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肢体不自由の息子と手つなぎ旅

双子Bは支えがあれば、かなり歩けるようになった。普段はPCW(歩行器)を利用しているが、荷物になるし、車移動なので、今回は手つなぎで旅をすることにしてみた。

今回の旅の難所は、「地獄谷野猿公苑」「松山城」

地獄谷野猿公苑は、普通に山で、雪解け水で道はグチョグチョ。スタート5分ほどで、「どこまで行くん?」「まだ?」と不穏な空気が流れ始める。10分くらいしたところで、双子Bはイライラしだし、「まだなん!」とグイっと夫を押した。それに、おばあちゃんがビックリし、「あぶない!」と大きい声を出した。夫も「あぶないやん!」と大きめの声で、双子Bに言った。大きい声に敏感な双子B。

ポキッと双子Bの心は折れた・・・
ウギャーンと泣き、怒りだす。
脱力し、ぐちょぐちょの道に座ろうとするのを、必死で両脇をかかえあげる。

子どもの成長についてきていない夫は、普段一切鍛えていないのに、「おんぶしよか?」と声をかける。私は、「無理にきまってるやん。37kgあるんやで。」双子Bに「おんぶしてもらう?」と聞くと、双子Bは、恥ずかしいやろとばかりに、首を横にふる。

この先がどのような道なのか全くわからなかったが、入り口に「徒歩25分」と書いていた情報だけを頼りに、あと半分、私は心の中で、「絶対進める」と腹をくくる。他のメンバーには先に行ってもらい、双子Bとしばらく立ち止まる。

「しんどいな、足つめたいし、膝痛いんやな。」
「暴れて泣いてたら、皆さんビックリしはるで。」
「どうする?もうやめとく?」
と双子Bに聞く。

「あしいたい。しんどい」
と双子Bは答える。

「おさるさんが温泉入ってるの見ない?」
と双子Bに聞く。

双子Bは首を横にふる。

「おさるさんは見たい?」
と聞くと、双子Bはうなずく。

「ほんだら、頑張ってゆっくり前に進もうか。」

ということで、ボチボチ前に進むことになった。後ろからドンドン、外国の方たちが追い越していく。「ハロー」と声をかけてみたり、「外国みたいやなー」と話をしたり。看板の内容を説明したり、「あと0.3kmらしい。0.3kmってどれくらいかなー。小学校の運動会のリレーの1週くらいかなー。」「運動会楽しかったなー。」「じいちゃん、ばあちゃんも見に来てくれたなー。」などなど、次から次に話をして、気を紛れさせながら前に進む。

最後の難所の階段下では、夫が待っててくれており、おさるを見てきた双子Aとおばあちゃんも応援しにきてくれ、かなり急な階段も凛々しい顔で登ることが出来た。

地獄谷野猿公苑

苦労して上った階段の先には、めちゃくちゃ可愛いおさるさんが沢山いて。
双子Bは「かわいいなあー」とご満悦。私が、「頑張って登ってきた甲斐があったなー」と双子Bに声をかけると、双子Bは「うーん」と深く頷いていた。

帰りも大変やなーと思いながら、夫が「おんぶいける」と言い張るので、双子Bに「ちょっと、双子Bがどれだけ重たくなってるか、おんぶさせてあげてー。」と言い。おんぶをさせてみる。夫は顔を真っ赤にし、双子Bを必死に担ぐが、双子Bのお尻はすぐにずれ落ちていき、双子Bは「怖いー」とゲラゲラツボにはまる。階段だけ、おんぶで降りて、あとは徒歩。夫に、「双子Bの成長をなめてたやろ。」と言うと、夫は「なめてた。めちゃくちゃ重いわ。」とクタクタになっていた。その後は、あれこれ話題を振って、行きと同様、気を紛らす作戦で何とか車まで戻ることができた。

達成感もありつつ、大きくなった双子Bを連れての山道はかなり厳しくなったなとつくづく感じた。

この日の翌日に松本城に行ったので、階段が急でも全然余裕だった。階段の1段の段差が激しいところには少し苦戦したが、手すりを持って上るのは得意なので、不機嫌になることもなく、天守閣まで行くことができた。下る時も見守りの職員さんが階段毎におられ、とても丁寧にお声がけしてくださり、機嫌よく下ることが出来た。

松本城

双子Aが、「後輩にお土産買っていこうかなー。」と言うと、双子Bは「xxさん(デイサービス)に、おみやげかっていきたい。」と言う。そんな気持ちもちゃーんと育っている。

やっぱり旅はいい。
一緒に困難を克服したり、普段見過ごしていることを気づかせてくれたり。食事や宿代を払ってくれたじいちゃんばあちゃんに感謝。
車をずーっと運転してくれた夫に感謝。
大人が行きたいところについてきてくれた双子に感謝。

感謝感謝
旅は心に余裕をもたらしてくれる。

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