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26列目より前でライブを見たくない

エビ中にハマっている。

先日100%ebismの市川公演に行ってきた。
相変わらずすごいセトリ。
初見の血が沸騰する感じは無いと思っていたので、『極力演出を細かく見るぞ!』という心意気で挑んだのですが、1曲目が始まった途端にダメでした。

あの、1曲目の演出大好き。

ガッツリネタバレレポは、TDC参加時のものを置いていきます。
よかったら見てね。

さて、市川公演は26列目上手で拝見した。
最後列が28列なのでほぼ最後列。視界良好。
私の左の席が4席分空いていて、動き安かったぶんもったいないなと思う。

確かに28列の会場の中で26列目というのは、『良席』とは言えない。ちょっと視力が弱ければメンバーの表情はぼんやりしてしまうし、推しを見失う瞬間が何回かあった。

しかし、私の席運は絶望的に悪い。自分の名義で買ったものは基本悪い。
ポルノのファンクラブ枠で取ったチケットは基本的にスタンド席。ホールも基本2階以上の席のご用意。BUMPに至っては、スクリーンの上半分が見えない席という、ある意味での神引きをしている。
ゼルダが『今回は空が舞台!』と話題になる前から、私はずっと天空席に住んでいるのだ。

それに比べれば今回の26列は比較的良い席だった。
だって、1階席なんですもの。ちゃんと傾斜があって視界も良好。傾斜がなく見にくければ、物理的に25列分潰すつもりだったので、会場に迷惑がかからなくて本当に良かったと思う。

いざ、メンバーがステージに立つと見える見える。
2階席最前と、1階席後方の景色は全く違う。
物理的な距離感は2階席前方と余り変わらないかもしれないが、精神的に近い。こんなに見えていいんですか?

メンバーがステージギリギリに立つと近さが際立つ。ほんの数メートル先で歌って踊っているのが信じられない。
更に、オタクならわかると思うんだけど、ライブ見てる時は眼球にズーム機能が着く。細かい動きとか、指の運びとかめちゃくちゃ見える。だから本当に遠さは問題ないし、ずっと変わらずドキドキしていた。

ところで、私の推しは小林歌穂さんというのですが、手の表現力が本当に素敵な方だ。気持ちが手に出ているというか、小林歌穂さんがステージで歌っているはずなのに、小林歌穂さんじゃなくて、曲の主人公が舞台に降臨しているような瞬間がある。

ソロパートで手を差し伸べるように客席に手を伸ばす。
ユニゾンパートで1人だけ、空に向かって何かをつかもうとする。

その動作一つ一つが、曲に込められた感情を何倍にも濃くする。圧倒的体現力。演技力。もしかしたらイタコとか降霊術とか、そういう部類の話なのかもしれない。

例えば、今回のツアーのアンコールで披露される固定曲。TDCに引き続き、市川公演でもこの演技力がバチバチに輝いていた。

今回のアンコール1曲目は『アンコールの恋』という曲だ。

リリースされた当時は私はオタクではなかったが、音源から『等身大』という言葉が滲み出るほど、当時の彼女たちにとって身の丈にあった曲だったのが想像出来る。
学生の恋。腫れた惚れたのいざこざ。学生らしい恋愛の様子を垣間見て、『可愛い』と感じる部類のものだと思う。実際可愛いし、いじらしいし、大好きな曲だと思っていた。

もう1回 もう1回 君に会いたくて

思っていたのだが...

甘酸っぱい 幸せライムみたい

だが...

もう1回 もう1回 一緒に笑いたくて

...

夢さえ消したくなるの アンコールの恋

うわぁぁぁぁぁぁー!きっっっっつい!

となった。

ebismのアンコールの恋、しんどくないですか?皆さん?

妹メン達が歌うのは可愛い。
少しだけ背伸びをして、自分から終わらせた恋に負けそうになるけど、きっと友達とか学校の忙しさとか、別のものが慰めてくれるのが想像出来る。だから歌詞通り『甘酸っぱい』で終わる。

ただ、姉メンが歌うとどうだろう。
かほりこはもうすぐ加入10年になる。
真山世代の初期メンは10年オーバーだ。大ベテランだ。

その、大ベテランプロ集団である姉メン(無敵)が歌う

甘酸っぱい 幸せライムみたい

夢さえ捨てたくなるの

がとにかくきつい。

大人になると当たり前だけど、甘酸っぱい恋愛から遠ざかる。どんどん打算的になって、『好き』じゃなくて『嫌いじゃない』の数を数え始める。
それを踏まえた『甘酸っぱくてライムみたいな幸せ』がきついのでは無い。自ら終わりを告げた立ち位置から見る『甘酸っぱいライムみたいな幸せ。』が、輝かしすぎて辛い。

更に、自ら別れを告げているのにも関わらず辛く、答えの分かりきった葛藤の出口で待つ『夢さえ捨てたくなる』の部分で、心臓掴まれちゃった方が楽なんじゃないかと思うくらい辛い。

もし私が曲の主人公(10代)なら、『アイドルなんかやってなかったら良かったなぁ』と思ってしまう恋愛をするかもしれない。
プロ意識の欠落とかではなく、止められないんだから仕方ないと思うし。(あと実際他の界隈だとあるでしょ?そういうの。)

しかし、私が曲の主人公(20代から上)になると、『アイドルなんかやってなければ良かったな』にならない。
自分で築いて来たキャリア含めて、全部捨ててでも手に入れたかったものを、自ら遠ざける決断をした絶望感が、ベッタリと体を覆う。
それが、主人公(20代から上)から発せられる『夢さえ捨てたくなる』の辛さだ。

ここで、冒頭に話した小林歌穂さんの演技力の話に戻る。

ラストのサビの部分。
全員のユニゾンで、メンバー横1列でステージギリギリまで出てくる。

メンバーは客席に目をやり、身振り手振りを加えながら素晴らしい歌を届けていた。
一方、小林歌穂さんは右手でご自身の顔を覆い、

子供っぽい 涙もながせたから

と、虚無に叫ぶように歌っていた。

ペンライト降るのを忘れる。
息をするのも忘れる。

だって、そこには確かに『自ら別れを告げたのにも関わらず、後悔に打ちひしがれる女性』がいたのだから。
大人が歌う『子供っぽい涙』が貴重で、どれほど大事で、社会に出て見えにくくなる人間の『本質』だと、私自身の経験として見に覚えがあるからだ。

ステージに立つ人間は、基本的に表情は客席に向けているのがベターだと思う。
でも、アンコールの恋のこのタイミングにおいて、『顔を覆い隠して、叫ぶように歌う』がベストだった。

もう一度言うが、これが26列目からの景色である。
私の前には25列分の『私より前の席で見ている人』が居る。その人たちはどういう気持ちで見ているんだろう。
26列目で私はこれだけ、心かき乱されて、しんどいと甘酸っぱいのミックスジュースをがぶがぶ飲まされてるのに。

もし、26列目より前でエビ中を見てしまったら。
もし、小林歌穂さんの手を間近で見てしまったら、本当に泣き崩れてしまいそうだし、実際もっと近くで見るのが怖いとすら感じる。

26列目より前が怖い。
26列目より前が怖い。

どうか、これからの公演に参加する皆様。
小林歌穂さんの手に注目して、アンコールの恋見てみてください。すごいので。

あぁー!26列目より前の席怖いな!
あぁー!あとお茶も怖いな!

(こうやって言ってると26列目より前のチケットが誰かから回ってくるって、そういったニュアンスの落語あったよね。)

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