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青緑の空気

沖縄シュノーケリング体験


沖縄で初めて、シュノーケリングを体験する。 ジャマイカ系のイギリス人の友達、神戸の友達、沖縄に移住した東京の友達と4人で ツアーに参加する。 那覇市の北部から30分ほど船で行ったところに向かう。
 
近くで泳げばいいじゃないかという思うが、那覇近郊では海が綺麗ではない。 僕らは渡嘉敷あたりまで行く。 何も考えずに来てしまったが、海というものは恐い。 小さいころ水泳もしていたし、鳥取の白土海岸でよく泳いでいた。 
 
なんどか流されそうになったり、おじさんにふざけてざぶーんとかやられたりしたので、恐怖はまだある。 前にイタリアで溺れかけたこともあり、今回海に降ろされた時は少しパニックになった。喉に麻酔をかけた時に呼吸ができないように感じたことがあった。
 
そんな感覚と似ていた 普段口だけで息をすることはあまりない。口だけでもシュノーケリングの管で呼吸するので苦しい感じがする。 ウェットスーツと足ひれがあれば体は自然に浮く。体を海と平行にして浮かべばいい。 しばらくしたら落ち着いてひれだけで泳げるようになる。
 
すべては気の持ちようだ、体は大丈夫。と思えば大丈夫。大丈夫じゃないと思ったらどんどんパニックになる。
 
小さい頃から ゴーグルがうまくはまらず好きではなかったけれど、今回初めてこの単純なツール、ゴーグルというものを使えるようになった。
 
僕たちはみんな海からやってきた。 そんな記憶はずっとまえに忘れてしまった。 ただ美しい景色を眺めたいっていう気持ちもあったけれど、 記憶をたどるために新しい体験をしたかった。 自分が海にいた時を思い出して。 魚になったつもりでぷかぷかと水を漂う。 海の世界というのは何か? 
 
人として感じるのでなくて、海の生物として感じたい。 だんだんと宇宙の世界にいるようにも感じた。勝手に浮遊するし、海中の世界は非日常だ。
 
地上の世界と海の世界の違い。 ウミガメをみつけると人は珍しがって、周りに寄ってくる、空気を吸いにお構いなしに上に上がってまた潜っていく。 しかしなぜみんな亀を珍しがるのだろうか? なぜ魅了されるのだろうか?
 
もちろんかわいらしいし、魚とはちょっとちがうけれど、 綺麗な魚だっているし、 不思議なイソギンチャクだっている。 ウミガメはこの景色の一つであって特別な生き物ではないような気がした。 危害を僕らにくわえることなく、自由気ままにおよいでいるからだろうか? 
 
海がすべて青緑色。 鮮やかな魚やサンゴ、不思議なテキスチャーの得体のしれない生き物たち。 僕たちを魅了して、飽きさせない。 みんな ゆっくりと動いている。 地上にいる人たちはどしどしと歩く。 そして軽やかに動くチーターとくらべても、たたた!という動きは海ではみれない。 重力が海全体にかわった感じにかかっている。 
 
だからゆっくりと動く地上の動物たちは海にいた時の動きを真似してるのかもしれない。 海中生物は地上からやってきたものたちに興味があるのだろうか? 認識はあるのだろうか? 海は全て繋がっているから、微妙な変化をみんなが同時に感じ取ってるのかもしれない。 地上から空気を吸わなくてはいけない生物もいる、亀もそのひとり。 けれども海中にいることに恐れを感じていないようだ。 彼らにとっては海が空気。 
 
海の感覚をどう表現したらいいか考える。
音がなくて、ずっと瞑想状態にいるようだ。
そうだ、海の生物は夢をみるのだろうか? 夢をみるとしても、地上の世界の夢はみないのだろうか?
 
ウミガメが空気を吸うときに、子供を産むときに陸に上がるときに、鳥たちをみて、人間たちをみて、自分が人や鳥になった夢をみるのだろうか?
 
魚はほとんど地上に出ない。 魚の夢はもっとぼくらよりもぼんやりしてるのだろうか?
 
シュノーケリングで息をする自分の音だけが聞こえる。
 
ときどき落ち着くために、息をゆっくりにさせる。
 
友達と手が触れ合う。 地上とはちがった感覚がある。
 
水の抵抗のなかで湿った手を感じる。
 
空気はそこには存在してはいけないかのように上へ上へと上がっていく。
 
光が海中のサンゴのうえで揺らぐ。 
 
僕は美しいとは感じたけれど、なにかちがう日々の生活をみているようにも感じた。
 
そうか、こういう世界もあるんだなという。異次元を見る感覚だった。
 
青緑の空気は僕らが地上にあがったあとも、ずっと揺らいでいる。
 

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