北欧の「春がきた!」は特別

"Nalle Brunos vår" af Gunilla Ingves, Bokförlaget Natur & Kultur, Stockholm 2012. 「ブルーノの はる」グニラ・イングヴェス 作・絵 スウェーデン

こういうかわいらしいイラストに、安心して読めるほっこりしたストーリーといえば、やはりスウェーデンの作家さんが上手いなぁといつも絵本を手に取る度に思う。デンマークの作家さんだと、なんらかのツイストが効いていることが多かったり、読み手側にあっと言わせるような展開だったり、笑いをさそうイラストだったり。そういうところが私にとって、デンマークは関西のノリに似ているなぁと思うことが多いのですが、このスウェーデンの作品には安定のおだやかさがあります。

タイトルはスウェーデン語で正確には「こぐまのブルーのの春」。デンマーク語のタイトルになると「『春がきた!』とさけぶブルーノ」。タイトルひとつとっても、穏やかでシンプルなタイトルのスウェーデン語に対し、そのまま訳さず、春のよろこびをダイレクトに伝えるタイトルのデンマーク語訳、と違いがあるのも面白い。

内容は、ブルーノと犬のマヤが、ある晴れた日に家から外へ出て、たくさんの小さな春を見つけるというもの。スノードロップが森の入り口に咲いているのを見つけたり(これは北欧の春の象徴ともいえます)、テントウムシを新芽の間に見つけたり。散歩の途中には、川辺に座ってシナモンロールとお茶で休憩。その後も、春になって戻ってきた鳥たち、虫たちを見つけながら散歩は続きます。家へ帰ってからも、小さな植木鉢をたくさん並べ、色んな種を植えていくブルーノ。全ての植木鉢を窓辺に並べるころには、夕日が二匹を照らします。窓辺に座って、春の訪れを楽しみにするブルーノとマヤ。春が来るってやっぱり嬉しいなぁと、改めて感じさせてくれる作品です。

本の見返しには、ところせましと鳥の名前とイラスト、鳥たちの春の様子、裏側にも種の植え方、春の花の様子などが描かれていてとてもかわいらしい。日本人好みの、ほっこりするイラストに思わず心が和みます。

長く暗い冬を半年近く過ごす北欧の人々にとって、春の訪れは本当に特別。特にイースター前後に夏時間へ移行すると、日照時間はますます長くなり、太陽の光から春の訪れを感じることが多くなります。まだ気温は低くても、道端に咲く小さな花々や鳥の声から春が来たなぁと感じると、それだけで心がおどります。


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