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転校生の作文。

僕は転校生だった。
最初の転校は、小学校2年の時。転校してまもなく「友達」という題で作文を書くことになった。その時僕は、まだ友達と呼べる相手がいなかったので、

僕の友達は本だ。本を読むと色々なことがわかるし、友達は裏切るけれど本は裏切らない。

と、いうようなことを書いた。もちろん、誰かに裏切られた経験があったわけではない。単純に友達がいなくて、書く事がなかったので思いついたことを書いてみたのだった。

本を読んでいれば、寂しくもないし退屈もしない。学校帰りに誰かの家に寄って遊ぶよりも、まっすぐ家に帰って本を開いている方がいい。「ともだちは、いらない」作文を書き終えた僕は、小学生なりの本気さで、そう考えた。いや、そう考えようと頑張っていたのだと思う。

少年は大学生になり、ある作品と出会った。

それから10年ほど時間が過ぎた。いくつかの出会いがあり、別れがあった。「本は裏切らない」と嘯いていた少年は大学生になり、ある作品と出会った。

みんなむかしからのきゃうだいなのだから
けっしてひとりをいのってはいけない。
(宮沢賢治 青森挽歌より)

ああ、こんな風に心から考えられるのなら、もっと広い場所から、深い世界を感じられるのかもしれない。今の自分には無理だし、これからも難しいだろうと思う。それでもいつの日か、近づける時があるとするならば…。

「わたしはあなたでみんなはわたし」

今ここに書いたようなことを、思い出したり話したりしながら「私のパートナー」と一緒に絵本を作った。読んでみて下さい。そして、何かを考えるきっかけにしていただけたのなら、幸い。


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