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今まで誰もやっていないことをやるのが戦略。

時代が変わっているのだから、
銭湯も変わっていかなくてはいけない

対談1 with 村尾隆介 WEEK2
今まで誰もやっていないことをやるのが戦略。


ベストセラー作家であり、全国の中小企業から絶大な支持を集める売れっ子ビジネスコンサルタントでもある村尾隆介さん。
今日の対談では、銭湯を救うためのアイデアの数々を聞いていきます。

銭湯が提供しているのは「クワイエット・タイム」

田村祐一 (以下 田村):
「銭湯券をギフトにする」という発想ですね。
たしかにレジ横で、ちょっとしたギフト用の封筒とメッセージカードとリボンを置いて、きれいにディスプレイしてみたくなりました(笑)
もしかしたら売れるかも!?

村尾隆介 (以下 村尾):
そういうチャレンジが日々あった方がいいです。 その積み重ねが大事です。そして、そこでもっと考えて欲しいのは"本質"です。

田村:
銭湯の本質...というと?

村尾:
普段、全国を飛びまわって、めちゃくちゃ忙しくしている僕が、今回いくつかの銭湯に行って良かったなと思ったことは、実は「広いお風呂で気持ちよかった」という単純なことだけではなく、「入浴以外のことが、まったく何もできない時間」でした。
仮にこれを「クワイエット・タイム(静かな時間)」と呼ぶことにしましょう。 都内で忙しくしていると、この「クワイエット・タイム」を得ることが、一部の人にとっては最高の贅沢だったりします。
そう考えると単に田村さんは僕に銭湯券をくれたわけではありません。実は、明日の活力を蓄えたり、自分のことについて考える、大切な時間をプレゼントしてくれたといえます。

田村:
なるほど。そう考えると、「町の銭湯がお客さまに何を提供しているのか?」という質問への解答や、その深みが変わってきますね。

村尾:
そこに先ほどの「銭湯の新しい役割」なんかのヒントがあると思うんです。


もっと「色」を使ってもいいと思う

田村:
村尾隆介さんといえば、日本では「小さな会社専門のブランド戦略の専門家」として知られています。
ブランド戦略という観点から、何か銭湯ができることってないんですか?

村尾:
東京の銭湯はタクシー業界と同じように、価格設定を自由にできるわけではないと聞いています。でも、光熱費や建物・設備の維持費を考えたら、業界全体の利益率の平均値は結構きびしいと思います。 
売上をあげるためには、「新規顧客を増やす」「リピート率を高める」「客単価をあげる」という3つしか方法はありません。 
僕は、この3つを少しでも銭湯が上向きにするために「デザインの力」を借りるのも悪くないと思っています。 
具体的にいえば、もっと町の銭湯が「色」にこだわっていく。 
100メートル先からでも、その銭湯のオリジナルのタオルやエコバッグを持って歩いている人がいても、すぐに見た人は分かるくらい、きれいで印象的な色を基調色に、グッズや内装の展開をしていく...。 
たとえば、ティファニーのような色。100メートル先からでも分かりますし、あの色の紙袋やグッズはみんな取っておいたり、買ったりしたくなる。カワサキのバイクの色も目立ちますよね。 
派手な色に壁を塗り直して町の景観を壊すようなことがあってはいけませんが、きれいで印象的な色を巧みに使って客単価をあげたり、町での存在感を高めたりというのは、デザイン戦略やブランド戦略の入門としては"あり"だと思います。

田村:
どうしても銭湯はタイルの色などから青や水色といった寒色になりがちですし、それも特に基調色としてこだわってやっているわけではありません。 
...そこは考えていないというか、単に"常識"というだけで進めてしまっている部分でもあります。桶はご存じのように、ほぼ黄色ですしね(笑)。 
でも、色やデザインの力をもっと用いる。たしかに、そうすれば注目度は変わってきますね。

「名前を変えて、体を表わす」という戦略

村尾:
たとえば銭湯業界の常識といえば、名前も似たり寄ったりのものが多いですよね?

田村:
そうなんです。ゲン担ぎという側面も手伝って、どこも同じような名前なのが銭湯業界なんです。

村尾:
でも、ネーミングも大事なブランド戦略です。「名は体を表わす」という言葉があるように、優れたネーミングは、それ自体が宣伝です。

ですので今後、町の銭湯としてコンセプトを明確にしていく予定があるのならば、ここは思い切って「名前を変える」もアイデアのひとつです。


田村:
それは大胆な発想です。代々やってきたところが多いですから躊躇するでしょうね(笑)。

村尾:
たとえば、従来型の銭湯から、毎月イベントやキャンペーンをやって地域を徹底的に楽しませるコンセプトの銭湯に業態をシフトさせるとします。 
それをこれまでの名前のままでやっても、その伝達力は限定的です。銭湯は多くのお店とは違って、外から中が見えるわけではないので、なおさらそのシフトを感じることができない。 
でも、業態のシフトと共に、名前も従来のものから「『変わり湯』という名前に変わりました」と打ち出せたら、より発信力は増すでしょうし、興味を持って耳を傾けてくれる人もいるでしょう。地元のメディアも取り上げてくれるかもしれませんし、何よりも銭湯側の"覚悟"が感じられます。

田村:
そのくらいの気概が必要かもしれませんね、本当に。

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