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第95回選抜高等学校野球大会総括

 記念大会となった第95回選抜高等学校野球大会は、山梨学院の初優勝で幕を閉じた。山梨県勢の甲子園優勝は春夏通じて初めてとなる。

 山梨学院はエース林の好投が光った。球速は目を見張るほど速くはないものの、制球力の高さと緩急を上手く使った投球で、6戦10失点と安定していた。
 6試合をほぼ1人で投げ抜きながら、球数制限に一度も引っかからなかった。少ない球数で抑える投球術が冴えた結果だった。
 打線も大会が進むにつれて段々と温まっていった。特に主将の進藤は11安打と打撃が冴え、ショートの守備でも好守を連発した。ここ一番での畳み掛けるような打線のつながりも見事だった。
 準優勝の報徳学園は、勝負強さが光る勝ち上がりだった。
 3回戦・東邦戦、準々決勝・仙台育英戦と、2試合連続のタイブレークをともにサヨナラで勝ち上がると、準決勝・大阪桐蔭戦では5点差をひっくり返す劇的な勝ち上がりを見せた。
 終盤まで諦めない粘り強さは「逆転の報徳」と呼ばれたかつての姿の復活を印象付けた。仙台育英、大阪桐蔭と昨年の甲子園優勝校をどちらも破り、古豪復活を予感させるような活躍ぶりだった。
 特に、盛田、間木、今朝丸の3投手による継投が効果的で、間木と今朝丸の2年生投手の奮闘が際立っていた。大角監督の思い切った投手交代もよくハマっていた。
 春連覇を狙った大阪桐蔭はベスト4に終わったものの、エースの前田は流石の投球術を見せつけた。冬の成長があまり見えなかった点は残念だったが、それでも大崩れしない安定感は抜群だった。3回戦の能代松陽戦ではスクイズで取った1点を守り切るなど、これまでの大阪桐蔭とは一味違う戦い方も印象的だった。
 夏春連覇を目指した仙台育英はベスト8で姿を消した。昨夏優勝メンバーが多く残るチームの一体感は素晴らしかった。初戦の慶應戦でタイブレークを制した戦いぶりは経験の差を感じさせるものであったし、敗れた報徳学園戦でも土壇場で追いつく粘り強さを見せるなど、昨夏優勝校の名に恥じぬ姿を見せてくれた。
 ベスト4の広陵も、主砲の真鍋がパワーだけでない姿を見せた。柔らかいバットコントロールから広角に打ち分ける姿は、将来の三冠王の風格を漂わせていた。2年生エース高尾の好投も光った。
 他にも光の升田、専大松戸の平野、能代松陽の森岡など今大会も好投手の活躍が目立っていた。彼らが夏までにどれだけ成長できるかも楽しみである。
 21世紀枠では徳島の城東が印象的であった。小技や機動力を絡めながらノーヒットで点を奪う姿は、限られた練習環境の中で創意工夫を凝らしてきた様子がよく伝わってきた。大舞台で恐れずに自分達の野球を貫き通した姿勢も評価したい。
 また、城東の女子マネージャー・永野悠菜さんが、甲子園で初めて女子としてノッカーを務めた。これは甲子園の歴史に残る大きな一歩である。彼女がノッカーを務めたという事実。それが高校野球の歴史において何よりも重要なことなのである。
 今大会は3点差以内の接戦が全体の7割を占めていた。春は打者が生きた投手のボールをあまり打てていないため、どうしてもロースコアになりやすい。だが、その中でもこれだけ接戦が多いのは、ひとえに各地域各学校のレベルが高まっている証左だろう。投手力や守備力では、今大会各校とも遜色なかったのではないだろうか。
 センバツを終えた高校野球は、新たに新1年生を迎え、夏の大会に向かって突き進んでいく。
 一躍今夏をリードする存在となった山梨学院や報徳学園、高校野球界の横綱たる大阪桐蔭、夏連覇を目指す仙台育英など、今夏も楽しみな学校が多そうだ。
 新3年生にとっては最後の数ヶ月。夏までにどれだけの成長を見せてくれるのか。夏の地方大会、そして甲子園を楽しみに待つこととしよう。

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