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巣ごもり2DK─2020年5月11日~5月12日

2020年5月11日
 ジョン・ロックによれば、個々人は本来的に自由であるが、そうした人々が集まって社会を形成すると、摩擦や対立が生じるため、政府を必要とする。政府は生命や財産の保護など社会の人々が安全安心に暮らせるように働かなければならない。政府は信頼に基づく社会契約を結んでいる。ところが、パンデミックに際し、政府はその役割をはたしていないと思う人が世界的に多い。

 NHKは、2020年5月10日 16時10分更新「新型コロナ対応のリーダーシップ 多くの国や地域で不満の評価」においてそれを次のように伝えている。

海外の調査会社が、世界23の国と地域の人たちに新型コロナウイルスへの対応について、政治や経済分野のリーダーシップをどう評価するか、世論調査を行ったところ、多くが満足していないことがわかりました。
この調査は、シンガポールの市場調査機関などが、23の国や地域の18歳から80歳までの合わせて1万2000人余りを対象に、先月3日から19日にかけてオンラインで行ったものです。
回答者は、新型コロナウイルスをめぐる政治、経済、地域社会、それにメディアの4つの分野のリーダーシップについて、100点満点で評価しました。
その結果、全体の平均は45点となり、50点を超えたのは7つの国と地域だけで、多くが対応に満足していないことがわかりました。
アジアでは、中国、ベトナム、インドなど、平均を上回る国や地域が多かった一方、アメリカやヨーロッパの国々はいずれも平均を下回りました。
これについて「アジア諸国では過去にMERSやSARSのような感染症を経験したことでリーダーシップが形成されたが、西洋諸国では前例がなく、政府への信頼が損なわれた」と分析しています。
総合評価が最も低かったのが日本で、調査にあたった責任者は「安倍政権は緊急事態宣言が遅れたなどと批判を受け、国民のリーダーシップ評価においては、おそらく不合格だった」などと指摘しています。

 これは「リーダーシップ」ではなく、政府の存在意義の問題だ。政府が社会のために働いていないと個々人が思えば、本来的な自由の行動をとる可能性がある。沢村亙アメリカ総局長は『朝日新聞』2020年5月10日 5時00分更新「(日曜に想う)人々が築く民主主義、危機にこそ アメリカ総局長・沢村亙」において、米国では銃の購入が増えており、その主要な原因の一つが政府への信頼低下だと報告している。「新型コロナ問題で「大統領の発言を信頼する」は36%「しない」は52%。信頼の空白を埋めるように銃が全米で飛ぶように売れている…民主主義論が専門のシンクタンク研究者、トマス・カロザース氏の言葉を思い出す。『これは外敵による危機ではなく、ガバナンスの危機です』」。記者は「民主主義」を用いているが、正しくは政府との「社会契約」だ。

 しかし、こうした「万人の万人に対する戦争状態」に陥れば、人々は「リヴァイアサン」を求めるようになる。ただ、その実態は「僭主」の方がふさわしい。

 それを避けるために、ジャレド・ダイアモンドは、『朝日新聞』2020年5月8日 10時00分更新のインタビュー記事「コロナ克服する国家の5条件」を挙げている。 もっとも、この内容は台湾がすでに実践した政策である。「第一に、海外からの渡航をどれぐらい制限できたか。第二に、感染者に対する隔離をどの程度行っているか。第三に、感染者の行動をたどり、感染者と接触した人々も強制的に隔離しているか。ベトナムで感染拡大が抑えられているのは、それを行っているからでしょう」。

 福岡静哉台北支局記者は、『毎日新聞』2020年5月8日更新「台湾のコロナ対策に学ぶ 政府への信頼がカギ」において、台湾政府の迅速な対応について次のように述べている。

 台湾の新型コロナウイルス対策が注目されている。人口約2360万人に対し、感染者数は500人以下で、死者数は10人以下にとどまる。早期の水際対策、海外から戻った人や濃厚接触者の徹底した隔離、いち早いマスク増産と市民への供給など理由は多い。現場で取材を重ねていると、政治の緊張感と、政府に対する市民の信頼感がカギだと感じている。
 とにかく初動が早かった。台湾政府は、中国湖北省武漢市が2019年12月31日に新型ウイルスへの集団感染を初めて公表すると、その日のうちに、武漢からの直行便の全乗客に検疫を始めた。今年1月下旬には中国人の入境手続きを原則、停止した。背景にあるのは、02~03年に台湾でも流行した重症急性呼吸器症候群(SARS)。多くの犠牲者を出した教訓を踏まえ、米疾病対策センター(CDC)をモデルに専門機関を設置し、法律も改正して、即応体制を整えていた。
 象徴的なのは、通常と変わらない授業を続ける教育現場だ。政府は2月2日、小中高校で11日に予定された冬休み明けの授業開始を2週間遅らせると発表した。政府は「学校の防疫体制を整えるのに必要な期間」と説明し、授業は25日、計画通りに始まった。夏休みを2週間短縮し、遅れた分は取り戻す。多くの学校は政府の指示で、感染者が出た時に備え、オンライン授業の準備も同時に進めた。

 台湾政府は社会契約に忠実である。それが結局は「カギ」だ。

 夕食には、和風ポークカレーにラッキョウを添え、野菜サラダ、食後には緑茶。屋内ウォーキングは1035歩。都内の新規陽性者数は22人。

参照文献
福岡静哉、「台湾のコロナ対策に学ぶ 政府への信頼がカギ=福岡静哉(台北支局)」、『毎日新聞』、2020年5月8日更新刊
https://mainichi.jp/articles/20200508/ddm/005/070/009000c
太田啓之、「コロナ克服する国家の5条件 ジャレド・ダイアモンド氏」、『朝日新聞』、2020年5月8日 10時00分更新
https://www.asahi.com/articles/ASN573CX3N4TUCVL006.html
沢村亙、「(日曜に想う)人々が築く民主主義、危機にこそ アメリカ総局長・沢村亙」、『朝日新聞』、2020年5月10日 5時00分更新
https://www.asahi.com/articles/DA3S14470663.html
「新型コロナ対応のリーダーシップ 多くの国や地域で不満の評価」、「NHK」、2020年5月10日 16時10分更新
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200510/k10012424051000.html


2020年5月12日
 今日からちょうど200年前の1820年5月12日、近代看護を築いたフローレンス・ナイチンゲールが生まれる。彼女の誕生日にちなみ、1974年から国際看護師協会は5月12日を「国際看護師の日」に制定している。まさに今、看護師は国際的に過酷な状況で使命を果たすべく取り組んでいる。その中には消耗したり、倒れたり、感染したり、亡くなったりする人も少なくない。今年ほど世界がこの日をリスペクトしなければならない時は21世紀に入ってなかったように思われる。しかも、この状態がいつ収束するかのめども立たない。世界は毎日が監護の日と思わねばならない。

 新型コロナウイルス感染症の新たな予防・治療。の開発をめぐる報道をよく目にする。中にはいささか突飛と思われるものもある。ものになるのは数えられるくらいで、おそらく伝えられたニュースの多くはその後立ち消えになるだろう。しかし、イノベーションとはそういうものだ。

 AFPは、2020年5月11日 3:54更新「ラマ、コロナ治療の鍵握る ベルギー」において、そうしたユニークな開発例を次のように伝えている。

【5月11日 AFP】新型コロナウイルス感染症(COVID-19)の抗ウイルス薬治療法をめぐり、世界の科学者らは一見独特な手法を取り入れて、先を争い開発に挑んでいる。
 ベルギーの一流科学者らは、アンデス山脈に生息し荷役用の動物として知られるラマの体内で作られた抗体の分離に着手。この取り組みは確かな先例に基づくものだと強調する。
 ベルギー・ヘント(Ghent)にあるフランドル生物工学研究所(VIB)のグザビエ・サエレン(Xavier Saelens)教授は、ラマはこれまでにもわれわれを救っているとしてAFPに成功への抱負を語った。同氏によると、ラマの抗体由来の薬剤はすでに市場に出回っており、血液疾患の一つ、血栓性血小板減少性紫斑病(TTP)の治療薬「カプラシズマブ」を例に挙げた。
 研究では、雌のラマ「ウインター」に新型コロナウイルスの表面に存在するタンパク質を注射し、体内に抗体を作らせた。この抗体は、担体を遮断しウイルスの脅威を無効にする役割を果たす可能性があるとみられている。VIB研究員のドリアン・デフリーヘル(Dorien De Vlieger)氏は、「これらの抗体を患者に直接投与する抗ウイルス治療法を生み出すことがわれわれの目標だ」と話す。ヒトでの初の臨床試験は「今年末までに」始まる見通しだという。
 サエレン氏とベルギー人の共同研究者ニコ・カルワルト(Nico Callewaert)氏は、米テキサス大学オースティン校(University of Texas at Austin)のジェイソン・マクレラン(Jason McLellan)教授率いるチームと協力して研究を行っている。VIBはこの分野で世界的に知られ、ヘント大学傘下の学術機関として、製薬業界から独立して運営されている。
 ウイルスとの闘いの救世主になるかもしれないウインターは現在、ベルギー国内のとある場所で飼育されている。デフリーヘル氏は、「動物愛護団体を懸念」し、「彼女のストレス水準を低く抑えるよう、われわれは最善を尽くすこともしなければならない」と語った。

 未知の問題だから、何がどうなるかわからないけどとにかくアイデアが面白いと進めていく開発がうじゃうじゃしていて、大半がポシャッてほんの一握りだけが革新委成功する。けれども、その失敗が後から生きてくることもある。失敗は成功の母と言う。だが、その前に着手しないと、成功も失敗もない。結果を先読みして何もしなければ、失敗も成功もない。

 「下手な鉄砲も数撃ちゃ当たる」は治療のイノベーションではその通りと納得できても、自身の感染に置き換えたらそうもいかないのが人情だろう。

 NHKは、2020年5月12日 13時10分更新、「コロナ感染不安『歯科受診控えると肺炎などリスク高」歯科医師 』において、感染リスクを恐れて別の歯科の検診を避ける人が少なくないと次のように注意を促している。

新型コロナウイルスに感染する不安から、高齢者が歯科医の受診を控えるケースが相次いでいるとして、静岡県の歯科医師会は、口のケアがおろそかになると、誤えん性肺炎などのリスクが高まると注意を呼びかけています。
静岡市清水区の歯科医師、渡邉宏春さんは高齢者施設に専用の器具を持ち込んで、歯の衛生管理や入れ歯の調整などを行う訪問診療に取り組んでいます。
ふだんは20の施設を担当していますが、高齢者が新型コロナウイルスに感染すると重症化しやすいと、注意が呼びかけられるようになって以来、半数の施設から訪問の中止を求められたということです。
高齢者の中には、定期的に診察しないと食べ物をかめなくなり、栄養不足や、そのまま飲み込むことによる窒息のおそれがある人もいるということです。
渡邉さんは「面会をすべて断っていると言われることが多い。しかし、口くうの健康は命に関わる問題でもあり、何かあれば連絡をするよう伝えている」と話していました。
静岡県歯科医師会も口のケアがおろそかになると、誤えん性肺炎などのリスクが高まるとして、受診が必要かどうかを歯科医に相談するよう呼びかけています。
県歯科医師会の柳川忠廣会長は「かかりつけの歯科医がいちばんよく理解しているので、治療の継続や延期については自分で判断せず相談してほしい」と呼びかけています。

 加齢と共に口内の健康の維持は難しい。感染しなくても、それによる健康リスクは日々高くなり、口内環境の悪化は心身いずれにも悪影響を及ぼすことが知られている。感染の可能性は、おそらく口内健康の悪化よりも大きくはないだろう。けれども、口内の問題と違い、新型コロナウイルスに感染すれば、1カ月以内になくなる危険性もある。しかも、PCR検査も限定的で、不顕性感染が市中にどれだけいるかわからない。そう考えて、歯科検診を避けるのだろう。

 しかし、口内環境が悪化すれば、心身の健康が損なわれやすくなる。失われた健康を元に戻すのは難しいし、感染した際の重症化リスクも高くなる。自分の健康の選択肢はあれかこれかではなく、あれこれ組み合わせて自分で増やしていくものだ。

 夕食には、豆腐とニラに合いびき肉のオイスター炒め、卵とノリのキムチスープ、チキンとキャベツのタイフウサラダ、食後にはアイスコーヒー。屋内ウォーキング10104歩。都内の新規陽性者数は28人。

参照文献
「ラマ、コロナ治療の鍵握る ベルギー」、『AFPは』、2020年5月11日 3:54更新
https://www.afpbb.com/articles/-/3282410?fbclid=IwAR1stIyLwqNwXBa3YKahblO3RLBvfO7wnDhBoh_sabV6lxfNgkkTRx3Xrk4
「コロナ感染不安『歯科受診控えると肺炎などリスク高』歯科医師」、『NHK』 、2020年5月12日 13時10分更新
https://www3.nhk.or.jp/news/html/20200512/k10012426321000.html


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