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『サタデー内装フィーバー』 vo,5 DIYのプロ

『DIY』とは『ディーアイワイ』と読む言葉で、『DO IT YOURSELF』の略語であり、
その意味は『自分でやれ!』的な意味なのだ。

そして冒頭一節で話しが変わるが、何を隠そう、俺は最終学歴が中学卒業のエリートクズなのだ。
だか実は勉強は嫌いでは無かった。
いや、むしろ好きな方だったと思う。

知らない事を新たに知るのはいつだって、喜びを感じる。それが仕事や会話に即生かせる知識ならその喜びもひとしおだ。

ただ今日日、パソコンやスマホを前にして知識の数で勝負したところで、一生を賭けてもその万分の一程の知識も得られないであろうと思うと『知る』喜びも半減、いや9割減、いやオールカット、オールフリーだ。
喜びオールカットの知識のインストールだ。

例えるならアルコールオールフリーの飲み物の何処に魅力があるんだ‼️といった話しなのだが、どうやら割と人気らしい。
ワァオ、世の中ってナンデモアリ。

ともかく知識の獲得とは、今やその字の如く、手元の知識の一部を脳に移行するだけの作業になってしまったのだ。

なので自分の生活に関わりのない部分の知識の獲得に喜びを感じるのは難しい。

俺は小学生の頃に各国の首都を覚えるのが好きで、意味なく記憶していてそれを自慢にしていた。
残り40ヵ国位の首都でコンプリートのところまで暗記したのだか、何の気無しに覚えるのを止めてしまった。きっともっと楽しい遊びが見つかったんだろう。
そんな訳でコンプリートしていないままの40ヵ国の首都を30歳も越したある日、再度覚えようとチャレンジしてみたが、この年になるとイチイチ行動を起こす度に理由をつけようとする。

それならまだしも、やらなくても良い方の理由を付けたがるのだ。
『覚えたところで意味なくね』
というヤツだ。大人になると言うやつだ。

これはオスロ(恐ろ)しい、バグダット(僕だった)らウィーンと泣くだローマ(ろーな)。
モスクワ(もしくは)、ロンドン(どんどん)ソウルがペキンと折れて、立ち直れそうもナイロビ。
女の人だったらスリジャヤワルダナプラコッテ(スリじゃな?悪だな?ブラ取って。)
とかいう痴女になるキエフ(気です)ね。

最早文章としてはギリ成立していないが、こう言う言葉遊びが出来るあたり、まんざら意味のない事では無かった様だ。
ただ、良いとこ活用出来るのがこんなレベルだとしたら、残り40ヵ国の首都を覚えるのは、老後まで保留だ。

もはや脱線どころかそのまま空に飛んでいってしまった。
まるで銀河鉄道999だ。
(メーテルって、少年心にとって最強レベルの『理想の年上の女性』だったな。キレイで優しくてミステリアスで。きっと今や俺の方が年上なんだろうけど、会ったら敬語使っちゃうな。)

最早、開き直って、あるいは別の銀河目指して、ここからはアニメの話でもしたい気持ちになってしまったが、それは自由過ぎる。

冒頭の『DIY』の件の出落ち感が意味不明だ。

スポンサーに株式会社DIYさんがついていようものなら、冒頭一節で触れて
『はい、お仕事終了。ここからが本番。』
などという手口も俺なら或いはしそうだが、
スポンサーもパトロンもパトラッシュも俺にはついていないのだ。

そういえば、パトラッシュで思いだしたが、、、
いや、アニメの話はもういいか。。

そんな訳で半ば強引ではあるが、冒頭の続きに戻ろう。

とにかく意外と勉強は好きで、
余り不得手な教科はなかったのだが、
しかしその中で唯一苦手としていたのが
『英語』だった。

日本語もままならない中で、他国語なんぞ覚えてられるかという、へそ曲がりの反骨精神かどうかは分からないが、
とにかく英語は苦手で、今でも全然成長していない。

とりわけ、未だに口頭では尺寸法で話をする様な機会も多い内装業は、俺にはおあつらえ向きとも言えるだろう。

もちろん内装業にも横文字のカタカナ英語的な名詞は最早沢山あり、『ビット』『スパナ』『シャフト』『ピット』…………と上げればキリが無いが、教養に溢れかえった内装職人達は意味などまるで関係なく、まるでハーフの友達の名前を呼ぶ様に、ただ当たり前にカタカナ英語を使っているだけだ。

本来の意味など当然知らないので、馴染みが無さ過ぎて、間違えて覚えているおっちゃんも沢山いるのだ。

そうしてここ10年でようやく現れた熟語が『DIY』というヤツだ。(ようやく戻ってこれた。。)

『DIY』とは『ディーアイワイ』と読む言葉で、『DO IT YOURSELF』の略語であり、
その意味は『自分でやれ!』的な意味なのだ。

しかしこの『自分でやれ!』とは、現代日本では『日曜大工なんぞ自分でやれ!』的な意味を持っている。
もっと言えば住宅に関わる工事全般を指して表現するパターンが多い。

直訳の意味で考えたら、『DIY』スクールで料理を教えてても間違いでは無いが、
恐らく『本来ならプロに依頼すべき仕事を頑張って自分でやってみたらどうですか?』
と言うのが、概ね今現在使われている意味なので、日頃からする料理何かはやはり該当しないのであろう。

そう思えば、一時俺は『DIYのプロ』です。
と名乗っていたが、考えてみたら非常にややこしい肩書きだ。『アマチュア』ならではで、『アマチュア』だからこその『DIY』の『プロ』と言うのは意味不明だ。

基本的には人間の格好をして、人間がピンチになると妖怪に変身し、パワーアップして
人間を助けて、最終的には
『早く人間になりたーい!』
って言ってるベム、ベラ、ベロの『妖怪人間』みたいなものだろう。(今回アニメネタ多いな。後、全部古すぎる)

この例えは無理があるか。

とにかく、上手く説明出来ない肩書きである事を理解して、俺は『DIYのプロ』と言う肩書き(どうせ自称だけど)を工事中の土間に投げ捨てて、砕石敷いて、転圧して、鉄筋とコンクリートで封印した。

もう二度と名乗る事は無いだろう。 

しかし、その矛盾ともとれる
『DIYのプロ』
の様な存在を俺は知っている。
俺はかつて、たしかに見たのだ。

平成23年頃、
仕事でもプライベートで家具を作る機会がことの他多くあって、その際はホームセンターで材料を仕入れて、ホームセンターに大量の工具を持ち込んで、加工と組み立てさせて貰っていた。
(もちろんちゃんと許可貰って)

ホームセンターの加工場にはまず無いようなそこそこ高価で大きい工具も持ち込んでたので、他に利用するお客さんが常設の少しちゃっちい工具で苦労して何か加工してる時には、ウチの工具も貸してあげて、使い方も教えてあげていた。

中には『全部やっちゃって下さい。』
という『DIY』を丸投げする強者もいたが、これも本来の意味から考えると矛盾しまくってた笑えた。

そんな訳で、その時は3日位掛けて随分な凝ったモノを作っていたので、お客さんや店のスタッフさんから声掛けられたり、写真撮ってくれたりして、貴重な体験が出来た。(現場では誰もが当たり前にやってる事だけどね。)

そこから数週間して、また家具(その時は仕事)の材料を仕入れるついでに加工しようと、ホームセンターの加工場に行った日の事だった。

その日の加工場には70歳後半位のオッちゃんと近くには、大量の年季の入った工具が置かれていた。
俺はいつも通り(その時は加工が少なかったのでそんな数は無かったが)自分の道具一式を持ち込んで、作業していた。

オッちゃんは、何をするでも無く、最初俺の加工の作業をじっと見ていたが、暫くすると興味が失せたのか、別の方を見ていた。

加工場を使わせて貰っている以上、他のお客さんに見られるのも、道具貸すのも、教えるのも『場所代』みたいなものなので、ウェルカムだったが、そのオッちゃんの行動はその時は単純に謎だった。

暫くして、大学生位の4人組の男女グループが、材料を持って加工場に入ってきて、
何かを作り始めた。

ある程度まで順調にやっていたが、その内の男子1人がベニヤの加工に随分苦戦していたので、『道具貸してやるかな』と丁度俺が思った位のタイミングで、オッちゃんがカットインしてきた。

『こうやってやるんだよ。』

オッちゃんは自分の持っていた道具で、男子学生のベニヤを加工し始めた。
俺は一瞬、トンビに油揚げを攫われる感覚に落ちいったが、考えてみたら別にDIYの講師としてここにいる訳でも無ければ、仕事で使う材の加工をとっとと終わらせてなくてはならないので、また自分の作業に集中していた。

すると後ろから度々
『キャー♪』
『すごーい!』
と言った黄色い声が聞こえてきた。

どうやらオッちゃんは若者達の加工や組み立てを自分の道具を駆使して手伝った(というかほぼ全部やってたっぽい)みたいで、男子学生こそ苦笑いだっただろうが、女子学生達は大いに喜び、はしゃいでいた。

その瞬間に俺はオッちゃんがここに居る理由を理解した。

その時はお昼前だったが、オッちゃんはきっと朝からいたんだろう。
俺は15時には加工場を後にしたのだが、オッちゃんはきっと閉店までいたんだろう。
オッちゃんは昨日も一昨日にここにいて、そして明日もここにいるんだろう。

何となくではあるが、俺は確信していた。

オッちゃんはこの場所に陣取って、自前の道具を取り揃えて、セルフDIY講師としてヒーローの時を楽しんでいたのだ。

ただそうなれば、俺の仕事はシンプルだ。
自分の仕事に没頭するのみだ。

笑顔の学生グループが『ありがとうございます❣️』と言って帰った後も、オッちゃんはおぼつかない手付きのお客さんを見つけてはグイグイ行って、他人の材料をバシバシ切っては感謝の言葉を頂いていた。

中には『自分でやりたいので、、、』と言ったスタンスで来ていたちょっと気弱な中年男性の材料も半ば強引に加工して組み立てていた。
『あ、後は、自分でやりますよ』
と言った中年男性の声は惜しくも届かず
『ここは、こっちの方がいいんだよ』
と言って全部やっていった。

こうなると押し売りだ。いや、お金取ってる訳じゃ無いオッちゃんからしたら『Do it myself』いうなれば『DIM』だ。
何とも含蓄のある略語になったものだが、
さもありなんだ。

そうこうしている内に、俺の加工も終わり、
掃除して片付けている時に会話が聞こえてきた。オッちゃんとその日の5組目位ののターゲットであろう、メガネの好青年との会話だった。

『いやー、助かりました。ありがとうございます。ところでやっぱりプロだったんですか?』

とメガネの好青年が聞いていた。
するとオッちゃんは少し胸を張って、自慢げにこう言っていたのだ。

『俺はさあー、こう見えても若い時、大工になりたかったんだよ。』

大工だったんじゃねーのかよ!

なりたかっただけなのかよー!未遂かよ!

なるだけなら大抵、誰でもなれるよ!

ってか、オッちゃん、そのプロフィールいらねーよ。むしろマイナスだよ。

『早く人間になりたーい!』って言う妖怪人間と同属性だよ!
妖怪人間だよ!妖怪オッちゃんだよ!

俺は心の中で全身全霊でツッコミを入れた。
心の声が枯れて潰れる程に、大きく、俺にしか聞こえない声で。

暫くして、俺は少し冷静になって
『確かにオッちゃんの若い時の大工さんは今より全然技術が要求されたかもな。誰でもなれるモノでは無かったかもなー。』
と思い、落ち着きを取り戻した。

とは言え、オッちゃんが話した相手も昔を知る様な世代では無く、何なら俺よりも少し若い位の青年だ。

俺と同じツッコミを心の中で入れてても不思議では無い。

ともあれ、また新たな6組目のターゲットを発見し特攻しているオッちゃんを尻目に、俺は加工場を後にすることにした。

『オッちゃん。妖怪人間の方が、人間より強いからね。』

そう心の中で呟きながら、大工より大工らしい老後を堪能しているオッちゃんに無言の別れを告げた。

それから、ちょくちょくホームセンターの加工場に行く度、やっぱりオッちゃんは同じ位置に陣取っていた。
道具は増えていた。
ってか、イスも自分専用の柔らかいイスを持ち込んでいた。常設のイス硬いもんね。

数年後、すっかり行かなくなったホームセンターの加工場に久しぶりに行くと、そこにオッちゃんの姿は無かった。道具も椅子も。
そこはどこにであるホームセンターの加工場だった。
事情は何も分からないけど、少し寂しかった。

名前も、年齢も、元々の職業も何も知らないオッちゃん。

病院の待合室よりも、ホームセンターの加工場を選んだオッちゃん。

大工になりたかった『DIYのプロ』のオッちゃん。

『あなたみたいになりたい。』

と俺は思った。

後書き

えー、バタバタしてて更新が遅くなってしまいましたが、ちゃんと書いてましたよ。

何かようやく短編小説っぽい、内装にもちょっと絡めて、それらしい形のものが書けて、内容はともかく今回は満足です。
なのでそれらしく、口調も敬語で、後書きなんてものを書いてみたくなった訳です。

後、もう一つ後書きを書きたかった理由。

今現在、大工と言う職にはほぼ誰でもなれると思います。しかし、誰でも一人前になれる訳では無いし、『一流の』と冠がつけばそれはほんの極々一部だと思うのです。
それはどの職業でも同じ事ですが、なるだけなら学歴も国家資格もいらない(大工にも国家資格はあるしそれには学歴が必要です。)
事を考えたら、医者や弁護士やパイロットなどに比べたら(極端なところと比べるけど)
まあ、入口のハードルはメチャクチャ低いと言えます。

そもそも大工には色んな種類があって、
その種類によっても内容も適正も全く違うので、一概には言えませんが、種類云々はここでは省略するので、興味のある方は是非調べてみて下さい。

自分が自分を卑下するのは問題無いと思っていますが、大工さん全体を巻き込まない様に、フォローしたかった訳です。

そんな訳で、ストックも出来ているので、
ちょくちょくアップしていければと思います。

ではまた次回

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