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ある意味駄作なんだけど偏愛してる映画『ボルサリーノ』

いままで観てきた映画の中で、自分的に「座右に置いておきたい映画」を少しずつ紹介していくコーナーです。


なんか、言っちゃえば「駄作」なんだけど、どこかで深く愛している映画ってありませんか?

ボクはわりとたくさんある。

その中でもこの映画は最右翼。
大好きだけど、見直すたびに「うわ、こんな駄作だったっけw」って笑っちゃったりする。

でも、なんか好きなんだよなぁ、この映画。

たぶんこの映画、ボクの人生の「ある時期の匂い」を思い出させてくれる映画なんだろうと思う。

匂いって言葉が適切かどうかわからないけど、それは中学高校と居候していた祖父母の家の居間の質感だったり、そこでの蛍光灯の下の食事だったり、祖父母との会話だったりする。

ひいては、中学の教室の様子。通学電車の混み具合。勉強部屋での悶々とした毎日・・・。

あの頃が、実在感を持って蘇ってくる魔法のような映画が、この「ボルサリーノ」なんですね。

これを観ていると、筋から離れて、ふと「あの頃」を彷徨っている自分がいたりする。

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いや、別に内容が郷愁系というわけではない。
普通のギャング映画だ。

1930年代のマルセイユを舞台に、ふたりの男がギャングとして成り上がる様子を描いたアクションもの。

なのになぜ、こんなに「あの頃」が蘇ってくるのか。

それはこの映画がテレビで何度も何度も再放送された超お馴染みさんだったからだな、と思う。

つまり、「日曜洋画劇場」やら「金曜ロードショー」やら「ゴールデン洋画劇場」やらで、ある年代、再三再四よく流れた映画なわけ。

そして、やたらこの映画を何度も観た。

そういうこともあってか、この映画を観ると、当時観ていたテレビの形、茶の間の風景、そばにいた人たち、会話、環境、学校生活・・・とカメラがグーッとひくようにどんどん当時の自分が見えてくる。

目は映画の筋を追っていながら、心はあの頃を彷徨っている。


具体的にはボクが中学高校の頃だから1975年くらいからの5年間くらいかな。

この「ボルサリーノ」をはじめ、「再三再四流れた映画」がたくさんある。

「小さな恋のメロディ」
「ある愛の詩」
「個人教授」
「ベン・ハー」
「クレオパトラ」
「タワーリング・インフェルノ」
「ポセイドン・アドベンチャー」
「エアポート75」
「風と共に去りぬ」
「戦場に架ける橋」
「ロミオとジュリエット」
「ゴッドファーザー」
「パピヨン」
「大脱走」
「ジャイアンツ」
「アマゾネス」
「ひまわり」
「チップス先生さようなら」
「青い体験」
「荒野のガンマン」
「スティング」
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なぜかこれらの映画はテレビでよく流れた。
使い回されていた、と言っても良い。

居候していた祖父母の家の茶の間で、いつ「映画なんか観てないでそろそろ勉強しなさい!」って言われるかドキドキしながら観ていたテレビ。

もう祖父母は亡くなってしまったけど、例えば知り合いがボルサリーノの帽子をかぶっているのを見るだけで、元気だった祖父母の姿が蘇ってくる。


そう、表題の「ボルサリーノ」というのは、高級帽子メーカーの名前だ。

単なるチンピラだったアラン・ドロン(シフレディ)とジャン=ポール・ベルモンド(カペラ)が、ふたりで協力して暗黒街の顔役にのし上がり、当時の成功者の象徴であった「ボルサリーノ」をかぶるまでに出世する物語。

時が流れて、ボクはいまや帽子をかぶるようになったけど、いまでも帽子屋さんでボルサリーノを見ると、この映画の主題曲が頭の中に響き渡る。

価格が高すぎて、この帽子にはとてもじゃないけど手が出ないんだけどね。


当時はフランス二大スターの初競演ということでも話題になった。

アラン・ドロンは「太陽がいっぱい」「地下室のメロディ」「冒険者たち」「シシリアン」などでもう押しも押されぬ大スター。

ジャン=ポール・ベルモンドも「勝手にしやがれ」「気狂いピエロ」「暗くなるまでこの恋を」などでヌーヴェル・バーグの旗手的大スター。

まぁフランスではベルモンドの方が遙かに人気があったようなんだけど、日本ではドロンの方がおばちゃま方を中心に遙かに上だった。


で、最初は仲良く撮影に入ったふたりだったらしいけど、最後には犬猿の仲になったらしい。

製作がアラン・ドロンだから、まぁ自分のほうを贔屓するわな。そういうこともあって最後にベルモンドを殺してしまうのだろうと思う。

ほんと、唐突に死ぬしw

だから続編「ボルサリーノ2」(一応、続編が出来るくらいは人気になった映画なのだ)では、ベルモンドはちらっとしか出てこない。


内容的には、本当に中途半端。
でも、いい場面も多く、なんか偏愛してしまう。そんな映画。

いいなぁボルサリーノ。
やっぱひとつくらい買おうかな。
こんな高級な帽子が似合う自分になっている自信がまったくないのだけれども。


Borsalino

Jacques Deray
Alain Delon, Jean-Paul Belmondo,Michel Bouquet, Catherine Rouvel, Corinne Marchand

1969年製作

監督・・・・ ジャック・ドレー
製作・・・・ アラン・ドロン
原作・・・・ ユージェーヌ・サコマノ
脚本・・・・ ジャン=クロード・カリエール
      クロード・ソテー
      ジャック・ドレー
      ジャン・コウ
撮影・・・・ ジャン=ジャック・タルベス
音楽・・・・ クロード・ボーラン
編集・・・・ ポール・カイヤット
キャスト・・ アラン・ドロン
      ジャン=ポール・ベルモンド
      ミシェル・ブーケ
      カトリーヌ・ルーベル
      フランソワーズ・クリストファ
      コリンヌ・マルシャン



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