スクリーンショット_2020-01-02_15

『美しく青きドナウ』はクラウス指揮のを一度は聴いて欲しい!


2020年のお正月、いかがお過ごしでしょう?

佐藤家はここ10年くらい、ボクの両親、義母、叔母を我が家に迎え、家族3人を含めた7人で過ごしている。

ボクの厄介なアレルギーのせいで、「お正月なのに魚介系おせちが出ない」という申し訳ない事態になってしまっているのだけど、なんとか文句を言わずに今年も来てくれている。ありがとう。

そうは言っても今年は「ぶり大根」は出した。
ボクの大好物なんだけど、見て見ぬ振りをしてスルー。香りもなるべく嗅がないようにひっそり工夫した。今年も試練多き年になりそうだ。


元日1月1日の夜、いつもボクたちはウィーンフィルの「ニューイヤーコンサート」(NHK)を観る。

世界90ヵ国以上に中継され、4千万人以上が観る毎年恒例のアレ。

このコンサート、毎年、指揮者を変え、誰が指揮するかで話題になるのだけど(2002年に小澤征爾がアジア人として初めて指揮したときはとても話題になった)、今年の指揮はアンドリス・ネルソンス
ボストン交響楽団とライプチィヒ・ゲヴァントハウス管弦楽団の若き音楽監督(41歳)。


ボクは30代にとてもよくワルツを聴いていた時期があって、そのころ数人の指揮者で聴き比べもよくしていた。

カラヤンの古いのやクライバー、ボスコフスキー、ワルツ王アンドレ・リュウ、マゼール、アーノンクール。

でも、どうやっても彼を越えるのは難しかった。

その指揮者の名は、クレメンス・クラウス(Clemens Krauss)。

画像2


ハプスブルク家のご落胤と言われている彼は、実はこの「ニューイヤーコンサート」の生みの親。

聴けばすぐわかるけど、本当に粋で上品で典雅そのものな演奏するのである。

カラヤンもクライバーもボスコフスキーもアンドレ・リュウもマゼールもアーノンクールも悪くないんだけど、このクレメンス・クラウスの「粋で上品で典雅そのもの」な指揮にはかなわない・・・。というか、クラウスしかあの時代のウィーンを再現していない


昨晩のアンドリス・ネルソンス、若くて生き生きした演奏でいいんだけど、どうしても不満が残る。

なんと言ったらいいのだろう。

ネルソンスのは、演奏曲。
クラウスのは、舞踏曲。

とでも言えばいいだろうか。


クラウスのは宮廷のフロアで貴族たちが踊っている光景まで目に浮かぶ。
ワルツはやっぱり踊るための音楽で、それを見事に体現してくれている演奏だ。

特にそれを感じるのは『美しく青きドナウ』
この超有名な曲は、有名だけあっていろんな指揮者の版が出ているから聴き比べがしやすいんだけど、クラウスのを一度聴いてみてほしい。

とにかく「典雅」。
典雅、なんて言葉いまどき使わないけど、思わずアタマにその言葉が浮かぶような演奏。

青きドナウの有名なフレーズ「ちゃららら〜、ちゃっちゃっ、ちゃっちゃっ」のあたりの「ちゃっちゃっ」が、ネルソンスなら「ちゃっちゃっ、ちゃっちゃっ」とフラットなんだけど、クラウスがやると微妙に「ちっ ちっ、ちゃっちゃっ」と前半の「や」が大きくなり、微妙にテンポをはずす。

そこがもう、なんか粋の極み!

下のYouTubeの一曲目に入ってるからぜひ聴いてみて。
冒頭から1分40秒あたりからの「ちゃららら〜、ちゃっちゃっ、ちゃっちゃっ」のあたりに注目して聴いてみて!

このYouTube、楽曲著作権管理団体の許可を得たものらしいので、曲名含めてちゃんと紹介しておきます。有名曲ばかりなので、わりとお得。
ちなみにクラウス、1954年には亡くなっているので映像はないし、録音もモノラルです。

クレメンス・クラウス指揮 ウィーン・フィルハーモニー管弦楽団

1. ワルツ「美しく青きドナウ」  
2. ワルツ「春の声」 
3. ワルツ「ウィーンの森の物語」 
4. アンネン・ポルカ 
5. 喜歌劇「こうもり」 序曲  
6. 常動曲 
7. ピチカート・ポルカ 
8. ポルカ・マズルカ 「とんぼ」  
9. ワルツ 「天体の音楽」
10. ポルカ 「観光列車」 
11. ワルツ 「我が人生は愛と喜び」 
12. ポルカ 「休暇旅行で」 
13. ラデツキー行進曲 


あー、なんか微妙なんだけど、悶えるくらいいいw
ステップ知らないけど、ステップ踏みたくなる!

これぞウィナーワルツ!
さすが生粋のウィーンっ子!
さすがハプスブルグ家のご落胤(噂)!
さすがニューイヤーコンサート生みの親!

クラウスが亡くなった時は一般市民までが半旗を掲揚して悲しんだ、と言われるぐらいウィーン市民に愛されただけのことはある。


・・・まぁこんなに強調するほど、ボクはウィナーワルツを知らないし、本当の「典雅」、本当の「粋」などは、ウィーンの貴族にしかわからないだろう。

でも、ボクなりに、本当にそう感じ、すごく愛してる。

音楽なんてそんなもんでいいと思うし、そう思わせてくれるクラウスに感謝感謝である。

あぁいいワルツのコンサートに行きたいな。
今年は行こう。



ちなみに、この「ニューイヤーコンサート」ではアンコールとして演奏される3曲のうち、2曲目に『美しく青きドナウ』を、最後の曲に『ラデツキー行進曲』を演奏するのがならわしとなっている。
そして、必ず 『美しく青きドナウ』の冒頭で一旦客席から大拍手が起こり、演奏を中断され、指揮者およびウィーン・フィルからの新年の挨拶がある
知らない人は「え? なんで演奏中断するの?」ってびっくりする。

※※
ちなみに、来年の「ニューイヤーコンサート」は、なんと大御所リッカルド・ムーティだそうだ。「ニューイヤーコンサート」では6回目の指揮。




古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。