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日本でお伝えしたかったこと

これからnoteも活用しようと思い、アカウントを作って見ました。ブログ・ツイッター以外にも、こちらにも色々と思ったことを書いていこうと思います。

今回、日本に1週間滞在してきました。その間に京都で開催された日本癌学会と、渋谷ヒカリエでのトークイベント「やさしい医療がひらく未来」に参加して発表してきました。そこで、お伝えしたかったことを、ここにまとめておきます。

伝えたい深刻な事態

情報新時代を向かえ、SNSを介して誰でも情報発信できる時代になりました。それに伴って、不正確ながん治療情報がネットに溢れるようになりました。日本医大のチームの調査によると、ネットに広がる情報のうちで正確なものはわずかに1割ほどと報告されています。

また、不正確ながん治療情報が書かれた書籍も急増しました。私が、アマゾンのランキングトップ12位(2019/9/12時点)に入る書籍を全て読んで確認したら、科学的に正確な内容で書かれた本はわずかに3冊だけでした。真面目に本をたくさん買って勉強すると、とんでもない治療を受けてしまう危険があります。

癌治療はこの10年で大きく進歩しました。しかし、不正確ながん治療情報がネットや書籍で拡大して、それに騙されてしまい、病院での適切な治療を受けない患者が増えてしまっています。ひどい情報のために病院にたどり着かない患者がいるのです。

どれだけ深刻なのかを、中山祐次郎先生が実際に体験されたことを書かれた記事を抜粋して紹介します。このような事態が本当にたくさん起こっています。

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不適切な情報の広がりは患者の命を奪っています。これは本当に深刻な事態です。私はそれに大変なショックを受けていて、その状況を何とかしたいと情報発信を続けています。

事態は大変に深刻です。しかし、政府・学会・病院・医療関係者はその深刻な事態を正確に把握していません。なぜなら、医療は病院に来た人に対して行われ、病院に来た人に向けてデザインされているから、病院にたどり着かない人は対象となっていません。

何が不足しているのか?

まず、ひどい情報が広がるのを取り締まらずに野放しにしているのが問題です。「OOを食べればがんが治る」のような情報は短絡的でわかりやすく、人の興味をそそります。藁にもすがる思いのがん患者さんは惹かれてしまいます。それらを取りしまるしっかりとした法整備が行われていないことが、まず大きな問題です。徐々には行われていますが、まだまだ不足しています。

また、不正確な情報に惑わされないためにも、正確でわかりやすいがん医療情報の発信が必要です。しかし、日本では正確な情報は完全に不足してしまっています。

不足する理由は、政府・学会・病院が事態の深刻さを正確に把握しておらず、情報発信に対してしっかりと予算と人材をかけていないことがあげられます。米国と比べても、政府・学会・病院が発信している情報の量は格段に少ないです。

もう一つの不足している理由は、医療システムは病院に来院した患者に対しての行為に報酬を払うシステムになっているため、病院が情報発信をすることに具体的なメリットがないことです。昨今は、保険点数の引き下げのために、どの病院も厳しい経営状態ですので、そこに多額の予算をかける余裕がありません。

結果として、私のようなごく一部の医療者個人の情報発信に頼っている状況となっています。これには限界があります。

日本では、医療情報発信はごく一部の医療者が行う趣味のように考えられています。私も情報発信をしていると、他の医療者に「良い趣味をお持ちですね」とか、「そんな遊びをする時間が良くありますね」などと言われます。しかし、私は情報発信を趣味とは一切思っていないし、遊びでもありません。情報発信は命を守るための医療だと思っています。

情報発信も医療の大事な一部ですが、完全に欠けてしまっています。今こそ、その大事さをしっかりと認識して、ちゃんとシステムとして情報発信をしていくべきだと思っています。私はがん情報の話をしていますが、これはがんにとどまらず他の医療分野でも起こっている問題です。

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日本癌学会で訴えたこと

日本癌学会のシンポジウム「続・10年後のがん研究」に参加しました。各分野のエキスパートが集まって、今後のがん研究について討論するシンポジウムでした。

私はこの会で、日本で詐欺的治療があふれる酷い現状を報告して、問題の深刻さを癌研究者/学会が認識して、組織的な情報発信をするなどの適切な対処をしないと、標準治療・癌研究の信頼は揺らいで、癌患者/癌医療/癌研究を守っていくことはできないと訴えました。

実は、日本癌学会でこの話題がしっかりと扱われたのは初めてでした。医師/研究者は問題の深刻さを知らないことが多く、残念ながらちゃんと議論されたことがありませんでした。

今回、癌患者がおかれている現状と、医療/研究を脅かしている問題を知ってもらったことで、医療界が情報発信をしていくことの大切さを知ってもらえたのではと思っています。会場からは大きな反響をもらい、具体的な新たな動きにつながる感触も得ました。今後の展開が楽しみです。

本当に、私に発表する貴重な機会をくださった座長の平田先生・大西先生に心から感謝いたします。

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ヒカリエのイベントで出会った患者さん

ヒカリエのイベントでも、同様に深刻な問題があること、対策が必要なことをお話しさせてもらいました。

その会場のランチタイムに、一人のがん患者さんがお声をかけてくださいました。その方はがんと診断後に、嘘情報に影響されてしまい、標準治療を頑なに拒否して、がんに効くという食品などをひたすら試していたそうです。

その時に、私のTwitterに出会って、自分が大きな思い違いをしていることに気がついたそうです。それから標準治療に戻ることができて、現在は安定しているとのことでした。

涙目で「大須賀先生には命を救っていただいた」と感謝して下さって。こちらも涙目でした。自分がやってきたことが間違っていなかったと思い、本当に嬉しかったです。

おそらく、私のおかげだけではなくて、良い主治医の先生にも恵まれて、現在があると思うのですが、私の情報発信がきっかけとなったというのは本当に嬉しいことでした。

ぜひ、皆さんには医療情報発信は大事な医療の一部ということを知ってもらいたいと思っています。そして、皆さんのご協力をいただきたいです。こういう問題があるということを拡散して、何とかしてくださいと声を上げてもらえることが、政府・学会・病院・医療者を動かす力になると思っています。それが新たな法整備や、正しい情報発信を増やすことにつながるとおもっています。がん患者さんが安心して適切な治療を受けられるようになることを切に願っています。

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ありがとうございます!
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大須賀 覚

アメリカ在住のがん研究者。ひどい医療情報が広がる世の中で、どうしたら患者さんを救えるのかと考えています。

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コメント1件

民間療法の腐った治療も糾弾されるべきですが、そもそも現代医学や医療が万全ならばこのようなクズ的治療に横槍を入れられることはなかったはず。医学がデータ重視の科学であるならば、医療界は皆そろって同じ治療レベルを提供できるはず。なのに薬剤や医療技術も医師や病院によってバラツキがある、これは一重に無限小で構成された人体に対する認識の甘さが医療の選択肢を無秩序にしていると思いませんか。民間療法、現代医学、薬剤、技術、医師の厳正なる選別の時が来たと僕は考えています。医療に不死も絶対もありえません、だからこそ医師免許がありさえすればなんでもOKは絶対許せない、命をあずかる聖職だと自覚できない連中は医療の世界から撤退すべきだと個人的に思っています。それから病魔に対する恐怖だけで医療を受けることを強制される日が来ぬことを切に願います。もし医療自体が舵取りを誤れば人類に未来はありませんから。
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