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全国自然博物館の旅③神奈川県立生命の星・地球博物館

「そうだ、箱根温泉に行こう!」と思いつきで行動してしまう筆者ですが、やはりどこか自然系の博物館もセットで行きたくなるのが生き物好きの性というもの(笑)。ということで、箱根登山鉄道で訪ねられる神奈川県立生命の星・地球博物館をご紹介します。


箱根温泉は地球科学の聖地!?

箱根と言えば温泉だと連想する人が多いかもしれませんが、実は箱根町を含む神奈川県西部の広大な範囲は『箱根ジオパーク』という地質学的に重要なエリアなのです。その地球科学の宝庫は、研究や教育、観光のために大いに活かされています。
博物館は箱根温泉からほど近く、もちろんジオパーク内に位置しています。化石標本をはじめ、数多くの自然科学系資料を所蔵する本館の立地としては、まさにこの上なくふさわしい聖地だと思います。

ジオパークのど真ん中で地球のエナジーを感じながら、壮大な生命の旅路を追いましょう!

新宿からロマンスカーで箱根湯本駅へ向かい、そこから各駅停車で入生田駅へと行きました。ちなみに本車両50000形VSEは引退しています。引退直前に会いたくなったので、2022年2月末に写真を撮りに行きました!
博物館の入口。入生田駅から徒歩3~5分で着きます。

展示の構成としては、46億年の地球史を体感しながら、生命進化の歩みを学んでいきます。もちろん、神奈川県の豊かな動植物や化石標本もたっぷり知ることができますし、人類と地球環境の共存を考えさせるインパクトの強い展示もあります。自然科学への好奇心を刺激されると同時に環境問題への関心も湧いてくるので、本館から得られる知的資産はとても大きいと思います。

純粋に筆者が本館を強くオススメしたい理由は、大迫力の動物化石・剥製・昆虫標本がめちゃくちゃ多いこと! 力強い生命たちと出会い、博物館の展示を心のままに楽しみましょう。

地球の古代・現代・未来が学べる! 箱根ジオパークの科学拠点

恐竜マニアも昆虫マニアも満足の大展示ラッシュ

エントランスホールで迎えてくるのは、陸・海・空の大者たち! 植物食恐竜チンタオサウルス、巨大古代魚キシファクティヌス、頭上の翼竜はアンハングエラとトゥプクスアラです。

本館を訪れると、何よりもまず視覚的な展示の素晴らしさに圧倒されます。幼少の頃から昆虫好きの私は、芸術のごとく美しい国内外の昆虫標本に目を奪われてしまいました。日本ではなかなか出会えない巨大昆虫もたくさんいるので、その迫力には誰もがびっくりすることでしょう。

シタムラサキオオバッタ。大きいだけでなく、とっても色鮮やかな南米産のバッタです。
日本最大のガ、ヨナグニサン。ちょっとした鳥ほどの大きさがあります。
これでもまだ一部分。もっとたくさんの素晴らしい昆虫標本を見れますので、ぜひ来館して隅々まで楽しんでください。

そして博物館の人気者と言えば、やはり恐竜と古生物。本館でも、広大な展示ホールに様々な化石動物たちが立ち並んでいます。ティラノサウルスやディプロドクスといった迫力満点の巨大恐竜だけでなく、古代のゾウなどマッシヴな大型哺乳類の骨格も壮観です。

展示ホールで強烈な存在感を放つ竜脚類恐竜ディプロドクス。頭上では、史上最大の翼竜ケツァルコアトルスの実物大模型が宙吊り展示されています。
全身の骨格からしていかにも強そうなティラノサウルス。奥の方には古代のゾウ類やクジラ類の骨格が並んでいます。

加えて、生命感あふれる現生動物たちの剥製もたくさん見ることができます。特に、多くの霊長類が大集合したコーナーは豪華すぎです。現代の哺乳類はとても多様化しているという事実を、改めて認識させてくれます。

唸り声が聞こえてきそうなライオンの剥製。このオス個体は男前ですね(笑)。
霊長類の剥製ゾーンでは、キツネザルから類人猿まで大集合! それぞれのサルの形態的な差異を見比べてみるのもおもしろいと思います。

多くの古生物の化石標本によって来館者に地球史を体感させつつ、同じ空間で現生動物についても展示してくれるのも、あらゆる時代の生命が一つの世界に生きているみたいで豪奢に感じられます。太古と現代が交わっている不思議な雰囲気が本館にあふれています。

進化史だけでなく、自然選択などの生物学理論についたも実例を交えて教示してくれます。昆虫標本を活用した実にわかりやすいキャプションだと思います。

神奈川県の大地に眠る地球の記憶

先述の通り、神奈川西部の広域が壮大なジオパークに指定されています。国内で発見された古生物たちの化石から、恐竜絶滅後の時代の神奈川ーーさらに日本全域の古環境に想いを馳せてみましょう。

1600万年前の日本にはとても暖かい時期があり、海辺にはデスモスチルスやパレドパラドキシアなどの特殊な哺乳類が生息していました。
氷河期時代になると、ゾウの仲間が大陸から渡ってきました。巨大動物たちの楽園が日本にもあったのです。

古代の日本を闊歩していた数々の大型動物の化石。ジオパークの地域の中で見るからこそ、彼らの学術的価値がいっそう強く心に印象づけられますね。

太古からの恩恵を受けて、現在の神奈川県には生命あふれる豊かな大地と海が築かれました。本館では、神奈川県の大自然の特色や動植物についても濃密に解説してくれます。県立博物館ならではの強みですね。

ジオパークに位置する小田原市は漁業が盛んな街です。相模湾にはタカアシガニも生息しています。
神奈川県の自然環境で見られる爬虫類たち。ヒバカリ、可愛いくて大好きです!

そして博物館の使命として、地球環境や絶滅危惧種についてのメッセージを来館者に宛てています。特に、絶滅種ニホンオオカミの剥製の区画は強烈に印象に残ります。

ニホンオオカミの剥製。駆除乱獲により、1905年に絶滅しました。後方の画面に映るのは、絶滅した動植物の名前です。

恐ろしくもあり、悲しそうにも見えるニホンオオカミの表情。私たち人類に何かを訴えているように感じられました。

神奈川県立生命の星・地球博物館 総合レビュー

所在地:神奈川県小田原市入生田499

強み:広大な展示ホールを活かした迫力重視の展示設計、剥製や昆虫標本など生命感を味わえる展示の多さ、神奈川県の生物学及び地学に関する膨大な学術的知見、ジオパークによって活気づく地域との強いつながり

アクセス面:箱根登山鉄道の入生田駅から徒歩5分ほど! 多くの場合、地方に立つ博物館へ行くには結構な徒歩移動がつきものですが、本館は駅から近く来館者には嬉しいところです。東京方面から向かうのが定石であり、小田急電鉄の新宿駅から小田急ロマンスカーに乗り、小田原駅もしくは箱根湯本駅まで行きましょう。そして各駅停車に乗り換えれば、短時間(小田原駅から10分、箱根湯本駅から4分)で入生田駅に着きます。観光地からすぐにアクセスできるのも、本館の大きな強みと言えるでしょう。

箱根ジオパークにおける自然科学の基地として、さらに誰もが楽しめる展示施設として、とても味わい深い大型博物館です。広い展示ホールを歩き回るので、あらゆる角度から巨大化石標本を見ることができ、恐竜や大型絶滅動物の迫力を存分に味わえます。また、先述の通り、昆虫標本の質と量が素晴らしく、昆虫マニアも心ゆくまで楽しめるでしょう。
博物館で地球科学と神奈川県への関心を高めたら、実際にジオパークに繰り出して、大地の恵みを体で感じてみましょう。火山から湧出する温泉によって発展した箱根の街も、地質資源によって築かれた小田原城も、ジオサイトを織り成すスポットです。
どちらも博物館から近いので、まとめて箱根ジオパークの旅を計画してみてはいかがでしょうか。

小田原市街は箱根ジオパークの玄関口! 小田原駅から入生田駅までは各駅停車で10分ほどなので、小田原城→博物館→箱根温泉とラクラク移動できます。写真のパノラマは小田原城の天守閣から撮りました。

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