大きな梨のぼうけん

"Den utrolige historie om den kæmpestore pære" af Jakob Martin Strid, Gyldendal 2012 「大きな梨のぼうけん」デンマーク お話童話

新聞連載の漫画家として、政治の風刺漫画等も描いてきたヤコブ・マーティン・ストリッドの児童書ヒット作のひとつ。この他にも彼はデンマークの子どもや親たちが愛して止まない多くの絵本や児童書を生み出している。この洋ナシの作品は絵本と呼ぶにはページ数も多い(105ページ)が、全ページに渡っておもちゃ箱をひっくり返したような、細かいイラストがほどこされ、読む度に新しい発見がある。この作品は2012年にデンマーク皇太子ご夫妻による文化大賞を受賞。2017年秋には映画化もされている。(このページの最後に映画の予告編の動画あり)

ねこのミチョとゾウのセバスチャンは、いつもさんさんと太陽の光が降り注ぐ町、ソールビューに暮らしている。ところがある日、町長さんが突然姿を消してしまった。するとミチョとセバスチャンのところへ手紙の入ったボトルが届く。ボトルを開けてみると、それは行方不明になっていた町長さんからのものだった!手紙には、町長さんがこれまで誰も行ったことのない不思議の島にたどりついたとあり、手紙の中には小さな種が入っていた。2人がその種を植えるとあら不思議、巨大な梨がにょきにょきと生えてきた!大きな梨に乗っかって、ミチョとセバスチャン、そして友人のグリコース教授の3人は、不思議の島を探す旅に出る。途中、海賊や恐ろしいドラゴン、そして大きな暗闇の中を3人は旅していく。やっとの思いで見つけた不思議の島で、町長さんと再会した3人。さてどうやってソールビューへと帰ろうかと島を探索していると、3人は操縦席のような場所にたどりつく。そしてそれはなんと、島の操縦席だったのだ!そうして3人と町長さんは、ソールビューの町へと島を運転して(!)帰って行くのだった。

なんとかバタバタとあらすじを書ききったものの、読んでいただいてわかるようにストーリーは「え?え?」の連続である。途中、詳細をすっとばしたが、海賊、ドラゴン、大きな暗闇もそれぞれに楽しく独特なエピソードがあり、独創的で予測がつかない展開の連続。10章に分かれたこのお話だが、なかなか「今日はここまで」と本を置くのが難しい。実際にレビューをしている人の中にも、ページ数が多い本なのに、娘と一気に読み切ってしまったと書いている人もいて、ドキドキワクワク、でも怖すぎない安心感のある冒険物語りとなっている。

私はこの作品の映画版も子どもたちと見たのだけれど、原作にはない小さなエピソードが映画にはいくつもあり、原作とは少し違った出来ばえになっているが、それぞれに楽しめる作品になっていると思う。原作のイラストがとても素敵なので、アニメーション化されると雰囲気は変わってしまうのだけれど、スケールの大きな冒険物語りに変身していて、それもありかなと思う。原作と見比べて子どもたちとあれこれ話をするのも楽しい。(そして、海賊がなぜかノルウェー語風のデンマーク語を話すのも面白かった)

最後に、映画の予告編リンクを貼っておきます。原作の細かなイラストの良さをここで伝えられないのがとても残念ですが、「ヒュッゲの国デンマークの子どもたちが大好きな冒険物語」として(?)日本でも多くの子どもたちに楽しんでもらえる作品ではないかと思います。(吹き替え版の台詞を書きたい!)



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