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「人を動かすナラティブ」という新刊書。コーチやカウンセラーの「世界観が変わる一冊」が出ました。

コーチ、カウンセラーの方の「世界観が変わる一冊」が出ました。今回は「人を動かすナラティブ」(大治朋子著 毎日新聞出版 2000円税別)についての私の書評です。

「ナラティブ」という日本人には意味が分かりにくいカタカナ英語で、日本では「心理療法」という「周縁」で使われていたにすぎない用語が、世界では、現代と未来、AI時代のとてつもない「中心のキーワード」になっていることがわかりました。

ナラティブは、筆者によれば、「物語」「語り」「ストーリー」という、それぞれの日本語が持つ意味やニュアンスを広く網羅する表現とのことです。

そして、この本の主題は、本の帯には、

「あなたの『物語(ナラティブ)』が狙われている」-不安や怒りをあおり、社会を分断する「情報兵器のメカニズム」

というものであり、これはこれで衝撃的な内容が、次から次へと出てきて、一読以上の価値があります。

しかし、私がコーチング、カウンセリング、心理学を学んでいる立場で、この本に衝撃を受けたのは、別のところにあります。

この本を読むまで、「あなたは、1日のうち、だれと一番話をしていますか?」という、コーチングや心理学系のセミナーでよく聞かれる質問に対して、

私は、「自分です。私たちは、1日中、自己対話をしています」と答えてきました。

しかし、この本の「はじめに」では、

私たちは頭の中で、ナラティブを語り続けている。一日の始まりに学校や職場に向かう道すがら、あるいは家路につく電車や車の中で、今日はどんな一日にしよう、明日はどんな一日になるだろうと思い浮かべながら、いつの間にかストーリーを創っている。

 ハッピーエンドの物語になる時もあれば、自己嫌悪の物語に終始する時もある。そうやってほとんどいつも、無意識的に頭の中でナラティブを創り続けている」

「ナラティブは人の心をつかみ、人を動かす」

「良くも悪しくもナラティブは人間の感情をかき立て、個人を、そして社会を動かす。人間を孤独にも憎しみにも、連帯にも慈しみにも駆り立てる」

人はナラティブという形式で世界を、そして自分や他者、世界を定義して生きている

※太字は澤田


というような記述があります。以上のような記述を読んで、私には、

「そうか、自分は自己対話をしているというより、自分のナラティブを創っている、これからも未来に向かって創り続け、過去においても創り続けてきた、ということなんだ」

「私たちは、頭の中で、自己対話という用語では表現しきれない、幅広く、深い、多義的な活動(ナラティブ)をしているんだ」

という気づきが起き、衝撃的なアハ体験となりました。

そして、この本がなぜ、コーチ、カウンセラーの方にとって、必読の書のように思えたかという理由ですが、

コーチングやカウンセリングは、要するに、クライアントがナラティブを創造する手助けをしているんだ、

現在や過去の辛いナラティブ、未来に向かって肯定的なナラティブ(これからあるかもしれない、あってほしい、どうしても実現したいという、アナザストーリー(もう一つの物語)としてのナラティヴ)などを、

クライアントのパートナーとして、クライアントから引き出し、クライアントが創造するのを手助けするのが、コーチやカウンセラーの役割なんだ、

そして、クライアントにとって、未来に向かって、肯定的なナラティブが、明確に創造できると、そのことがクライアントを勇気づけ、そのナラティブの内容が、少なくとも部分的、または、大なり小なり違った形でも、実現しやすくなり、それが、クライアントを、今よりも、未来に向かって、より良い状態に導いていくんだ、

というようなことを思った次第です。

ナラティブをこのようなものとしてとらえて、コーチングやカウンセリングをすると、また、クライアントに協力し、ナラティブの創作の協働的なパートナーとなって関わっていくんだと考えると、自分のコーチングやカウンセリングに対する意味付けも、今まで以上に、幅広さや奥深さ、真剣度の高まりなどが出てくるように思えます。

さらに、コーチングやカウンセリングのセッションという特別な時間や枠組みを超えて、

日常生活における人間関係やコミュニケーションにおいても、一人一人が自分のナラティブを創り続けており、周りの人との対話次第で、本人のナラティブが変わっていくことが、日常茶飯事であると考えると、自分が他者にどうかかわるかが、自分にとっても、相手にとっても重要なんだ、未来が変わるんだということを、改めて、認識できました。

なお、アマゾンの書評を見ても、「今年一番」「ダントツ」「広くみんなに勧めたい」というような高い評価が並んでいました。

「世界観が変わる1冊では?」という自分の直感が当たったように思います。

ぜひ一読を勧めます。


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