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170席が完売!初めての場所で主催公演を開催する際に気をつけた10のこと

代表をつとめる(株)Locatellで主催した『母の日ファミリーコンサート』を大盛況のうちに終えることができました。

当初のチケット販売予定枚数を上回り、さらに増席した170席が完売。

お客様にお座りいただける椅子がなくなってしまったため、当日券を用意することが出来ませんでした。

私の故郷・福知山のお隣、京都府舞鶴市での初めての主催公演。
どんなお客様がお越しくださるか分からなかったのですが、開場前に並んでくださっているお客様とお話していると『こんな演奏会を開いてくれてありがとう』と嬉しいお声をいただき、それだけでも胸がいっぱいになりました。

これまで福知山でそういう言葉をかけていただくことはあったんですが、故郷以外の場所で企画した公演でそんな風に言っていただける日がくるなんて。とても幸せなことです。

企画のきっかけ

今回の企画は、舞鶴市出身で京都市立芸術大学に在籍する4人の演奏家の皆さんの存在を知ったことから始まりました。

左から、寺町奏音さん(ピアノ)、椋本美里さん(ソプラノ)、上野山弥新さん(ピアノ)、小野日菜子さん(コントラバス)

大学生の方々と一緒に公演を作るのは初めてだったこともあり、試行錯誤しながらの部分もありました。

しかし、終演時のお見送りでは涙を流しておられる方や涙目の方々も多くいらっしゃり、演奏者の方々からは『演奏に集中することができました』と嬉しいお声をいただき、このコンサートに関わってくださったみなさんが笑顔になれる公演になったと感じています。

また、本公演を開催するにあたり3月に公開したこちらのnote記事に書いたことは全て達成できました。

そのまちだからこそ、そのメンバーだからこそできる企画がある

終演後、出演者の皆さんには『今回のような企画をしたい!と思わせてくれた皆さんに、それぞれ魅力があるということを忘れないでほしい。』とお伝えしました。

今回の企画を全く同じ編成で別の場所でやったとしても同じような集客はできないと思いますし、誰か1人でも欠けていたら、内容も変えていたと思います。

チケットが完売したということは、それだけ多くの人が惹きつけられる良い企画であったと言えると思いますが、では良い企画はどうしたら生まれるかというと、魅力ある演奏家から生まれると思っています。

Music discovery Concert Series

今回のコンサートは音楽を通じて自分自身と音楽の魅力を感じてほしいという想いを込めて始めたMusic discovery Seriesとして開催しました。

『Music discovery』
演奏家が音楽と向き合うことを通して、自分自身と音楽の魅力を改めて認識し、その魅力をお客様に届けることを目的として現在インスタグラムで発信をしている事業。この夏、当事業の一環としてフランス留学サポートサービスを開始予定。

アンケートには「一人ひとりのお人柄が伝わりました」というお声や、「舞鶴にこんなに素敵な方々がおられることが誇らしいです」というお声がありました。

私が企画するコンサートは、基本的にトークを必須にしていただいていますが、やっぱり人柄が伝わるからなんですよね。

また、文化芸術により多くの人に触れてほしい、裾の根を広げていきたいと思っていることから、トークは絶対必要だと考えています。

ちなみに、トークの内容は全てあらかじめチェックさせていただいて、アドバイスをした上で「自分がよく使う言葉やより自然な言葉に変えてください」と伝えていました。

出演者の1人1人と会話して、普段の笑顔やお話の仕方を知ると、なるべくその素敵な雰囲気がトークでも伝わってほしいと思ったためです。

ソロの曲を演奏する前にトークをしていただいている様子

例えば、今回のコンサートでコントラバスの楽器について説明をしていただいた時に、客席から「へぇ~」と声が上がっていました。

音楽に親しみがある方なら当たり前に知っていることでも、一般の方はご存知ない方も多いです。

コンサートという場が、ただ音楽を聴くという一方通行な場ではなく、トークを通じて演奏者の人柄を感じながら曲に対する想いや解説を聞き、新しい知識にも触れることが出来る。そんな風になるべく双方向のコミュニケーションが出来る場を目指しています。

集客につながる大事なポイント

特に今回のように出演者が音大生=これまで舞鶴で演奏会を開催したことがなく、既存のファンがいない場合や、弊社としても舞鶴では初めての主催公演であり、DMを送れるようなお客さまがいない場合、下記の3つのことが必要になってきます。

①開催地の方々に協力していただき、開催情報を広めていただく(結局口コミが強い)
②地元で影響力のあるメディアに開催情報を掲載していただく
③魅力ある企画内容、選曲、それに合ったデザインをつくる


この記事では、以下に今回行ったことをまとめていきたいと思います。

1.チケット販売方法

今回は紙チケットはJEUGIA楽器店でお取り扱いいただきました。紙チケットは福知山で行う公演でも委託料として10%をお支払いすることにしているんですが、そうすることで委託先にも微々たるものではあるかもしれませんが、メリットがあるようにしています。

ちなみに、今回は紙チケットの方が圧倒的に販売枚数が多かったです。理由として「オンラインで購入するのが難しかった」というお声をいただきました。

まだまだオンラインチケットで買うことに抵抗がある方はいらっしゃいますが、福知山でお子さん向けのコンサートをする際などは、オンラインチケットのみで販売していても特に問題は起こっていません。

オンラインでの購入が難しく、紙チケットを販売している場所まで外出することが困難な場合は、お電話での取り扱いもして良いのかもしれません。

ただ、事前にお金をいただいていない場合、当日を迎えてもご来場されないことがあります。以前、当日キャンセルが多くあったことがあり、決済手数料をとられたとしても事前決済をする方法での販売が良いと考えています。

ちなみにオンラインチケットはteketを使用して販売しています。

2.チラシ・ポスター

今回チラシは3200枚印刷し、舞鶴で開催される吹奏楽の公演やクラシックのコンサート、福知山市で開催されている私が代表を務める(一社)福知山市文化振興会の主催公演、そして出演者の皆さんが出演された京都市でのコンサートなど様々な場所で配布しました。

ポスターは100枚印刷し、今回ご協賛いただいた会社の方や舞鶴で音楽関係の仕事をされている方にまとめてお渡しして掲示していただきました。私は舞鶴の土地勘がないことや、ポスターを掲示するのもなかなか時間がかかることもあり、まとめてお渡しできたのはありがたかったです。

3.ラジオ・新聞での告知

開催日の11日前に、FMまいづるにゲストとして出演させていただきました。


この時以外にも、ラジオ内でも開催情報を何度かお伝えいただいていたこともあってか、アンケートで来場のきっかけとしてFMまいづるを聞いてご来場くださった方がおられました。

また、開催日5日前に舞鶴市民新聞に掲載されたのですが、それをきっかけにものすごくチケットが売れました。

記者の方がものすごく丁寧に記事を書いてくださり、今回のコンサート開催の経緯や、出演者のメッセージなども掲載されました。

また、掲載された場所も2面のトップだったこともあり、新聞をめくっていただいてすぐに目に飛び込んでくる場所だったことも、多くの方々の認知につながったと思います。

4.プログラムの決め方

プログラムについては、最初は演奏者の皆さんにどんな曲を演奏したいのかを考えてもらいました。

また、選曲の際のコンセプトとして下記のことをお伝えしました。

・母の日『ファミリー』コンサートとしているので、家族で来られるよう、親しみやすい曲をプログラムに入れて欲しい。
・現在大学で向き合っている曲を演奏して欲しい。

ちなみに出演者の1人に上野山弥新(みにい)さんというお名前の方がいらっしゃったので、ミニーにちなんで「ミッキーマウスマーチ」を入れました。

また、母の日といえばカーネーション。ということで、お花にちなんだ曲をお願いしました。

そこから、私の下記の意向を伝えました。

・クラシック固有の曲は2曲続けて聴いてほしい
・コンサート本編最後の「ふるさと」に向けてクライマックスを作れるように、ふるさとの前は日本の歌や日本人の曲が良い

そして、私が考えていることが分かりやすいように下記のようにプログラムを色分けしました。

4人の演奏者のうち、2人はピアニストなので、舞台上の転換もなるべくスムーズになるようにプログラムを並べています。

ちなみに、アンコールの「希望のうた」はアンケートでも大好評でした。この曲は、演奏者の皆さんが一生懸命考えてくれた曲だったので、お客様からの声を聞いて嬉しい気持ちになりました。

5.編曲のこと

クラシックの公演に行く方なら、今回の編成がちょっと変わっていると思われると思います。

この編成であれば楽譜は何とかなったりするのですが・・

するとどういう問題が出てくるかというと『楽譜がない』んですよね。
今回は合計3曲を編曲していただきました。

編曲は誰に頼んでもいいわけではありません。
残念ながら、ピアノの楽譜を上手く編曲出来ない(むちゃくちゃ弾きにくい楽譜を書く)アレンジャーは実は沢山います。

今回は、髙本りなさんに依頼をしました。
香取慎吾さんのバックバンドでキーボードを演奏しており、クラシック、ジャズを学び、一時期シンガーソングライターもやっており、現在ピアノ連弾+ドラムの異色ユニットEYRIEのメンバーでもある彼女だからこそ、ぴったりの選曲を仕上げてくれたと思います。

ちなみに、編曲が仕上がってきた時も、まず確認して気になるところがあればその部分を修正してもらってから演奏者の方々に楽譜をお渡しするようにします。

6.パンフレット

クラシックコンサートのパンフレットには、プログラムと一緒に曲目解説がのっていることがあるのですが、今回は全曲トークをしていただくこともあり、曲目解説は掲載しませんでした。

チラシにも出演者1人1人の出身校や、楽器を始めたきっかけとコメントを掲載していたのですが、パンフレットにも同じように掲載をしました。

コンサートチラシダウンロード(PDF)

7.障がい者手帳をお持ちの方のためのチケット

今回、新たに「障がい者手帳をお持ちの方」という券種を作ったところ、4枚の販売がありました。

このチケットは介助者1名は無料になっており、実質的に500円で2名の方が鑑賞できます。

実際に会場で私が対応したのは、目の見えない方とダウン症のような症状をお持ちの方でした。

コンサートに行くというハードルを少しでも下げていきたいですし、1曲ずつトークをしているので、目が見えなくてパンフレットが読めなくても楽しんでいただくことが出来たかと思います。

高齢化社会が進みクラシック音楽のファン層もどんどん高齢化しているといわれているこれからの時代、様々な年代・性別・人が集える場をつくることが、必須となってくるはずです。

企画内容によっては障がい者手帳をお持ちの方への割引ができないときもあるのですが、なるべく多くの方々が参加しやすいように考えていきたいと思います。

8.未就学児を入場可能にする理由

ちなみに、未就学児も入場可能としているのですが、私が企画するコンサートは、なるべく未就学児のような小さなお子さんも入場いただきたいと思っています。

もちろん休憩があるとは言え1時間半のプログラムを静かに聴くのは難しいと思いますが、コンサートという場に行く体験を年齢を理由に断りたくないのです。

クラシックのコンサートは未就学児が入場できない場合も多いのですが、コンサートに行くという体験を繰り返していくと、どのように過ごせばいいかを自然と学んでいくはずです。

また「ちょっと今は音楽を聴きたくないな」と思う時って、大人に限らずお子さんにもあるはずなので、そういう時は少し会場の外に出てもらってもいいと思うのです。

そういうお子さんの気持ちの変化に寄り添えるような主催者でありたいです。

9.演奏者ファーストに動けるスタッフたち

舞台袖に準備しておいたもの。右上のポーチにはペットボトルにストローを刺せるようにするアイテムが入っています(楽屋は別室にあり)

今回の公演はステージマネージャー、照明、受付にプロを配置し、アーティストを支える理想の形を作ることができました。

そして、今後数年かけて制作・裏方スタッフのプロフェッショナルなチームをつくりたいと強く思いました。

私自身色んな現場で仕事をして、色々な裏方の方々とお会いしてきましたが、演奏者ファーストで動いてくれない方も沢山いて、その度にそういう人と一緒に気持ちよく公演をつくることは難しいと感じていました。

例えば、演奏者が何か要望を伝えた時に「それはできない」とだけ、ぶっきらぼうに仰る人がいます。でも、「それは難しいけど、例えばこんなことやこんなことはできる」とできる範囲での提案をしてくださる方もいます。

私は後者でありたいし、そういう人とお仕事をしたいと思うのです。

例えばケータリングにしても、なるべくその土地の美味しいものを食べていただきたい。その思いから、今回は舞鶴でお弁当をつくっておられるNiniさんにお願いしました。

演奏者によって要望は違いますが、なるべくスタッフがチームとなって寄り添いたいと思っています。

10.同じ地域の文化活動との連携

私は公演を行う際にあらゆるイベントの挟み込みを受け入れています。

今回であれば、9月に同じ会場で開催されるパーカッションの田畑さんのリサイタルチラシや、チケットの販売をお世話になったJEUGIAさんのチラシに関してはこちらからお声がけさせていただきました。

当日の挟み込みチラシたち

地域の様々な文化活動に興味を持っていただくことはとても大事なことですし、ちょっとしたことではありますが、地域の文化関係者の方々と連携をとっていくことはとても大切だと考えています。良いものはどんどん広めていきたいですしね。

これは私自身がコロナ禍で色々と活動していたものの、チラシを配布できる場所が本当になくて困っていたことがきっかけとなっています。

おまけ

ちなみに、今回は母の日のコンサートということで、ドレスの色を赤かピンクに揃えていただきました。

ドレスの色もあらかじめ写メを送っていただいてチェックさせていただいています。

ドレスの色が変わるとかなり印象も変わりますし、色味を揃えることで統一感も出るので、大事な要素だと思っています。

さいごに

当日券をお買い求めになって来られた方も多数いらっしゃり、お断りするたびに残念そうにされているお顔を見るのが大変心苦しかったのですが、その際に『また必ずこういう機会を設けますので是非お越しください』とお伝えしていました。

再演を望む声も多くいただいているので、さらにパワーアップした公演をまた舞鶴の地でお届けできればと思います。

最後になりましたが、出演者の皆様と本公演を支えてくださった全ての皆様に感謝申し上げます。

💐Artist
ソプラノ:椋本美里
コントラバス:小野日菜子
ピアノ:上野山弥新、寺町奏音

// STAFF //
ステージマネージャー:坂本大樹
スタッフ:居相樹果
受付:吉村茉莉亜
調律:寺町直人
映像撮影:葛和力也
照明:my sound (山田勝、岩本満)
企画・制作・チラシ、パンフレットデザイン:(株)Locatell

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