アメリカ食品医薬品局（FDA）がうつ病治療に初の即効性抗うつ薬を承認しました。その抗うつ薬というのがオーヴェリティです。

このオーヴェリティ、一見するとかなり画期的な抗うつ薬なのかと思いきや、既存の薬の組み合わせで再現できることがわかったので書いてみようと思います。

抗うつ薬オーヴェリティの組成

まず、今回FDAから認可を受けたオーヴェリティは二つの有効成分の組み合わた薬となっています。その二つというのが、デキストロメトルファンとブプロピオンです。

一つ目のデキストロメトルファンというのは、日本においてはメジコンという商品名で販売されている咳止め薬です。これはよくメンヘラ女子などがOD（オーバードーズ）の際に使用していることで有名です。

一応、メンヘラ系配信者のくあちるさんがメジコンについて解説している動画があるのでそれをここに貼り付けておきます。

新規抗うつ薬オーヴェリティ1錠の中にはこのデキストロメトルファン45mgが含まれています。メジコン1錠の中にはデキストロメトルファンが15mg含まれているので、45mg摂取するにはメジコンを3錠摂取すると良いことがわかります。

また、オーヴェリティの二つ目の有効成分というのがブプロピオンです。ブプロピオンはオオサカ堂などの個人輸入サイトなどで購入することができます。商品名としてはブプロンとかウェルブトリンとかで検索してもらうと検索結果に表示されます。

オーヴェリティ1錠にはこのブプロピオンが105mg含まれているとされています。ブプロンやウェルブトリンには1錠でブプロピオンが150mg含まれていることがほとんどなので、2/3錠ほど摂取すればオーヴェリティ1錠に匹敵する効果を得られることになります。

デキストロメトルファンの効能

では次にメジコンに含まれているデキストロメトルファンの効能について深掘りしていきたいと思います。

まず効能の一つ目としてはノルアドレナリン再取り込み阻害効果があります。ノルアドレナリンはやる気や気力の充実に必要とされている神経伝達物質です。なので、元気がない系のうつ病に効果があると思われます。

また、デキストロメトルファンはNMDA受容体拮抗薬としても作用します。NMDA受容体拮抗薬は認知症の治療薬として使われています。これは過剰なカルシウムイオンの流入をブロックして記憶の情報伝達を整えるとともに、神経細胞を守る作用として働きます。

さらにデキストロメトルファンはシグマ1受容体を刺激してセロトニンレベルを上げる作用もあります。セロトニン濃度が脳内で上がると、抗不安作用が現れたり、抑うつ気分が抑制されたりします。

同じようにシグマ1受容体を刺激する薬には、SSRIのフルボキサミンなどが挙げられ、抗うつ薬と同じような作用があることがわかります。薬をオーバードーズしてしまうメンヘラ女子などがメジコンをよく使うのには、抑うつ気分に効いているという側面があるのかも知れません。

ブプロピオンの効能

次はブプロピオンの効能について解説していきます。ブプロピオンは禁煙補助薬として使われていて、脳内のドーパミン濃度を上げてくれる薬です。

外国では抗うつ薬として認可されている国も多く、SSRIやSNRIが効かなかった患者に試す薬の代表としても知られています。

また、少ない効果ではありますが、ドーパミンに加えてノルアドレナリンの再取り込み阻害効果もあり、脳内でノルアドレナリンの濃度を上げてくれます。よって、ノルアドレナリンとドパミンのダブルアップ効果により、ADHDに対する第2選択薬としても使われている背景があります。

日本国内の治験でも抗うつ薬としての認可を目指していましたが、残念ながら効果不十分ということで治験が途中で中止になってしまい、現在は個人輸入でしか入手する方法がない状態です。

しかし、アメリカなどの外国では抗うつ薬として用いられている事実から、オーヴェリティの組成の一つとして組み入れられていることには何の不思議もありません。おそらくオーヴェリティを開発した研究者も、ブプロピオンの抗うつ効果に着目して開発したのだと思われます。

オーヴェリティの摂取方法

オーヴェリティは現在の日本では認可されていませんが、メジコン3錠とブプロピオン2/3錠を一回に摂取すれば、理論的にはオーヴェリティ1錠を摂取したことと同じになります。

またオーヴェリティの服用方法としては1日1回の服用を3日間連続して継続したあと、1日2回の服用に増量することが推奨されています。

また、オーヴェリティの成分の中にブプロピオンが含まれていることから、痙攣のリスクがあります。

てんかんやパニック障害の症状を悪化させてしますリスクがあるので、そうした疾患を持っている人はくれぐれもオーヴェリティを試す際は気をつけましょう。