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あなたのユートピアも、きっとまもられますように(文フリ感想)

ガールフレンドと遊んだ。最近行きたくて仕方なかった焼肉に付き合ってもらい、満足感はそのまま、銭湯で臭いだけ落としてきた。
帰りのコンビニで買った、137円のインスタントラーメンを啜りながら書いている。23歳最後の夜。

先週末はじめて「文学フリマ」に参加した。
終了後は泥のように眠ってしまい、週明けは本職があまりに忙しく、感想を出せていなかったので、軽く残そうと思う。


noteやインスタを見ていただければわかるとおり、私は文フリに並々ならぬ思いがあった。冷静になって振り返れば、半狂乱といってもいいくらいの状態だったかもしれない。それはなぜか?
私にとって創作は、本職を支える「夢」だから。

私は普段サイトを制作している、職業で言うなら「Web編集者」である。
サイトの戦略や構成を考え、ライターにテキストを発注し、あがってきたテキストを編集し、デザイナーやコーダーと連携してサイトの形に仕上げていく。
つまり、色々な道のプロと共同でひとつのサイトを制作する仕事である。

本職は本職で、やりがいはある。
でも私は本来書くこともデザインも撮影も好きだから、今の業務だけでは足りない。喉をかきむしりたくなる瞬間が、しばしばあった。

だから私はzineをつくるのだ。
全工程を自分の好きなようにできる、しかも「読まれる」とか「売れる」とか一切考えずに。それがどれだけ贅沢であり、私にとって必要な時間か。今回、2年ぶりくらいにzineをつくって、改めて実感した。


当日、最初の1時間は1冊も売れなかった。
1時間が過ぎたところから、ポツポツ買ってくれる人が出てきた。SNSでつながっている人、あらすじから興味を持ってくれた人、たまたま通りかかった人。たった数人だけど、直接言葉を交わせて嬉しかった。

隣の人はとても手慣れていて、何十冊も売り捌いていた。正の字が追いつかないほど、それこそ飛ぶように売れていく。
初めは羨ましかった。手持ち無沙汰で恥ずかしかったし、自分が惨めに思えてしまった。

なんにせよ暇なので、売るにはどうしたらよかったのか、早くも脳内で反省会を始めた。
ひと目でわかりやすく共感されるようなコンセプトにしたほうがいいとか、それを視覚的に表現する装飾が必要だとか。隣や向かいの店を眺めながら考えていた。

やっぱりデザインに改良の余地があるのかな。
そうして、絵や写真が得意だったり、配色のセンスがあったりする、何人かの友だちを思い浮かべた時、ふと我に返った。

いや、これじゃ仕事と変わらないじゃん。

私がzineを心から楽しくつくれているのは、できあがったものを抱きしめられるのは、好き勝手にやっていることだからだ。
それが結果として誰かのもとへ届いたら嬉しいけれど、届けることが目的になったら、きっと楽しくなくなる。

「これでいい、これがいい」

視界に自分の作品だけなら、迷わずそう思えるのに、うっかりよそ見をすると欲が出る。まだそれほど強くはないの、20代だね。


好きだから、どうしても手を動かしてしまう。そうしてつくったものだから、好きでいられる。
10年以上書き続けて、文章は、叶えたい夢というより、現実と並行してある「寝てみる夢」のような存在になった。
まごうことなきユートピアである。

顔をあげる。会場中、小さなブースが無数に展開されている。
飛ぶように売れている店も、暇そうな店もある。ポスターや看板で派手に装飾しているところも、値札と商品だけの地味なところもある。
いいわるいじゃない、それぞれに色がある。

運営事務局によれば、出店者は3,062名、来場者は9,828名で、過去最多だったらしい。
13,000名近くの人が、ユートピアをつくったり求めたりして集まったということだ。
こんな素敵なことがあるだろうか。

ここにいるすべての人のユートピアが、きっとまもられますように。
そう祈った1日だった。

図らずも、こんなことを振り返りながら迎える24歳。いい歳になりそうだ。

最後になりましたが…
文学フリマ東京で出会ってくださったすべての方に御礼申し上げます。
作品を手に取ってくださった方、声をかけてくれた方…本当にありがとうございました。
またどこかでお会いしましょう🎶

お読みいただきありがとうございます。 物書きになるべく上京し、編集者として働きながらnoteを執筆しています。ぜひまた読みに来てください。あなたの応援が励みになります。