人をやめたり

駅名を間違うこともなくなりぬ相模線さえ人をやめたり 相原かろ

『塔』2023年6月号

 かつては、駅に近づくと、車掌による駅名を告げる車内放送が流れた。人がその場で読み上げていたのだ。
 最近は、駅が近づくと、人工音声が駅名を告げる。
 比較すると、車掌は駅名を間違えたり、クセのつよいイントネーションであったり、人間味あふれていた。
 こうした変化を「人をやめたり」と表現したのが凄い。「人間をやめた」という慣用句が頭をかすめる。「相模線よ、お前もか」という嘆きが聞こえる。
 まるで、相模線が人であったような、人格を有していたかのような面白さが言葉の上で生じた。

「次はしゃけぇ、しゃけぇ」で笑う声はある我は笑わず社家駅なれば 相原かろ

『浜竹』