見出し画像

全国水族館の旅⑬鳥羽水族館

水族館の海洋哺乳類では、芸達者なイルカやアシカが鉄板の人気者だったりします。しかし、最上の癒しを提供してくれる点では、カイギュウ類(ジュゴンやマナティーなど)も負けていないと思います。
ジュゴンは人魚のモデルと言われています。日本で飼育展示されている唯一のジュゴンの名は「セレナ」。フィリピンの言葉・タガログ語で「人魚」を意味します。
そう、三重県の鳥羽市には、人魚が棲んでいるのです。


日本で唯一ジュゴンと会える大型水族館

伊勢湾に面する鳥羽水族館は、とても大きな水族展示施設です。延床面積は大阪の海遊館に次いで日本第2位、飼育生物の種数は1200種類以上と全国トップクラスを誇ります。国内屈指の人気水族館と言っても過言ではなく、三重県の旅行において、伊勢神宮への参拝とセットでツアーが組まれるほどの重要観光施設となっています。
本館の大きな強みの1つは、日本国内の水族館で唯一、ジュゴンを飼育展示していることです。さらに言えば、ジュゴンの飼育期間においては、世界最長記録を保持しています。

これほどのハイレベル・ハイクオリティな施設ですので、水族館マニアだけでなく多くの人々が連日来館しています。筆者もこれまで数回訪れており、個人的に大大大好きな水族館となっています。
今回は完全に電車旅としました。近畿日本鉄道の特急列車は総じてかっこいいので、前々から乗ってみたい車種がいくつかあったのです。

伊勢志摩方面へ行くなら、特急「しまかぜ」がオススメです。こんなにかっこいい列車に乗って旅ができたら最高ですね!

筆者は伊勢神宮にも行く予定だったので、伊勢市駅で一度降車しましたが、特急の路線は鳥羽駅にも続いています。近距離の駅に特急列車が停まる水族館はなかなかありません。有名旅行会社がツアーを組むだけあって、アクセスはとても充実しています。

鳥羽市のど真ん中で列車を降りましたら、海沿いの道を歩きながら水族館へ向かいましょう。潮風を浴びながら10分程度進むと、雄大なトバスイ(鳥羽水族館の略)が見えてきます。

伊勢湾の南端に立つ大型施設。駐車場側から見ると、ジュゴンのアートが目に入ります。
入口付近には、鳥羽市で発見された竜脚類恐竜トバリュウのパネル展示があります。鳥羽の誇りですので、水族館でも積極的にPRしていますね。

鳥羽水族館では館内に複数の飲食店やショップがあり、入館してからランチやショッピングを楽しむことができます。大規模な展示と合わせて、1日中レジャーを満喫できる水族館となっています。

通常のミュージアムショップだけでなく、館内には様々なお店が入っています。アクセサリー屋さんや真珠屋さんに立ち寄って、ちょっとリッチなお買い物をするのもいいかもしれません。
エントランスホール近くにはレストランがあります。観覧前に腹ごしらえするのも良し、全て見終わった後にゆっくり軽食をとるのも良しです。館内には他にもいくつかの飲食店があります。

さすが国内屈指の大型水族館。来館者の長期滞在を見越して、たくさんの館内サービスが導入されています。こちらも時間を忘れて思いきり楽んでいきたいと思います(笑)。

エントランスホールではザトウクジラの模型がお出迎え。いよいよ、究極レベルに楽しい鳥羽水族館の観覧へ出発です!

人魚の棲む水族館で、超多様な生き物たちが舞う!

驚異的な生物種数! お気に入りの生き物にきっと会える

実は本館には観覧順路がありません。コンセプトごとにゾーン分けがされており、見て回る順序は来館者が自由に決められます。

展示区画はA~Lまで12個にゾーニングされています。観覧順路はありませんので、好きな場所から好きな順番で回れます。

このスタイルのメリットは、状況に合わせて柔軟に観覧コースを変更できる点だと思います。仮にジュゴンやラッコの水槽が激混みしていても、他のゾーンから先に回って、混雑が解消されてからお目当てのゾーンに入るーーといった作戦もその場で立てられます。各所に休憩エリアがたくさんあるので、とても観覧面でのサービス度が高いと言えます。

先に述べました通り、本館の飼育生物の種数は全水族館トップレベルの1200種類以上であり、この記事ではほんの一部しかご紹介できません。ぜひ来館して、たくさんの驚異的な生命と対面してください。
筆者は最初に、伊勢志摩に棲むおいしい魚介類に会いに行きました。

伊勢湾の主役と言えば、もちろんイセエビ。おいしそうですね(笑)。
大きなヒラメ。イセエビに負けずおいしそうです。
金魚っぽく見えますが、海水魚のサクラダイです。自ら性転換する能力を備えています。

古生物オタクである筆者が次に気になったのは、太古から現代に血脈をつなぐ生き物たちです。彼らのまとうミステリアスな雰囲気と荘厳さがたまりません。

オウムガイ。古代から生存している種類ですが、有名なアンモナイトとは殻の構造が異なっています。
オーストラリアハイギョ。現生種のハイギョの中では最も原始的な特徴を備えています。かっこよさと可愛さを併せ持つフォルムが魅力的。
アメリカカブトガニ。約2億年前から姿や生態がほとんど変化していない「生きている化石」です。歩き方がとても可愛いです。

続いて、少々風変わりな生き物たちを見ていきましょう。インパクトの強い見た目が、来館者の心に強く残ります。

カワテブクロ。見た通りの名前で、ヒトデの一種です。海底の有機物や微生物を食べています。
殻が袋のごとく柔らかいイイジマフクロウニ。触りたくなる見た目ですが、毒を有しているので、野外で会っても絶対に触ってはいけません。
こちらは液浸標本。志摩市の海で捕獲された足が96本あるマダコです。多足化の原因はいまだ不明のようです。

風変わりな点では、ジャングルの水域に棲む魚たちも負けてはいません。怖そうな種類も特殊な能力の持ち主もいて、実に個性的です。

大きなデンキウナギが複数泳ぐ様は壮観です。おとなしそうな見た目に反して、体内の発電器官から強烈な電撃を放ちます。
群れると怖さを増すピラニアナッテリー。美しさだけでなく、怖さも彼らの魅力ですね。

本館では陸上生物の展示にも力を入れています。水棲哺乳類がピックアップされることの多い鳥羽水族館だからこそ、スナドリネコのようなネコ科肉食獣はユニークで映えます。

スナドリネコの子供たち。全て今年3月に生まれた個体です。
沖縄県産のミヤコカナヘビ。個体数が減少している貴重な爬虫類ですので、本館で域外保全されています。
本館では数種のリクガメが飼育されています。種類ごとの大きさや特徴の違いを見比べてみましょう。

屋外の展示ゾーンでは、水族館恒例のスターたちが魅了してくれます。活動的なペンギンたちの姿には、誰もが足を止めて見入っていました。

フンボルトペンギンは安定の大人気。クチバシの根元にあるピンク色の部分が彼らの特徴です。
コツメカワウソお昼寝中。水族館ではよく見られる光景ですね。

人目を引く鮮やかなカラーリングの生き物たちも、本館では目白押しです。芸術的な美しさに思わず息を呑んでしまいそうです。

ザリガニの一種マロン。稀に青い個体が生まれます。鮮やかなブルーがクールでかっこいい!
鳥羽市の水田で発見された真っ白なドジョウ。水田の持ち主の農家さんも初めて見たという、たいへん珍しい色素異常個体です。
同じく、色素変異個体のニホンスッポン。甲羅がやや黄金色に見えます。

水棲哺乳類たちが見せる夢の世界

それでは満を持して、鳥羽水族館のトップアイドルことジュゴンのセレナに会いに行きたいと思います。
鳥羽水族館では1985年からフィリピン政府と共にジュゴンの共同研究を実施しており、フィリピン政府より国交友好のシンボルとして日本に贈られた個体がセレナなのです。

鳥羽水族館のアイドル、ジュゴンの「セレナ」。その名は、タガログ語で「人魚」という意味。日本の水族館で展示されているジュゴンは彼女だけです。
餌の海草を食べるセレナ。彼女の飼育研究によって、ジュゴンの生態解明が進んでいきました。
セレナの哺乳器具の展示。もともとセレナは野生のジュゴンであり、母親とはぐれて迷子になっているところを保護されました。そして、鳥羽水族館で大切に育て上げられたのです。

人々に愛され、学術的にも重要な存在であるセレナ。これからも健康で長生きしてほしいですね。

そして、ジュゴンと系統的に近い親類であるアフリカマナティーも展示されています。両種を見比べてると、外観的にも行動的にも差異があるように感じられます。
ちなみに、ジュゴンとアフリカマナティーを合わせて飼育展示している水族館は世界でもトバスイだけです

アフリカマナティー。セレナよりも胴が大きく、尾ビレの形もジュゴンとは異なっています。
修行僧のようなポーズのアフリカマナティー。ちゃんと生きていますのでご安心を(笑)。

トップアイドルはもちろんセレナですが、彼女と並ぶ人気者がラッコたちです。筆者が観覧しに行ったとき、幸運にも給餌中でした。

お腹の上で餌を叩くラッコ。彼らのアイデンティティとも言うべき生態行動です。
可愛くてユニークなラッコたちは、セレナと並ぶ人気者です。水槽の前には、すごい人だかりができていました。

水族館における往年の人気者と言えばイルカです。本館では、比較的小型のイルカ(ハクジラ)類を飼育展示しています。かっこいいというよりむしろ、可愛い海の天使たちです。

寄り添って泳ぐイロワケイルカ。小型のイルカで、成体でも体重40 kgほどです。
こちらも2頭で仲良しなスナメリたち。自然界では、伊勢志摩の海にも出没します。

続くスターはアシカやアザラシなどの鰭脚類です。本館では生体展示の他に、鰭脚類のショーで来館者のハートを掴んでいます。特にセイウチはギャラリーとの距離が近く、大人も子供も大喜びでした。

セイウチのショーは来館者と至近距離で実施されました。とても大きなセイウチですが、本館の個体は可愛くてユーモラスです。
飼育員さんの投げたフリスビーをキャッチし、投げ返すカリフォルニアアシカ。信頼と特訓の賜物ですね。
もちろん、鰭脚類には通常の水族展示があります。こちらのバイカルアザラシは、淡水に棲む唯一のアザラシです。

ジュゴンのセレナをはじめ、水棲哺乳類たちの魅力が弾けています。これからもたくさんの人々を呼び込んで、トバスイをさらに賑やかに盛り上げてほしいですね。

鳥羽水族館 総合レビュー

所在地:三重県鳥羽市鳥羽3-3-6

強み:日本で唯一ジュゴンを飼育展示している水族館という強いブランド力、無脊椎動物・脊椎動物を問わず圧倒的な数の生体展示種数、来館者の意思で観覧順序を決められる自由度の高さ

アクセス面:最寄り駅は近畿日本鉄道の中之郷駅ですが、ここは敢えて鳥羽駅で下車することをオススメします。後者の方が周辺に観光施設や商店が多く、徒歩15分以内で水族館へ行くことができます。鳥羽駅までは大阪や奈良や名古屋から近鉄の特急列車が出ていますので、かっこいい車両に乗って快適な電車旅を味わえます。関西・中部地方にお住まいの方は自家用車で来館するのも大いにありですが、人気の水族館ですので、休日は駐車場が満車になる恐れがあります。よって、時間に余裕を持ってスケジューリングしましょう。

水族館ファンからの圧倒的な支持を集める超人気水族館ですので、誰もが大満足すること必至です。国内水族館で最多の1200種類以上の飼育生物種数を誇る点は特筆すべきであり、あらゆる水棲生物好きのニーズに完全対応していると言えます。無脊椎動物・脊椎動物問わず展示がとても充実していて、他の施設ではなかなか出会えない珍しい種類にもお目にかかれます。
順路が定められていないのは、小さなお子様を連れた人やマイペースに観覧したい人にぴったりのスタイルだと思います。各所に休憩エリアや飲食店があるため、複数のゾーンを見て回った後に、伊勢の海を見ながらゆっくり座って休むことができます。本館はとても広大なので、これは来館者にとって嬉しいサービスであると言えます。
やはり「日本で唯一ジュゴンを飼育する水族館」というキャッチコピーは強力であり、トバスイと言えばジュゴンだと連想するほど強い印象が世間に浸透しています。なおかつ、日本の水族館では珍しいマナティーにも会えるので、本館に来訪すれば、一般に馴染みの薄いカイギュウ類の姿を存分に堪能できます。飼育展示だけでなく、トバスイはジュゴンの保護活動にも長年携わっていますので、カイギュウ類の保全に大きな貢献をしている素晴らしい学術施設だと思います。

伊勢志摩旅行の絶対外せない超有名スポットとなっているトバスイ。万人が等しく最高な感動を得られる水族館ですので、ぜひ一度は来館してみてください。そして、一度行ったら、きっとまた訪れたくなるでしょう。

館内レストラン「花さんご」で食べられるセイウチのパフェ。ホットケーキの生地やチョコレートを用いて、見事にセイウチの顔を表現しています。とってもおいしかったです!

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?