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「宵越しの体力持ってんじゃねえ」

明日の言葉(その27)
いままで生きてきて、自分の刺激としたり糧としたりしてきた言葉があります。それを少しずつ紹介していきます。


ずぅ〜っと昔にやっていたNHK朝の連続テレビ小説『雲のじゅうたん』(1976年放送)の一場面をなぜだか妙によく覚えている。

なんと44年前の朝ドラだ。
ボクは15歳。なんでこんな一場面を覚えているのか、ボクも不思議だ。

主人公の浅茅陽子が夜眠れずに何度も寝返りをうっていると、隣に寝ていた父親役の中条静夫がこう言うのだ。

「寝られないのか。寝られないのは一日を精一杯生きていないからだ。精一杯生きていればちゃんと疲れて寝られるはずだ」

みたいなこと(正確には覚えていない)。

当時中学3年生だったボクはご多分に漏れずダラダラと生きていたので、この言葉は妙に胸に響いた。

あぁボクは今日も精一杯生きなかったなぁ、さぼりまくったなぁ、だから寝られないんだなぁ、とか、マジメに反省したものである。

その「なんとなく後ろめたい感じ」を今もクリアに覚えている。

ただ、この言葉の弱いところは「一日がすでに終わった後に、振り返って反省させられる」ことだ。

一日を精一杯生きなかったことを反省しながら寝ても、後味悪くていい気持ちがしない。
というか、もっと寝付きが悪くなる。
だからいまひとつ効果がなくて、ボクの中で残念な言葉になってしまっていた。


でも大丈夫。
ボクはもうひとつ、「いい言葉」を持っている。
もっとリアルタイムで刺激になる言葉。

「宵越しの体力持ってんじゃねえ」



たしか、15年くらい前に、雑誌「R25」で見つけた泉谷しげるの言葉だ。

前後もちゃんと引用してみる。

「"疲れないのか"って言われるけど、馬鹿言っちゃいけないってんだよナア。疲れるためにやってんだからサ。外に出て、疲れないようにしようったって不可能だこの野郎。思いっきり疲れるようにやれい、そしたらウチ帰って寝られるじゃん。宵越しの体力持ってんじゃねえ、吐き出して来い、全部」


この言葉は、その当日、寝る寸前までずっと効くのがいい。

ん? まだ疲れてないぞ?
体力残ってるぞ?
だったらもうひと踏ん張り、がんばってみようかな!

とかね。

そうでもしないと、隙あらばさぼる。
そう、鞭打たないとすぐさぼる。
楽しよう楽しようとする。
こうして鼓舞しないとすぐ体力温存したまま寝ようとする。

いやいや、すっきり使い切ろう!
せめてもうちょいがんばろう!

寝るまでに体力なるべく使い切っておこう!


・・・もちろん翌朝に引きずるくらい疲れてはいかんよ。
そして「働き方改革」の今だ。
もっと働こう、という意味でももちろんない。

ただ、今日分の体力は使い切ろう。
温存したまま眠ってもあんまり意味ないし、寝付きも悪くなる。


ボクの中の泉谷しげるが今夜も叫ぶ。

思いっきり疲れるようにやれい、そしたらウチ帰って寝られるじゃん。
宵越しの体力持ってんじゃねえ、吐き出して来い、全部!


あ〜面倒くさいオッサンだけど、まぁその通り!

こら、自分! 
体力使いきっちまえよこの野郎。
出し惜しみしてんじゃねえ!



古めの喫茶店(ただし禁煙)で文章を書くのが好きです。いただいたサポートは美味しいコーヒー代に使わせていただき、ゆっくりと文章を練りたいと思います。ありがとうございます。