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手触りのある言葉。『似合う髪 美しい髪 新しい髪』(小松敦)_056

あまりに良すぎて、3順目です。HEAVENS小松さんが書かれた『似合う髪 美しい髪 新しい髪』

書き込みしながらどんどん汚しながら読んでくださいとのメッセージのとおり、私の本はすでに書き込みだらけで、毎日持ち歩いていたので、ボロボロです。

この本は、ヘアデザインについて書かれたものですが、同時に生き方と働き方について書かれた本です。

ものづくりをする人なら、みんな自分の奥底を覗かなきゃいけない気持ちになる、すごい本だと思いました。

私は読んですぐに夫に「ぜったい読んだほうがいいよ」と、薦めました。

という、デザイナー視点での感想は、すでにいろんな美容師さんが、この本の素晴らしさをレビューされていますよね。

なので、私は、文章を書く人間として感じたことを書こうと思います。

書籍の仕事をしている人たちがよく使うフレーズで、「この著者さんは『言葉』を持っている」という言い方があります。

言葉に力があるとか、その人独特の言い回しがあるとか、人を動かす言葉を使えるとか、そんなイメージです。

小松さんは、比類ないデザイナーさんであると同時に、強い言葉を持ってらっしゃる方。「これしかない」感のある言葉のセレクトだから、すーっと心に言葉が浸透してくる。

例えば26ページに

ヘアデザイン、ここではヘアスタイルと言った方がいいかもしれません。

という一文があります。

私などは、こういう一文にぐっときます。

それは

ヘアデザインという言葉、ヘアスタイルという言葉、それぞれに対して小松さんがちゃんとそれぞれ定義をしていて、似たような言葉だけれど、それらは違う言葉で、ここではヘアスタイルといったほうが伝わるよね、といった繊細さを感じるからです。

こういうのを、洗練というのだと、私は思う。


最近、久しぶりにビジュアルワーク(写真を中心にした書籍)をやっているのだけれど、やればやるほど、気づくのは「言葉」の強さともろさと、何にでもなれる感。

言葉は適当に並べてもそれっぽくなるし、考えに考え抜いて書いたときでも、一見、それほど前者と変わらなかったりするんですよね。

でも、その言葉を誠実に吐いているかどうかは、一冊の本になったとき滲み出てしまうし、本には著者さんの生き様が滲んでしまうものだなあと感じます。

あと、小松さんの言葉は、ジャズセッションみたいですね。

ですますと、だ、であるが混ざりながら、ときどき問いかけもあって。小松さんが目の前で語りかけてくれるような一冊でした。ライターとしても、嫉妬するような、静かで強くて、ときにホットでセクシーな、どきどきする本。

こんな言葉をプレゼントしてくれる「大人の人」がいる美容業界は、素敵だなあと思ったなあ。

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