ぼくときみはおなじ(子どもの人権)

"Lika som bär" (デンマーク語タイトル"Jeg er ligesom dig") Pernilla Stalfelt, Forum  パニラ・スタールフェルト作・絵 絵本 スウェーデン

手元にあるデンマーク語版のタイトルは「ぼくときみはおなじ」で、本の中に登場する様々な子どもたちの表情が表紙になっている。一方、原語のスウェーデン語タイトルは「お互いがとっても似ている(ベリーのように、という表現を使ってるためにベリーの絵がある)」(という意味だと思う、違ったら教えてください)となっている。内容は、人間は肌の色、目の色、髪の色や質、背丈から話す言語など、皆似ているようで少しずつ違っている、というところから始まり、見た目の違いをどう指摘するかによっては、相手を悲しい気持ちにしてしまうこと、またどんな言葉かけが相手をどんな気持ちにするのか、更に、いじめる側の気持ちや背景にも踏み込んだ作品になっている。

この作家さんの作品は日本では川上麻衣子さんが2作品翻訳している。今回紹介する本は日本語にはなっていないが、なっていないものの多くが子どもの人権を扱っているもので、個人的にはぜひ翻訳されてほしいと思っている。今回のこの本も、子ども向けに、子どもの権利条約の一部を簡略化した言葉が背表紙に書かれている。

始めは人間がもし皆同じ服を着て同じことを言って同じものばかり欲しがっていたらどうなっているか、というところから始まり、一人ひとりが違っていること、どんなところが違っているのかなどを、彼女のかわいらしくて細かいイラストで紹介している。そして、皆こんなに違うのだけど、その違いをからかうわれるとどうなるか、という方向にシフトしていき、実は、見た目はそれぞれ違っても、心の感じ方は同じで、怒ったり、悲しい気持ちになるんだよね、と表現している。多数で少数の人をからかったり、いじめるのは実はとっても簡単なことなのかもしれないこと、いじめられた人は、身体がその場へ行くことを拒絶してしまうこと、など、どんどん人の心にフォーカスしていく。そして最後に、ではいじめる人のことはどうしましょうか、というところで問題提起をしていく。他の作品と共通して言えるのだけれど、彼女の作品は話がどんどん展開していくので、面白い!と思ったり、また、え?なんだっけ?と思ったりしながらページを前後行き来しつつ読み進める感じかなと思う。

この作者の作品は、子どもの権利条約を基礎にしているので本当に深いところをついてくる。「権利」というものについて、子どもにどうすればわかりやすく理解してもらえるか、そして「権利」は自分だけのものではなく、他のどんな子どもにも(大人にも)同じようにあるんだよということを伝えようとしているのを強く感じる。以前紹介したしつけの本とも共通するが、こういった社会のルールに関することを、子どもの目線に合わせて、真剣勝負で伝えようとする姿勢が私はとても好きだ。「権利」という難しい概念を、子どもが日常的に経験するkonflikt, いわゆる友だちどうしのいざこざを上手く例にとって、できる限り子どもの目線で伝えている。実際、この本は就学前の子どもでも十分理解できる内容だと思う。お互いの違いを認め、リスペクトしながら共存していこうというメッセージを、小さい子どもにも、同じ一人の人間として理解してほしいと視点は、平等や人権を重んじる北欧(特にスウェーデン)らしいなと思う。


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