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レコード針の寿命信仰、私は「針は減らない派(ただし相当の手当てをしたうえで)」

レコードといえば「針が減る」といわれてます。あるいは「溝が擦り切れるまで聞き込む」といった表現もあったりしますが…(この例えが通用しなかった時期がありましたが、レコードの人気で今後はまた復権するかもですね)
レコード針は、エントリー帯なら1万円前後ですが、界隈の主力はMC型と呼ばれるもので、どんなに安くても3万円、上は青天井です。100万円超で量産型があります。
しかし、レコード針は消耗品扱いです。MM型であれば交換針を買って自分で取り換えることができますが、MC型は修理対応。DL-103などの有名モデルだと店頭持ち込みで「針交換」として新品パッケージより若干安く手に入れられるらしい?ですが。

しかし公式見解では割とレコード針の寿命が短い…

レコード針の寿命として一般的に言われているのは約150~500時間。LPレコード1枚45分として計算すると、毎日1枚聴いたとして200日~600日となります。
SPレコード時代では1枚聴くごとに針を取り換えていたことを考えると、相当な長寿命と言えます。

すべてはここから始まる。小さなクリエイター、レコード針の秘密。 audio-technica

(無垢丸針)一般的な寿命は約200時間です

レコード針の交換をはじめてされる方へ JICO

このあたりが、ネットでググるとまず最初に見つかる、レコード針の寿命に関する公式見解です。多分レコード使ってる人は一度は見に行ってるかと。
200時間は長寿命!といいますが、私なんかは在宅勤務したら有線放送の如くレコードが連続稼働しますし、最大で1日に10時間以上することもあります。日中に出社勤務しても、帰宅して夜寝るまでの1~2時間も使ってるので、現在、週平均で言えば40~50時間。月にするとあっという間に200時間はいくでしょう。

早速寿命を迎えたかというと、今のところはそういう場面に直面してません。
ただし、私は23年年末にレコードを使い始めたのですが、レコードプレーヤーを購入してこの数か月、だいぶコンスタントにレコード針を乗り換えしてるので、今時点で一つのレコード針でまだそこまで使い込んでないというのが実情です。

  • 23年12月末~24年1月上旬 DP-400付属針(MM型、audio-technicaのOME品?)

  • 24年1月上旬~1月下旬 ortofon 2MBlue(MM型)

  • 24年1月下旬~2月中旬 DENON DL-103R(MC型)

  • 24年2月中旬~現在 ortofon SPU#1E(MC型)

DP-400と2MBlueはもう手放してしまいました。その下取り金を使ってtechnics SL-1200MK7に買い替えてます。DL-103Rは今後もリファレンス(と万が一の場合の予備)として大事に保管しており、今はSPU#1Eが現役バリバリで働いてます。今のところSPU#1Eの音に満足してるので乗り換えるつもりはありません(あと普通に金がない)

SPU#1Eがちょうど200時間を超えた可能性はありそうです。もちろん、音が劣化したということもなく、購入時と変わらずイカした音を聞かせてくれます。

レコード界隈でDL-103RやSPU#1Eはエントリーモデルの類ですが、いかんせん薄給のサラリーマンには高級品の部類ですので、数か月で寿命を迎えるようであれば、さすがにそれは趣味として破綻してしまいます…

出来ることなら信じたい「レコード針の寿命は無い」信仰

レコードという文化はすでに半世紀以上続いており、身近にレコード大好きおじさんがいなくとも知見を得ることができる素晴らしい時代です。困りごとの大抵は、インターネット上にさまざまな解決策が残されています。
一方で、半世紀たっても決着しない宗教論争ももちろん存在し、おそらくその一つが「レコード針の寿命」でしょう。

ネットで観測する限りは、

  • 針に寿命があるよ、数百時間使ったら交換してるよ派

  • 針に寿命はあるが、交換時期は自分の耳と感覚に頼ってるよ派

  • 針に寿命があることを承知しているが、変えたことはないよ派

  • 針はダイヤモンドなんだから減るわけがないだろ派

だいたいこんな感じの派閥だと思います。主流派は「交換時期は自分の耳と感覚~」のほうじゃないかと感じていますが、実際に集計したわけじゃないです。まあ、レコード針に限らず、環境に違和感が出たら対処しないと精神衛生上悪いですからね。ましてや、環境改善に着手しやすいレコード針が優先されるのも当然かと。
それきっかけで新しい針に手を出すなど…気軽にいじれるカスタマイズであることも、レコードやオーディオの楽しみのひとつです。

一方で、レコードの達人のような人からも「レコード針が減るわけがない」という意見も結構みかけました。正直私も今使っている103RやSPUで一生使えるならそれに越したことはないので、この宗派を信じたいところです。
レコード針が絶対に壊れないとも思ってません。むしろ非常に繊細な部品ですので、不慮の落下や衝撃をくらえば確実に即死。それが数百・数千時間の使用期間で起きる確率が何%か、という話とも言えます。レコード針を支えるカンチレバーはレコードの多少の上下運動にも追従できる仕組みがありますが、それを支えるのはゴム・バネなどのダンパーなので、ダイヤモンドの針よりこちらの駆動部分がくたびれていくほうが圧倒的に早いだろうなというのは理にかなってます。もちろん、それは数百時間という単位ではなく、普通に使えば数年~数十年という単位でしょう。
あとこういった駆動部品は頻繁に動いてこそ寿命が延び、長年動かさず急に使うとガタが来るなんてこともありますね。

レコード針は減らないよ派の言い分①レコードは柔らかい

「レコード針には針1点にものすごい圧力がかかっており、それが数十分、溝を直線距離にすれば約1~2km。そんなものを弾き(轢き)つづけて減らないはずがない、それがダイヤモンドであろうと。」
これは、何回か見かけたレコード針が減るよ理論の説明です。

  • 針1点に圧力が集中するのは正しい

  • レコード溝を距離にすると1~2kmになるのも正しい

ただ、上記のように書かれると、道路のコンクリートか何かに1~2kmなにかをズリズリと引きずっているイメージをしがちですが、ここはミスリードだと思ってます。
レコードの材質は塩ビですので、ツルツルです。表面抵抗とかそのあたりの詳しい話は知りませんが、1~2km引きずられる距離は、道路のコンクリートというよりは、滑り台とかツルツルのスケートリンクのほうが近いのではと思ってます。もちろん、数万km以上も引きずられ続ければ摩擦によって削られることもあるでしょうけど、レコードは表面を削って音を出しているのではないです。削って音を出す仕組みなら、今の時代にはペラペラに溝が薄くなったレコードであふれ、年季の入ったプレーヤーには削りカスが溜まってしまうはずですが、レコードが流行って40年超、そんな話は聞かないですからね…
レコードが塩ビの話に戻りますが、これはとても柔らかい素材なので、針1点に圧力が集中した時、針とレコード盤がガチンコのケンカするのではなく、レコード盤が変形していると考えてます。
その理論で行くとレコードを聴くたびにどんどん劣化していくのでは、となりますがそうではありません。レコードのプレスには高温ととんでもない圧力でプレスをしているので、言うならば形状記憶のようなものです。針が溝を通った瞬間は、針のほうが固いので、溝がその瞬間変形をしても、元に戻る、と考えています。だからこそ、レコードは半永久的に音を残せるといわれると思ってます。
この理論を信じる理由は、経過によって派手に歪んだレコードが、いくら熱と圧力をかけて一時的に直っても、徐々にダメな状態に戻るという厄介な現象に出会ってからです(苦笑)。1か月以上の加圧と矯正を繰り返しても、元の反りに戻る怪奇レコード…それはまた別のnoteで。

レコードの針は減らないよ派の言い分②「丁寧な清掃をする前提」

レコードの文化が復活してきたことの理由の一つに、今も残っているレコードはずっと丁寧に扱われてきた(または丁寧に保管されてきた)という背景がある気がします。
もちろん全部が全部そうではなく、とっくのとうに破損してこの世を去ったレコードだって星の数ほどあって、正常再生がままならないボロ品がオークションから届いたこともあります…
ただ、それを差し引いても、レコードをめちゃくちゃ丁寧に扱ってきた人たちがよっぽど多いのは確実だと思います。30年~40年前のレコードが、数百円で、ジャケットは多少ボロでも、盤が見た目に無傷のものが手に入るのは決して珍しくないです。CDにももちろんコレクターはいますが、ふらっと立ち寄った中古ショップの投げ売りコーナーに、新品同様の中古CDがどれだけあるか…と考えると、やはり環境は大きく違う気がしますよね。
しかし、中古オークションで届くレコードの多くは、丁寧に保管はされていても、数年数十年という単位で使用されていないケースもほとんどです。昨日今日もバリバリ聞いているレコードがオークションに出るはずもなく。発送時に盤面クリーニングしてくれる方もいますが、多くは現状ママで送られます。
レコードのお作法として、「着弾してまずやることはクリーニング」だとインターネット知見で学びました。中古はもちろんこういった年単位で触られていないため、埃やカビ、ビニル焼けがあるため。クリーニングしたらクロスが黒ずむ”根性盤”に出会ったら、気が引き締まりますよね…
新品もクリーニングしたほうが良いです。新品はスリーブ出した瞬間にバチバチの帯電状態。さすがに静電気でゴム製ターンテーブルマットが持ち上がった時は腰抜けました。

話がだいぶそれましたが、レコードは丁寧に扱う人が多い一方、クリーニング何それ美味しいの?という人も少なからずいるはずです。レコードの説明書に再生前は清掃を必ずせよ、となんか書いてないですから、埃上等で再生している人もきっといることでしょう。先に、レコードは塩ビで柔らかいと書きましたが、付着してる埃は何者かはわかりません。糸くずなら針に絡まる程度かもしれませんが、塩ビより硬い物質がいたら、それは針とレコード溝にダイレクトにダメージを与えてしかるべきです。
なので、こういった埃が再生前に確実に除去された、可能な限りクリーンな溝をキープできていて、ただ塩ビ上を走らせ続けるのであれば、数百・数千時間の再生もできるはず、という期待をしているのです。

なお、レコードの手入れは、ぶっちゃけかなり楽しく、レコード趣味の人の中にはレコード聞くよりレコード磨くほうが趣味になってるという人も少なからずいるようです。私も片足突っ込んでます。
レコードに限らず、道具にしっかり愛着と敬意をもって扱うことは、魂宿って長持ちもするであろうという……やっぱり宗教観的な部分に最後は至るのかもしれませんね。

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