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全国水族館の旅⑲渋川マリン水族館

瀬戸内海は日本最大の内海です。カブトガニやナメクジウオといった貴重な海洋生物の生息地となっているうえに、大きなクジラ類が出没することもあります。そして、おいしい魚介類がたくさん獲れるので、水産資源を得るために我々になくてはならない海です。
瀬戸内海に面する渋川海岸。そこには、豊かな海の生命と出会える水族館が立っています。


日本中に恵みを与える瀬戸内海

瀬戸内海は言わずと知れた日本最大の内海であり、おいしい海の幸がたくさん獲れます。私たちに恵みを与えてくれている海にはどのような生き物たちがいて、どのような生態系が築かれているのか、とても気になるところです。
ぜひとも、渋川マリン水族館にて瀬戸内海の秘密を心ゆくまで学びたいところです。

渋川マリン水族館は海岸線に位置しているため、車で向かうのがベストな選択だと思われます。筆者は岡山市内でレンタカーを借り、1時間ほどドライブを経て、恵みの瀬戸内海に到着しました。

岡山市内からレンタカーを飛ばして、玉野市の海岸に到着。寒い時期ですが、砂浜では家族連れが楽しそうに遊んでいらっしゃいました。
遠くに見えるのは瀬戸大橋。四国がすぐ側に感じられますね。

渋川海岸はとても美しいので、砂浜を歩いているだけでも癒されます。海の眺めと潮の香りを楽しんだら、ダイヤモンド瀬戸内マリンホテルの近くの水族館へと向かいましょう。

ゆったりと海岸線を歩くのも楽しいです。夏期に来れば、もちろん海水浴も楽しめます。
水族館の受付入口。展示棟は敷地の中央にあります。

潮の香り漂う海岸沿いの水族館

水族館+博物館! 日本の海の生命を見て学ぶ

本館の正式名称は玉野市立玉野海洋博物館と言って、厳密には海洋博物館となります(そもそも水族館とは博物館の一種です)。施設は水族館と標本資料の陳列館の2つから成っており、瀬戸内海の環境を網羅的に学べる構成となっています。

エントランスホールにはツチクジラの全身骨格があります。子供たちの描いたイラストも壁に貼られていて、館内には夢がいっぱいです。
入館後すぐに目にすることになる大水槽。瀬戸内海ゆかりの魚たちがたくさん泳いでいます。

瀬戸内海の環境を覗く前に、ユニークな生き物たちがお出迎え。不思議な形の展示水槽や手描きの親しみやすいキャプションによって、来館者の視線は釘付けです。

円筒形のクリオネ水槽。その鮮やかさに来館者は引き寄せられます。
ゆっくりと泳ぐクリオネ(ハタガカメガイ)。殻を持たない貝の仲間です。その優美な姿には癒されます。
逆さまのクラゲ? 見た目の通り、名前はサカサクラゲです。逆さまの状態で海底に貼りついて生活しています。
トビハゼ。幅広い地方の干潟に生息しています。
手描きの親しみやすいキャプション。可愛く暖かみのあるイラスト、理解しやすい解説によって、生き物たちの秘密がとてもよくわかります。

可愛い生き物たちに癒されたら、いよいよ本格的に瀬戸内海や日本の幅広い海に暮らす生命に会いに行きましょう。私たちが普段食べている魚たちから、ちょっと風変わりな種類まで実に様々な生き物たちが、海洋にひしめき合っていることがわかります。

四方を水槽に囲まれた展示エリア。広々としていて、とても壮観です。
磯の潮溜まり環境を再現した水槽。瀬戸内海では岸辺でも生物観察の楽しみがたくさんあります。

このエリアには美しい魚だけでなく、おいしそうな魚たちもたくさん展示されています(笑)。
海の生き物たちは保護すべき生命であると共に、持続的に利用可能な水産資源としての側面があります。そう思うと、水槽で活き活きと泳ぐクエやアカメの姿に、改めて感謝の念を感じます。

アヤメエビス。とてもおいしい海水魚です。鮮やかなストライプ模様をあしらっているので、観賞魚として飼育されることもあります。
おいしそうなクエの飼育水槽。白い個体は子供です。
同じく、おいしそうな魚サッパ。岡山県では「ままかり」と呼ばれ、酢漬けなどにされています。
2020年生まれのアカエイの子供。卵ではなく、赤ちゃんをそのまま出産するタイプの軟骨魚類です。
ネズミフグ。ハリセンボンと同じくトゲトゲですが、肉は食用になります。

無脊椎動物は愛らしくて個性的な子たちが多いです。特に白いナマコは縁起がいい生き物らしく、見事な純白に見入ってしまいます。また夏に渋川の海を訪れて、岸辺の生き物を観察してみたくなりました。

白いナマコは縁起物。ご利益がありそう?
可愛いコウイカ。この個体はまだ小さいですが、寿命が約1年ですので、成長スピードはとても早いです。

前述の通り、本館には各種標本を展示する陳列館があります。瀬戸内海のみならず、多様な海域の生物たちが集められています。
海洋博物館と称して差し支えない資料性の高さと展示クオリティ。水族展示の合間に、しっかりと見ておきましょう。マニアの方は、熱中して時間を忘れてしまうかも(?)。

スナメリの液浸標本。彼らは瀬戸内海にもよく出没します。
数多くの魚の剥製、海洋生物たちの液浸標本を展示。お目にかかれる資料は膨大です。
膨大な数の貝類標本。その美しさは、まさに大自然の芸術!
がっちりした甲殻類の標本は可愛くて好きです。カラッパ類のカニは缶切りのようなハサミを備えており、貝殻を器用に開けます。
化石標本の展示コーナーもあります。こちらの甲殻類化石は、瀬戸内海の海底から出土しました。

生き物との距離の近さを楽しめる体験展示

本館には生き物をゼロ距離で観察できる展示がいくつかあり、大人も子供もテンションMAXで楽しめます。
屋外展示エリアで人気を集めているのは、みんな大好き鰭脚類(アシカやアザラシの仲間)です。本館の飼育個体は好奇心旺盛な子が多く、来館者とよく目を合わせてくれます。特にゴマフアザラシの水槽前では、シャッターチャンスを狙う家族連れの微笑ましい姿が見られます。

屋外に設けられたゴマフアザラシの展示水槽。屈んで覗いてみると、高確率でアザラシたちとアイコンタクトできます。
アザラシたちはとっても好奇心旺盛。来館者の方を見て止まってくれるので、シャッターチャンスはたくさんあります。
階段を上って、水槽を上側から見ることができます。よく泳ぎ回るアザラシの姿を観察しましょう。

もう1種の鰭脚類はキタオットセイです。ただ、展示エリアのプールを見てもすぐには見つからないかもしれません。思わぬところで休憩している場合がありますので、手摺の下などを探してみることをオススメします。

こちらにはキタオットセイが展示されています。時間帯によっては、見つけるのに苦労するかもしれません。
なかなか見当たらないなぁと思っていたら、手摺の側で発見! 死角にいるかもしれませんので、くまなく探してみましょう。

体験型展示の極みが、屋外に設置された「ふれあいタイドプール」。タイドプールとは潮溜まりのことを指しており、自然界の磯と同じようにヒトデやナマコが飼育されています。この区画では、生き物たちにタッチすることができます。
上段のプールでは生き物たちに触ることはできませんが、少し大きな底生魚たちの姿を間近で楽しめます。プール内の魚たちは地元漁師さんが提供してくれた個体であり、地域との強いつながりが感じられます。

ヒトデやナマコに触れる「ふれあいタイドプール」。生き物との触れあいは、子供たちにとっていい経験になると思います。
上段のプール。タッチングプールではありませんが、ここでは少しずつ大きめの生き物を観察できます。
上段プールで飼育されている生き物は、地元の漁師さんが持ってきてくれた個体です。みんな瀬戸内海で生まれた子たちなのです。

屋外展示のもう1つの主役は、鰭脚類に勝るとも劣らない癒し系・ウミガメたち。大きな庇のあるプールが目印です。
本館では、清掃時に合わせて、水を抜いたプールでウミガメたちと触れあえる「ウミガメふれあいデー」というイベントが定期的に催されています。プールの中に入ってウミガメに触れる機会はなかなかないので、ふれあいデーに合わせて来館してみるのもとても楽しいと思います。

大きな庇のある屋外プール。ここでウミガメたちが飼育展示されています。
本館では、アカウミガメとアオウミガメの2種が飼育されています。餌をくれると思っているようで、プールの縁に近づくとウミガメたちが接近してきます。

渋川マリン水族館 総合レビュー

所在地: 岡山県玉野市渋川2-6-1

強み:瀬戸内海の海水魚をはじめとした多種の国産魚類展示、豊富な剥製・液浸標本を展示する資料性の高い陳列館、生き物を至近距離で感じられる体験型の屋外展示

アクセス面:地方水族館なら定石ですが、レンタカーもしくは自家用車で向かうことを強くオススメします。岡山駅からレンタカーを運転して行けば、1時間以内で水族館に到着します。もちろん、途中に飲食店やコンビニがありますので、ドライブがてら休憩しながら向かうことができます。宇野駅から両備バスに乗って行く手もありますが、便数は決して多くはありませんので、利用する際はばっちり時間計算をしておかなくてはなりません。瀬戸内海の観光地を巡る予定がある場合は、なおさらレンタカーか自家用車を強く推奨します。

生き物との距離が近い水族館であり、学術資料も豊富に展示されているので、大人も子供も海洋生物マニアも等しく楽しめる施設です。タッチングプールでの生き物との触れ合いは家族一緒に楽しめますし、アザラシやウミガメの人懐っこさには多くの方々が骨抜きにされると思われます。
博物館好きにとっては陳列館がとても興味深く、瀬戸内海や世界の海の自然環境について、大いに関心をそそられます。膨大な貝類や甲殻類の標本に加え、化石まで展示されているのは、まさに至れり尽くせりといった感じです。
やはり特筆すべきは、海沿いの水族館ならではの豊富な海水魚の生体展示です。見るからにおいしそうな魚介類のオンパレードであり、瀬戸内海の幸を食べたい気分にさせてくれます。観覧後は、宿泊先にて地元の魚料理を味わい尽くしましょう。

敷地内には、海洋科学にまつわる重要な資料がたくさん展示されています。こちらは1975年に開発された無人水中作業艇MURS-100。

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