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腰が抜け、毛も抜け、魂も抜けた。「上原ひろみ JAPAN TOUR 2019 “SPECTRUM”」


土曜日、上原ひろみ10年ぶりのソロライブ「JAPAN TOUR 2019 “SPECTRUM”」に行ってきた。

とりあえず、まずはこれ(↓)を聴いてくれ。
もう、このYouTubeを見るだけで、あなたはこれをリアルに体験できたボクに嫉妬するだろう。


なんというか・・・
このYouTubeを見て、なんかコメントを書こうと思って「脳みその中の言語辞書」にアクセスしようとするんだけど、なんかアクセス不全になる。

「すごい」「すごすぎる」「マジすごすぎる」とかいう語彙しか見つけ出せて来れない。そんな感じ。

ライブだとそれが二乗くらいされる。
上原ひろみが「会場の観客たちと生涯に一度きりの音楽をいっしょに作っていくよ」というスタンスで弾くので、もう超絶な体験になる。

なんだろう、総毛立つ感じ。
いや、毛はない。
知ってる。毛はない。
ないんだけど、総毛立つ。
なんなら毛穴から抜け飛んでいく。

ボクたちのそういう総毛立ちが、上原ひろみをよりドライブさせる。
そんな空気というか磁場が確かに醸成されるのだ。

いろんな演奏家をライブで見てきたが、こういう磁場は、あとはグスターボ・ドゥダメルで感じたくらいかも。


上原ひろみを初めて目撃したのはたしか十数年前。
ハンク・ジョーンズさんのCMを撮った流れで、彼とそれなりに親しかったボクは、これで初めて上原ひろみを見たのだった。

この時はそれほどとは思わなかった。
まぁこのくらいうまい人はたくさんいるからね、という感想。
でも、こんな強烈な大御所たちと共演できるんだから、かなりすごいんだろうな、という敬意は持った。

その印象が変わったのは、矢野顕子とのデュオのライブに行ったとき。

「なんじゃこりゃー!」と思った。
下(↓)のはライブ・クリップなのだけど、少しはこのデュオ・ライブの凄さが伝わるといいな。
ほんと、誰かがコメント欄に書いているけど、「神々の遊び」と呼ぶのがふさわしい。


ボクは矢野顕子は毎年欠かさずライブに行くくらいは好きであるが、そんなボクでも矢野顕子のほうをあまり見なかった。上原ひろみに目が釘付けだった。

もう、なんだか仕草のひとつひとつが可愛いんだけど、いったん弾き始めるととんでもない存在感で我らがアッコちゃんを煽りまくるのだ。

なんか、途中から天才アッコちゃんが少し不憫に思えたくらい。
もちろんアッコちゃんも超うまいんだけど、上原ひろみはちょっと別の景色を見ている感じだった。

あと、このライブのときに印象的だったのは、ある曲をふたりで弾き始めたとき、上原ひろみが演奏を急にやめてアッコちゃんに寄っていき、なんかコソコソ言いながら鍵盤を指さしているのである。

どうも、アッコちゃんのピアノに、調律が狂っている音がひとつあったらしい。
で、結局そこに調律師を呼び、調律を待つ間、演奏はもちろんできないので、楽しいトークライブになったのだが(観客としては超お得)、このとき、アッコちゃんはショックだったと思う。

アッコちゃんが違和感をもたないくらいな狂いなのだ。
それを、別のピアノで弾いていた上原ひろみが気づいてしまう。。。

なんか、怪物感あったなぁ。。。


今回のライブは、すみだトリフォニーホール

上原ひろみは、学生時代、錦糸町駅前の「魚寅」でバイトしていたらしく「なつかしい」とMCで言っていたが、「このホール、宇宙船みたいで好きなんですよね」とも語って、笑いを取っていた。

とはいえこのホール、本当に音がいい。

今回は特に「上原ひろみのピアニシモがものすごく美しかった」という印象なんだけど(打楽器みたいにピアノを叩くフォルテシモが取り上げられがちな上原ひろみだけど、今回は本当にピアニシモが美しすぎて鳥肌が止まらなかった)、それも、このホールの音響の素晴らしさあってのことだったかもしれない。

とにかくピアニシモが滑らかかつキラキラで耳に過不足なく届く。
とにかくそれが印象的だった。


どの曲も素晴らしかったけど、特に良かったのは『Rhapsody in Various Shades of Blue』。

ガーシュウィンの『ラプソディ・イン・ブルー』はもう大フェイバリットなのだけど、この曲を軸にして、いろいろなブルーを弾いていく。

これはもう、本当に名演で、弾き終わった瞬間に会場総立ち。スタンディング・オベーションであった。

あぁ、この曲のためだけに、今日のライブ・アルバム出して欲しいレベル。二度と体験できないからいいのだけど、でも、なんとかもう一度体験したい演奏だった。

すごすぎるわ、上原ひろみ。
腰も抜けるし、毛も抜けるし、魂も抜けるわ。

いま願うのはただひとつ。

どうかケガしないでください。

もう、とにかく指や手や腕が傷つきそうなあらゆることから遠ざかって、ずっとケガせず、あなたが成長しつづける姿を見せてください。

ほんと、伏してお願いします。



最近では、レキシとの競演「オシャレキシ」が超楽しい。


※※
当日、会場に以下のビデオのディレクションをした古橋 太海 (TAKAUMI FURUHASHI)さんが来ていたらしい。これもいい曲。

Hiromi - Mr. C.C. (Official Video)



※※※
上原ひろみ、顔ハメパネルが好きらしく、彼女の希望で会場にパネルが置いてありましてw

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古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。