【書評】弱くても稼げます シン・サッカークラブ経営論

こんにちは、Canvas小黒です。
今日はサッカークラブ経営に関する書籍の書評を書いていきたいと思います。例によって自分の備忘録的な記事です。


気になった箇所

・プロクラブの立ち上げ時には、地方の有力者への根回し/順番が非常に重要。
→著者はIT出身でそういうアプローチをしなかったため、最初とても苦労した。このあたりは自分がクラブと関わるときも意識しなければならない。

・テクノロジーを全面に押し出すのではなく、安定的なクラブ運営にフォーカスすることにした。
→これも非常にリアルだと思う。自分のようなIT出身者だと新しさや革新的な取り組みで常に頭がいっぱいになるが、実際にはそもそもクラブとして成立させること自体に労力をかけるべき、というのは真理だなと。また、地域の人達からすると新しすぎるコンセプトが受け入れられないという問題もある。いずれにせよ、中長期的に経営することを考えたら地に足付いた取り組みから始めるのは合理的だと思う。

・基本的に以下3つがクラブチームにおける事業の核となり、この3事業を1パッケージとしてクラブチームの運営提案をおこなっている。
①サッカーを習いたい人のためのアカデミー&スクール事業
②スポーツをプレーして楽しみたい人のための合宿大会事業
③応援する地元クラブと共に生きる暮らしを提供するクラブ運営事業
・圏域人口30万人が一つの目安。

■アカデミー事業
・選手をコーチとして活用することで、人件費分をペイさせる。
→この取り組みが本書では絶賛されていた。コスト的なメリットの他に、選手自身の人間性としての成長にもつながる、という点が強調されていた。
自分たちの給料がどこから発生しているのか、そういった部分を身をもって体験することで、選手としての自覚が芽生え、人間性の成長につながる。
例えば自分が試合に出られない時、ふてくされるのではなく、自分がクラブや監督から何を求められているのか、クラブに今何が必要されるのかを理解し、そこから自分のプレイヤーとしての価値提供をしていく。
こういった「課題に対してアプローチする」という、ビジネスで一般的な考え方をサッカー選手個人が、アカデミー事業を通じて学ぶことができる。

■合宿大会事業
・企業の遊休地をグラウンドに変え、そこで小学生を集めた大会を行う。練習場にも活用。合宿大会事業であれば車で2〜3時間県内の人々もターゲットになってくるため商圏を広げることにもつながる。クラブの収益面とユース以下の選手育成の鍵を握る、重要な事業。
→土地の仕入れやグラウンドのコストなどはどのようになっているのか気になったが、地方に人々を集客できるのでホテルや飲食店など周辺にもビジネスチャンスがあるため可能性が広がる。

・一般的にJ3では、スポンサー収入と興行収入だけでは会社が経営できないことが多いが、藤枝ではアカデミー事業及び選手のコーチ化構想がワークし、早々に黒字を確保。年商10億程度まで成長させた。
→普通にすごい。やはりサッカークラブ経営において選手人件費が重いというのを感じる。

・地域スポンサーが500人以上出資者になる仕組み
→コープの様な仕組み。ある種クラウドファンディングのように大量に地元企業に株主になってもらう。地域経済のハブとなり、スポンサー同士のコラボを生み出す。個人的にはこのあたりのBtoBのマッチングには可能性を感じている。ここを新たな収益源にできるように設計していきたい。
一つの形としては、琉球アスティーダのサロンのような形があると思っている。


・オンラインが増えれば増えるほど、逆にリアルの相対的な価値が高まる。
オンラインでは視覚と聴覚しか代替できない。
他の味覚、触覚、嗅覚を含めたリアルのニーズと言うのは逆説的に強くなり続ける。
→個人的に納得感が非常に高い。
個人的な体験でいっても、オンラインでいつもサッカーを見ているが、やはり現場に行ったカタールワールドカップの感動は忘れられない。
正直オンラインであのような一生物の体験を設計するのは現時点では難しい。
日々の生活でも、オンラインでたくさんの人とつながるからこそ、リアルで人と会ったりコミニケーションをとることがすごく楽しく感じるのは自分の感覚としてもすごく当てはまる。

・地域社会との密着を仕組み化する。
→特にビジネスにならない様な地域の和菓子屋さん等にも年5回程訪問する
→地域住民との触れ合う機会を仕組み化&KPI管理していくやり方は、自分の経営の仕方と一緒ですごく腑に落ちた。
地域密着と言うと、属人的でなかなかうまくいかないみたいな印象があるが、これもKPIと仕組み化で解決できると言う発想を得られたのは、目から鱗だった。

・東南アジアの富豪は日本の教育システムに興味がある。
→日本のサッカーや日本の経済自体が短期的に非常に飛躍した教育システムにアジアの符号は関心を抱いている。
→だから、スポーツの場合は、アカデミーなどの育成システムを海外に展開しようと考えている。
→例えば北海道にグラウンドを作り、サマーキャンプなどで東南アジアの夕副会長なクラブの子たちを招待して大会を行うなどの展開も考えられる。

・国内にこだわりを持っている
→スポーツX創業者の小山さんは、自分の地元藤枝での高校時代の原体験から地域密着型のスポーツクラブで日本国内を盛り上げたいと言う思いを持っている。
→創業者のストーリーがあってすごくいいと思う。
→一方で、自分自身は国内でのクラブと言うよりは、海外と日本をつなぐ、であったり、アシアをよりエンパワーメントしていくようなことに興味があると言うのが自分の実態。どちらが良い悪いではなく、自分自身の思いに忠実に事業を展開していくのがとても重要だと思う。

・日本の強みを活かした展開を考える。
→世界で見たとき、自分たちが日本人であることのメリットをもっと使っていく必要があると思う。以下のメルケルさんの話が個人的に印象的だった。

「(当時ドイツの首相だった)メルケルだってW杯を日帰り弾丸ツアーで見に行って大はしゃぎするだろ。欧州では一級の要人がサッカー好きであることは珍しくない。しかもサッカースタジアムは周囲に再生可能エネルギー施設を設置した新しいコミュニティを地域に創造することもできる。つまり彼らの関心が高い環境やバイオなどとサッカーは親和性が高いということ。日本の強みであるハイテクやエコテクノロジー関連企業がサッカーを組み合わせて使えば、まだまだサッカーはビジネスツールとしても伸びしろがあるし、世界中から多くの政治家や経営者が見学に来るようなイノベーションを生み出せるはずだ」と。

・上場マーケットや投資家からどのようにすれば魅力的に見てもらえるか?
→顧客データベースを持つことが重要。
→プラスして、店舗ビジネスと同じ考え方で、商圏が一定規模の場所であれば安定して黒字で経営できるモデルだということを説明するのが重要。
そうなれば日本でそのような場所がいくつあるのかといった視点からマーケット規模を算出できる。

・大物を巻き込み防波堤を作る。
→提携先を見て、他社が「この事業はこの相手がいるなら手を出さないでおこう」と思わせるような提携先で組めると良い。
→これは自分の感覚的にもすごく思う。大手との提携や大型の資金調達などを競合がしていると、このマーケットに入っていくのは得策でないと考えたりする。

・Jリーグクラブが飽和しているため出口戦略が必要。
→現在Jリーグチームが58チームあり、Jリーグとしては60チームを一旦上限とする予定。
→一方全国でJリーグを目指しているクラブは約100チームほどあり、彼らの出口戦略がないと個人的に思った。
→彼らが参加したくてもできないのであれば、何かしら別でリーグを作るなり、別のコンペティションのニーズが生まれる気がした。


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