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パソナの決算から読み解く人材サービス業界の見通し

こんにちは、上原(@uehata_sato4)です。

先週の金曜日(7/17)に人材派遣のパソナ(2168)が決算を発表しました。パソナは人材派遣、BPO、人材紹介、福利厚生サービス、海外人材サービスなどなど、人材サービスの事業を幅広くやっているので、パソナの決算を見ると人材ビジネスの市場動向がよく分かります。

しかもパソナは5月決算なので、他社の4-6月決算が出るよりも早く足元の状況が分かります。他の人材サービス企業へのインプリケーションを考えるという意味でも、パソナの決算は参考になります。

当noteでは、パソナのセグメント別の動向と、関連する企業をまとめてみました。

足元(3-5月)の動向

足元の動向を知りたいので、第4四半期(3-5月)の売上高前年比をセグメント別に整理しました。

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アウトソーシング事業 +9.7%
企業から福利厚生を受託するアウトソーシング事業を行っています。新規獲得企業の入会時期がずれ込んでいるようですが、引き合いは堅調が続いています。

関連銘柄:リログループ
BPOサービス +3.5%
コールセンターを運営するビーウィズやフリーランスや複業希望者向けのプラットフォームであるパソナJOB HUBが含まれています。4Qはコロナの影響でコールセンターの稼働率が低下したようですが、堅調な売上が続いています。

コールセンター関連銘柄:トランスコスモス、ベルシステム2、りらいあ
フリーランス関連銘柄:クラウドワークス、ランサーズ、みらいワークス、ギークス
エキスパートサービス +2.5%
主に事務職の派遣業務を行っています。コロナの影響でメーカーからの需要が減少しているようですが、4月から適用された同一労働同一賃金への対応で値上げをしているため、売上高はプラスになりました。人材派遣は固定費が大きいため、景気の悪化で売上が落ちると大幅減益になりやすいです。ですが、製造業向けの人材派遣と比べるとオフィス向けの事務職派遣は景気の影響を受けにくいです。

関連銘柄:リクルート、パーソルなど
キャリアソリューション ▲0.5%
HRコンサルティング ▲17.2%
転職希望者を企業に紹介しているキャリアソリューションや、人材育成事業を行っているHRコンサルティングは不調でした。3-5月は見通しが不透明な中、企業の採用活動が消極的になったんだと思います。

関連銘柄:リクルート、パーソル、JACリクルートメント、フルキャストなど
グローバルソーシング ▲10.2%
海外での人材派遣や人材紹介もかなり苦戦しています。コロナの影響は国内よりも海外の方が大きかったので、海外で人材ビジネスが落ち込んだのも納得です。

関連銘柄:パーソル、リクルート、アウトソーシング

人材サービス業界におけるコロナの影響

人材サービス業界におけるコロナウイルスの影響はこちらのスライドが参考になります。

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人材派遣や採用に対するニーズが減った一方で、アウトソーシングの需要が増えています。企業はコスト削減と生産性改善のために業務の見直しを行っており、付加価値が低い非中核業務はアウトソースする流れが起きています。そんな中で、コールセンターの外注、フリーランスへの外注、福利厚生業務の外注といった需要が増えているんだと思います。また、海外やインバウンド関連は特にダメージが大きいです。

人材サービス業界の今後

パソナの決算から人材サービス業界の今後について考えてみました。

まず、人材紹介のビジネスはしばらく低迷が続くと思います。企業は「人員拡大」よりも「生産性の改善」や「コスト削減」の方に舵を切っているので、積極的に人を採用したい企業はあまり多くないと思います。

そんな中で、企業にとって即戦力となるハイレベルな人材の需給がひっ迫して、教育コストがかかる新卒や低スキルな人材の市場が特に冷え込むんじゃないかと思います。2020年4月にコロナ禍で実施されたアンケート調査の結果も、転職市場の落ち込みとフリーランス・副業市場の拡大を示唆しています。

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企業が非中核業務をアウトソースする流れは今後も続くと思うので、コールセンターなどのBPO(Business Process Outsourcing)、福利厚生事業、フリーランスや複業の普及は今後も加速すると思います。

人材サービス企業といってもいろいろな種類がありますが、それぞれの業態によってこれから業績格差が広がってきそうです。

参考資料:パソナのインベスターズガイド

参考資料ですが、パソナのインベスターズガイドでは人材サービスのビジネスモデルや長期での市場動向が分かりやすくまとまっています。こちらは一読の価値ありです。

気になったデータをまとめます。

雇用者に占める非正規の割合は2015年ごろまで拡大していましたが、2016年以降は減少しています。これは2015年9月に施行された「改正労働者派遣法」の影響だと思います。

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国内の有効求人倍率を見ると、サービス業、販売、専門・技術職で特に人材の需給がひっ迫。

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アメリカの人材派遣、人材紹介の市場は右肩上がりで拡大してきたが、2019年は伸び悩み。

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国内の人材派遣市場の成長率とGDP成長率の比較。金融危機前はGDPが人材派遣市場よりも1年先行して動いていましたが、金融危機以降は人材派遣市場の方が先行して動いているように見えます。

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