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私たちが株主優待寄付の仕組みを立ち上げた理由(後編)

株主優待品の社会的活用プロジェクト(通称:優活プロジェクト)は、2019年1月から5月にかけて、企業が保有する他社株式にかかる株主優待品の寄付を受けて、複数の社会貢献団体に寄贈するトライアルを実施した。

株主優待寄付に参加するパートナー

トライアルにご協力いただいた企業は、社名公表の許可をいただいた日本たばこ産業株式会社のほか、大手飲料メーカーと証券会社各の3社。いずれも業界大手の上場企業だ。検討チームのメンバーの紹介で実現することができた。

寄付の受け皿になるのは公益財団法人のパブリックリソース財団。同財団はGiveOneというオンライン寄付サイトを運営している。GiveOneには全国183(記事作成時)の社会貢献団体が登録し、プロジェクト単位で寄付を募っている。GiveOneのサイトを通じて登録団体に寄付をすると、公益法人への寄付として優遇税制の対象になるため、法人は一定額まで寄付を損金として扱うことができ、個人は所得税や地方税の優遇が受けられる。優活プロジェクトは、パブリックリソース財団の協力を得て、株主優待寄付にこの仕組みを活用させてもらうことにした。

株主優待寄付の仕組み

優活プロジェクトが提供する株主優待寄付の仕組み、業務フロー、選考プロセスは、次の図のとおり(いずれも優活プロジェクトウェブサイトから引用)。優活プロジェクトは、寄付企業と寄贈先団体を繋ぎ、優待品を確実に届ける役割を担う。寄贈先となる団体は、優待券や優待物品を換金することなく、自団体の活動のために用いることが求められる。

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トライアルでは、優待品提供企業3社から、公共交通機関の割引券などの優待券と、総重量約300kgの食品や日用品などの数十種類の優待物品(いずれも査定買取事業者の査定結果による。)の寄付を受け、GiveOneで3度の公募を経て、のべ28団体に寄贈を行なった。

寄贈先に選ばれた団体

寄贈先の団体は、紛争地や被災地の医療支援を行う団体、こどものシェルターを運営する団体、困難な状況にある外国人を支援する団体、障害者や難病患者を支援する団体など多岐にわたる。活動地域も様々だ。

寄贈先の団体のひとつ特定非営利活動法人ジャパンハートは、日本国内と東南アジアを活動エリアとする国際医療ボランティア団体だ。同団体に寄贈された交通機関の株主優待件は、医療者の海外医療支援派遣時の移動や、小児がん患者と家族の支援プロジェクトにおける家族との面談のための移動などに使用された。

株主優待寄付の課題

企業から提供を受けた株主優待品のうち、優待券は交通機関や商業施設の割引券など市中の金券ショップで売却できるものが多く、査定するとそれなりの評価額が出る。しかし、優待物品は消費期限の問題もあって、中古市場が存在しないため、査定金額としては非常に低い金額になる。わずか時価数万円の物品を企業から引き取って、分別し、保管し、寄贈先に配送するのに、時価と同等かそれ以上のコストがかかってしまう。これが物品を配ることの難しさだ。

株主優待の寄付の課題は、物品を配るコストだけではないこともわかった。一度に寄付する優待品が少量に留まる場合、応募の手間に比してもらえる優待品の経済的価値が少ないので、ある程度まとまった量がないと希望する団体が集まらない。また、優待券は使えるエリアや場面が限定されるため、例えば、特定の路線の乗車券が大量にあっても、支援者に向けた活動に活用できる団体は限られてしまう。せっかく寄贈しても、役職員やボランティアの通勤に使われるだけでは金銭での寄付と大差なく、必ずしも「もったいない」の解決にならない。

一方で、トライアルでは想定を超える数の応募があり、関心の高さを感じた。GiveOneに登録していない団体からも寄贈先に加えてほしいという要望もいただいた。トライアルで見えた課題を乗り越えて、優待品の寄付をもっと集めることができれば、社会に役立てることができる。そんな実感を得ることができたのは大きな収穫だった。

ギビングフォワード

トライアルの結果を受けて、私たちは、2019年5月、優活プロジェクトの運営母体となる一般社団法人ギビングフォワードを立ち上げた。

活かします!株主優待 株主優待プロジェクト

その後も、トライアルに協力いただいた企業から定期的に株主優待品の寄付を受けて、社会貢献団体に寄贈する活動を続けている。トライアルで明らかになった課題のいくつかは解決の糸口が見えているが、優待物品の寄贈コストの問題はまだ抜本的な解決法は見えない。しかし、応援してくれる企業や仲間が増えて規模が拡大できれば、コストの問題は相対的に小さくなる。

将来は企業が自社で発行する株主優待品の余剰分の寄付を受けて社会貢献団体にマッチングすることや、企業が直接寄付する際のアレンジなどにも取り組んでいきたい。また、個人株主にも、優待品の寄付や優待券を換金した代金の一部を寄付できるようなプラットフォームづくりにもチャレンジしたい。そのためには、優活プロジェクトをもっと知ってもらい、この仕組みを支持して、活動に加わってくれる仲間を増やすことが必要だ。

この記事を読んで興味を持っていただいた方がいたら、ギビンフフォワードの問い合わせフォームからぜひご連絡ください。

最後にイベントの告知

優活プロジェクトは、2019年11月12日に、株主優待寄付と企業CSRをテーマにしたイベントを開催します。イベントには、事業パートナーであるパブリックリソース財団、優待品の提供企業、寄贈先団体を代表してジャパンハートのほか、ギビングフォワードのメンバー、企業CSRの担当者の方々が参加します。株主優待寄付をしてみたい、寄贈先になりたいという方もぜひご参加ください。

日時 2019年11月12日(水)18:30受付開始 19:00スタート

場所 日本財団ビル2階会議室

参加費 無料

申込み 上記リンク先のpeatixのサイトからお申し込みください。

最後までお読みくださり、ありがとうございました。

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