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【少年のころの夢】 夏を追いかけて、暮らしたい。

小学生のころ、日本が冬の時、オーストラリアは夏であると知った。夏生まれで、夏が好きな私は「これだ!」と思った。

「日本が冬の時はオーストラリアに住んで、オーストラリアが冬になったら日本に帰ってくる。そうすれば一年中、夏のままで暮らせるじゃないか」

別にオーストラリアに行かなくても、東南アジアなど「常夏の国」へ行けば移動せずとも「夏暮らし」が可能なわけだが、それはちょっと違うような気がした。ずっと夏ではつまらない。夏を求めて移動するから楽しいのだ。季節を追いかけていく感じが大切なのだ。

「僕たちが大人になるころには、世界中を高速で移動できるものが発明されているだろう。世界中がパイプでつながっていて、一瞬で南半球に移動できるような仕組みが実用化されているかもしれない」

私は、小学生向けの雑誌に掲載されていた「未来予想図」のイラストを眺めながら、そんなことを考えた。世界中を縦横無尽にかけめぐり、夏を追いかけていく暮らしを想像した。早く未来がやってくればいいと思った。

あれから数十年の月日が流れた。世界中を瞬時に移動できる仕組みは、まだ実用化されていない。なにより私自身が「夏もいいけれど、秋もいいし、冬もいい。冬から春にうつろいゆく時の開放感、街路樹の青葉の眩しさに気がつく瞬間。夕立が降って濡れたアスファルトの上を、さっと風が吹き抜けた時の気配。そして・・・」夏が恋しいのは、四季があるから。やはり日本で暮らすのが、いちばんなのかもしれない。年齢を重ねるほどに、そう感じるようになってきた。

それでもいつの日か「夏を追いかけて」みたいと思う。インターネットがあれば世界中どこでも仕事ができる。実際に今は海外在住の人たちとビデオ会議で仕事をしている。「この音は何ですか? ああそちらは独立記念日なのですね」などと会話しながら作業をしている。ネットの世界では、反対側の国と瞬時につながることができる。

好きな季節を追いかけて、世界中で仕事ができる日は、今私が考えているよりもずっと近いのかもしれない。そう遠くない未来なのかもしれない。そんなことを考えていると、まだまだがんばれそうな気がする。

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