はじめての恋を、ミサイルの下で

水着姿のグラビアアイドルがタコと戯れている。
恋人の寝息が詰まった、2時40分。
点滅する深夜番組は、無邪気に眠気を奪い取る。
今日1日を振り返りながら、私はテレビの電源を消した。

この人は、キミとしか呼ばない。
だから私は安心できた。
私の肩書きや、状態や、そんな形容するもの全てをとっぱらって、私という個体を見つめてくれる眼に、私は頷けた。
それが、何も見ていないことを、知らないままに。

おはよう、お疲れさま、おやすみ。
それだけで充分だった。
カレーが大好物で、生野菜が嫌い。
それだけで。

瞼に焼き付く朝日で、目が覚める。
変わらない呼吸と変わらない横顔は、変わらずにそこにあった。
お腹がすいて、私はゆっくりと台所へ向かう。

剥がれ落ちた愛情を1つひとつ手に取り、丁寧に貼り直した。
それでもまた、気づくと足元にそれは落ちてくる。
また、貼り直して、でも落ちて。
その繰り返しで、気づけば3年が過ぎようとしている。
想い出の中でしか恋をできなくなった私たちは、今日という日も笑えなかった。

セブンイレブンで買った納豆しか、冷蔵庫にはなかった。
納豆は朝食に最適らしい。
腸内環境を改善してくれると、誰かが言っていた。
タッパーに冷凍していた玄米をチンしながら、小粒納豆をかき混ぜる。
7時16分だった。

恋をしたい。
生きとし生ける、ものとして。
とびきり甘酸っぱい、青春をしたい。
目も当てられないほど、恥ずかしい関係で。
生まれてはじめてを、味わいたい。
セカイが明日、終わるとしても。

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