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君たちはどう生きるかで思い出した

「君たちはどう生きる」が話題になっている宮崎駿監督だが、岡山に「千と千尋の神隠し」のモデルになっているのではと言われている旅館があるらしい。湯原温泉の「油屋」で名前まで映画と重なっているし、外観も似ている。

千と千尋で登場人物がマントをかぶると鳥になるシーンが出てくる。あれは中国の清時代の怪奇物語集、「聊斎志異」が元ネタだ。作者の蒲松齢は科挙の試験に落ち続けた人物だが、試験勉強のかたわら、各地の怪異譚を集め物語化した。水木しげるが、「聊斎志異」が好きなのは、趣向的に当然と言えば当然で、ゲゲゲの鬼太郎にも出てくる「画皮」という妖怪も「聊斎志異」から。あと、漫画だと「うしおととら」の藤田和日郎にも影響を与えていますね。

「聊斎志異」は海外にも影響を与えている。「我と汝」で有名なユダヤ人宗教哲学者マルティン・ブーバーが「聊斎志異」の一部を英訳からの二重訳だろうがドイツ語翻訳し、「中国幽霊・恋愛集」として上梓している。これを読んで絶賛したのがカフカで、「変身」にもなんらかの影響を与えているのかもしれない。中国の幻想譚と、ユダヤ教世界では文脈が全く異なるのだが、何か通じるところがあるのだろうか。

「百年の孤独」で知られる南米の作家ボルヘスも「聊斎志異」が好きで「バベルの図書館」という作品では、聊斎志異から訳した14編が収められている。ウンベルトエーコの「薔薇の名前」に出てくる図書館は、ボルヘスの「バベルの図書館」をイメージしている。聊斎志異→ボルヘス→エーコと線が引けるわけだ。

「薔薇の名前」の影響をもろに受けていると思われる、日本の小説が二階堂黎人の「聖アウスラ修道院の惨劇」と京極夏彦の「鉄鼠の檻」でどちらも宗教ミステリとでも呼ぶべきジャンル。ミステリとしての仕掛けもさることながら、宗教的な知識や理解が必要。

洋の東西を問わず、人間には不思議な話にひかれるところがあるということか。

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