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選択が「場」を通じた社会への意思表示になる〜トイレの検討を通じて

私がプロデューサーとして進行している福知山音楽堂プロジェクトは、様々な価値観を肯定することを一つのテーマにしています。

芸術には決まった答えはなく、むしろ芸術の世界においては他者と「違う部分」こそが個性。
だからこそ、他者との違いを認め合い、共存し合うことができると考えています。

このようなテーマを持っているからこそ、トイレについて検討する際にLGBTQ+の皆さんにとって快適なトイレについても考えました。

調布市グリーンホールのトイレにあるピクトグラム

身体的特徴などによる性、服装やしぐさ口調などにより外部に表現したい性、恋愛感情や性的な関心の対象となる性、自分が認識する自分の性など、性のあり方は様々です。

今回トイレについて考える中で、両者の立場に立った際にどんなトイレがあれば利用しやすいのかを考えたり、諸外国の導入事例や、日本でのジェンダーレストイレへの反応も調べました。

男女共用お手洗 All gender toilet について
トイレはすべてが「誰でもトイレ」でいいのか? - SDGs NAVI
当たり前になっている?NYの「オールジェンダートイレ」事情

国内でもトップシェアを誇るトイレメーカーTOTOさんの記事では対談形式で現在LGBTの皆さんが感じておられる問題をお話しておられます。

すべての人が安心して使えるパブリックトイレとは? - TOTO

上記の記事な内でも紹介されていましたが、もし十分なスペースがあるのであれば、私は男女それぞれのトイレと多機能トイレ、そして男女共有で使えるトイレがあるのが良いのでは?と考えます。

ちなみに、TOTOさんは劇場に必要なトイレの数を算出するための独自の計算法も公開しておられて、音楽堂に必要なトイレの数を算出する際に利用されているそうです。

劇場(ホール)トイレの適正器具数算定について

トイレで重要となるピクトグラム

また、トイレを利用する際に重要となってくるのが、入り口の部分にあるピクトグラム。

女性トイレには赤色の女性のアイコンが、男性トイレには青色の男性のアイコンがあることが多いですが、情報や指示、案内などを単純化された絵や図形で表したものをピトグラムといいます。

丸の内ホテルのトイレ入り口にあるピクトグラム

最近はおしゃれなピクトグラムも増えていますが、おしゃれすぎて男女どちらのトイレなのかがすぐ分からないときもありますよね。

そのため、視認性の高いピクトグラムが必要になると感じています。

渋谷にある安藤忠雄さんが設計された神宮通公園トイレ

東京トイレプロジェクトはサイトを見ているだけでも楽しくて、トイレを見るのを目的にその場所へ行ってみたくなりました。

東京トイレプロジェクト
トイレは日本が世界に誇る「おもてなし」文化の象徴であるとして、様々なクリエイターが渋谷区にある17カ所の公共トイレを手がけるプロジェクト。
仕様は各トイレで異なるが、車椅子での利用はどこでも可能、オストメイト用設備も用意。全てのトイレがウォシュレット仕様となっている。

https://tokyotoilet.jp/

トイレについて検討していて思い出したのは、昨年研修させていただいた名古屋にある宗次ホールのことです。

ご覧いただくと分かるように、とても広くて綺麗なんです。

名古屋にある宗次ホールのトイレ

名古屋・宗次ホールでの1週間の研修で学んだこと

また、少し話は逸れますが、トイレのみを舞台・テーマにしたアートプロジェクトが2015年夏に大分で開催されていました。

トイレが「行きたい場所」になる取り組み、面白いですよね。


今回シアターワークショップ様が色々なトイレの事例を挙げてくださっていたので、それを元に意見を交わしたり、普段は何気なく利用していたトイレをいつもとは別の視点を持って利用する日々が続きました。

その中で、自分が利用する時にトイレ清潔感や安心出来るような雰囲気を求めていることに気付きました。

渋谷東急REIホテルのトイレ。周囲と馴染む入り口

以前、渋谷のヒカリエのトイレを利用した時にすごく広々としていて清潔感があり「また利用したくなる場所」として今も覚えているくらい印象的だったのですが、使うと気分が良くなるトイレ、また使ってみたくなるトイレにしたいですね。

さいごに

色々と議論を交わし、今回は敷地面積の関係上、男女別のトイレと多機能トイレを設置するということになりました。

多機能トイレ
一般のトイレを使えない方たちや、車いすユーザーの方、内部障害(特にストーマ使用者(人工肛門・人口膀胱))の方々が必要としているトイレのこと

そして、トイレ1つとっても、何らかの選択をした際に、その選択の1つ1つが福知山音楽堂という「場」を通して、そして、プロデューサーとして私が社会に対してどのような問題意識を持っているのか?という社会への意思表示に繋がるのだと感じました。

多様性が求められる社会に適応していく場でありたいという想いを大切にしながら、面積や予算など限られた条件の中で様々なバランスを考慮しながら、よりよい拠点が出来るよう、引き続き試行錯誤していきます。

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