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何者でもない時間だって

改札を抜けた人々は、地下通路を通って、解散・解散・解散。
メトロにはたくさん出口があるけれど、朝の東京では、迷っている人など見かけない。みんな、自分がどこへ出ればいいか知っているのだ。
迷わない人の群れにプレッシャーを感じつつ、考えずともB2へ向かっている自分に苦笑。

Web編集者に転職してから、1年と2ヶ月になる。
仕事にも人間関係にもすっかり慣れ、自分が何を求められているのか察して応えられるようになってきた。
帰宅と同時にバタンキューだったのが、仕事後文章を書けるほどの体力もついて「プライベートがない」なんてベソをかくことも無くなった。

1日いちにちはあっという間に過ぎるのに、毎週「やっと金曜日だ」と思う。
ザ・社会人の日々を、最近ようやく「悪くない」と言えるようになったことについて書く。

ちょっと前まで、なにもないままの私が少女でなくなることが怖かった。
20歳の夏、私は少女についてこう書き残している。

いつのまにか私から乖離して偶像になりつつある神秘。
無垢かつ鋭敏、わがままでゆるされていて、情けなく、夜をしらず、素足が似合い、泣いても笑ってもかわいくて、いいな。

机上の少女論

当時のエッセイを読んで(恥ずかしいを通り越し)愛おしさを覚えるのは、もう少女じゃないということだろう。

散々駄々をこねながら大人になって、わかったこと。それは___

いつか大人になるとか、働かなくては生きていけないってのは摂理で、悲しいことではない。
つまり今ある日常は“悲劇”じゃなくて、ごく普通の生活なのだ。この当然を否定するのは無駄な抵抗だし、そうしているうちはきっとずっと苦しい。

「夢は生活の中で追えばいい、
何者でもない時間だってそれなりにたのしめばいい」

そう素直に思えてから、以前よりすこやかに書けるようになった。
忙しくて虚しかったのは、ちょっと前までのこと。今は忙しくて“充実”している。

B2を出る。6月の、まだ若い緑が見える。

木々を切り倒してつくったビル街に街路樹が植えられているようすは、滑稽で、憎めない。
そうするしかないと森を破壊してから「大切なもん忘れそうな気がする」とでも思い直したんだろう。
愚かだな。だけど、勇気をもらえる。

私も、大人になるしかない日々を受容しつつ、祈りを込めて文章を書いていこう。
1本ずつ植えていった先にきっと、私が出るべき出口があると信じてる。

#20代  #就活 #大学生 #夢 

お読みいただきありがとうございます。 物書きになるべく上京し、編集者として働きながらnoteを執筆しています。ぜひまた読みに来てください。あなたの応援が励みになります。