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ぼくの世界

ぼくのせかいは再生から始まる
マイクに風が当たって
ボゴボゴっとくぐもった音がする
窓の外はなんにもないのに
車の走る音や人の話す声が聞こえる
風が吹いて、芝生が揺れる
まるで海みたいに
ぼくのせかいに冬が訪れる

ぼくのせかいにあるものは
三流画家のデッサンみたいに
雑なかたちの輪郭線が
いたるところに絡まっていて
いちばん大切なものを隠している
あ、いま
「死ね」ってことばが聞こえただろう
ぼくのせかいには
それを言ったひとがいるから
ぼくのせかいには
それを言われたひとがいて
窓の外はずっと暗くて
ぼくはずっとひとりだった

ぼくのせかいから音が消えたとき
繰り返すかおしまいにするか
そのどちらかを選ばなくてはならない
コーラフロートに浮かんでる
角のとれた四角い氷は
透明だから素直に染まって
バニラアイスをおんぶする

ぼくのせかいはグラスの底の
閉め切った窓の向こう
冬の風がマイクに当たって
ゴボゴボっていった

#詩 #現代詩

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