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インド映画「パッドマン」のはなし

2019年は映画をいっぱい観ようの気持ちでいるので、映画感想日記を新設しました。

で、本日はインドの実話を元にした映画、「パッドマン 5億人の女性を救った男」を観てきました。
バットマンではなくパッドマンです。
このパッドとは、生理用ナプキンのことです。つまり生理用ナプキンマンです。
女性の生理を穢れとしてタブー視していたために、生理用ナプキンが外国産の高価な輸入品しかなく普及してなかったインドに、安価で衛生的な生理用ナプキンを作れるマシンを開発して普及させた男性実業家の物語。
ちなみにこれ、時代設定は2001年です。ほんの15年かそこら前まで、生理用ナプキンがほぼ使われてなかったのか……インド……!

7日に公開して、まだまだやってるだろうと思ったら20日までだったので慌てて観に行ったよ。
結論から言うと観て損はなかったので、興味ある人はぜひあと3日で観に行ってください。そのために当日に感想日記を書くよ!
ネタバレ全開なので、バレは一切観たくない人はこの先を読まないでね!
重大なネタバレは避けたいけど、どんな話かざっくり知りたい方は映画コムの特集ページが、映画公開前に出されたやつなので核心は適度にボカされてておすすめ。
映画.comパッドマン特集ページ

平日夜で、もう公開終了数日前なのに結構入ってたな。8割は埋まってた。都心で夜間やってるのここだけだったからかもしれない。
で、ここからは私のネタバレに配慮しない感想です。本当に最初から最後までほぼネタバレ有りで語ります。いっぱい改行してますのでスクロールしてどうぞ。
























劇中割とところどころで泣いたし、割と結構笑い声も出てました。
シリアスになりすぎない感じです。
主人公のラクシュミは田舎の機械工で、貧乏で学もない。でも技術があって人柄は評判がよく、美人の奥さんガヤトリさんと結婚します。
しかし奥さんが生理中、ボロくて汚い布で処理してるのを見てショックを受け、「生理用ナプキン買えばいいじゃない!」と意気揚々と買いに行くのですが、生理用ナプキンは55ルピー。

日本円にすると使い捨てナプキン1枚に千円程度だそう……oh……。

しかもカウンターの下から隠すようにこっそり包みを渡されて「闇取引かよ!」とキレるラクシュミさん。

値段を聞いて「純金製かよ!」とキレるラクシュミさん。ツッコミスキル高い。

ナプキンを見て、最初は夫の真心に感激した奥さん、値段を知って「家計考えて!返品して!」とキレる。使い捨て1枚千円だもんな!わかる!私も悪気なく1枚千円のナプキン渡されたら返品しろ!って言う!

そこからラクシュミさんの暴走が始まる。

「高価な生理用ナプキンが買えないなら、自作すればいいじゃない!妻だけじゃなく妹のためにもなるし両得!ナイスアイデア!」

現代日本の世界観で生きてると「そうだよなー!もっと安く作れるよなー!」とラクシュミに同意しそうになるのですが、この国はインドです。

生理は穢れ!生理中は家の中に入らず廊下で寝る!生理のことなんて口にするのも恥!男は知らなくていいこと!という世界観です。

そこに、学もなければ金もない、「生理用ナプキン?綿を布で包めばできるだろ?」って程度の知識の、やたら技術力だけはある職人のおっさんが生理用ナプキン作り始めてしまった。

奥さんは恥ずかしいと泣き出す、妹にも白い目で見られる。

ナプキンの試作品試してよ!と女子医大に突撃して、不審者扱いされた上に浮気を疑われる。

だけど、途中、あるきっかけで村医者から「生理中に汚い布を使うせいで、病気になる女性が多い。死ぬ人もいる」と聞いたものだから、ラクシュミさんは妻を救うためになると思って偏見も無視して爆走するのである。

ついに自分で「擬似生理実験装置」まで作りだし、その実験が原因でついに一家離散、村も追放に……地獄かよ、これ、2001年の話ですよ。

それでもこのおっさん諦めない。都会に行って、自作ナプキンと輸入ナプキンの材料の違いを突き止め、教授の邸宅に家政夫として転がり込んでナプキンの材料であるセルロースとナプキン製造機の情報をゲット!

ナプキン製造機の仕組みを知って「このマシン、俺なら安く作れるぜ!」と確信。いや、普通ならそこで「何でだよ」となるのですが、このおっさん、借金までして本当に作るのである。奥さんはもうそこにいないのに。

偶然知り合った都会ガール、パリーさんに、これまた偶然ナプキンの試作品を使用してもらい、パリーさんのお父さん(工科大学教授のツテ)で発明家のコンペ的なのに出品。最高の賞と賞金をゲット。新聞に載って借金も返して英雄扱い……ここでハッピーエンドかと思えば、この話まだまだ中盤である。

すごい発明をしたかと思えば、発明の内容が「生理用ナプキン製造機」だと知ると、みんな手のひら返して「汚ねえ!」となるのだ。そう、ナプキン製造機を作っても、女性の生理が「穢れ」である限り使ってもらえないのだ。
ここからはラクシュミというより、パリーさんの快進撃である。

ラクシュミは特許を取って結局ナプキンが高価になったら、安価に作れるようにした意味がないと考える。

そこでラクシュミは各地に製造機を普及する役に徹し、パリーさんが言わば営業を買って出る。そう、おっさんが生理用ナプキンを売ろうとすると変態扱いだが、女性ならナプキンを売りにいっても変態ではないのである。

DVに困っていた女性を助けて、ナプキン製造と行商に加わったことから、ラクシュミとパリーのコンビは「ナプキンの製造と普及」から「女性の職業訓練と自立」へとシフトしていく。

その活動が認められ、ついに国連にまで招致され、ニューヨークで演説をすることにまでなる。

ここに来て、やっとラクシュミは冒涜的な変態から国民の英雄にクラスチェンジするのでありますよ。

ところで、ここに至るまで散々尽くしてくれる第二のヒロインにして主役であるパリーさんは、明らかにラクシュミとビジネスパートナー以上の関係になっているわけですが、ラクシュミの元に奥さんから電話が来たと知った途端、スッと手を引くんですね。

その理由がもう、本当格好良くて、この二人は恋とか愛とかそういうんじゃないんだよ、男女だけど恋愛と友情を極めたところにいるんだよ!っていう美しさがあるので、ぜひ観て欲しい。エモい。

本当に、現代日本人の視点で見ると「ラクシュミが成功してからの手のひら返しがすげえ」とかンンッてなる部分もあるのですが、それは義務教育があって、国民全員に保険がついていて、衛生的な生理用ナプキンはもちろん、病院や診療所もたくさんある日本の価値観なんですよね。
それも、いつまでもある保証はない。

実話ベースとはいえ、脚色とかされているよ!という注釈が入ってます。
しかしどうやら村を追い出されたり、奥さんに逃げられたりは実話らしい。(ちゃんと戻ってきてくれたそうです)

「グレイテスト・ショーマン」しかり、脚色されて「感動モノ」に仕立てられた実話に文句を言う人もいるだろうけど、物語に仕立てなければ興味すら持たない人もいるわけで(私はグレイテスト・シャーマン観ても「バーナム効果」の言葉の元ネタの人だってしばらく気づかなかったぞ!)、日本ですら生理に大してもっと理解をと叫ばれてる昨今、これがインドで映画として作られた意味は大きいと思います。

というか、ドキュメンタリーじゃないんだから、素直に感動ものは感動ものでいいんですよ。無意味に人が死んで「生理用ナプキンの衛生さの価値がわかった」とかよくわからん泣かしネタとか入ってないし。ラクシュミとパリ―さんの関係がエモなのでいいです。

ドキュメンタリーに徹したら、インド映画の良さが全部ログアウトすると思うしな……。

ところで、インド映画なので突然歌い出したりはしますが、歌とダンスのインド映画を期待するとそこはだいぶ期待ハズレだと思うのでご注意を。
まぁ、生理用ナプキンを持ってダンスされても困るよな……。生理用ナプキンを持ってグリコポーズをキメてる日本版ポスターは、だいぶ攻めてると思います(褒め言葉)


せっかくなのでグレイテスト・ショーマンについてもそのうち書くよ。

とりあえず、「パッドマン」は単なる奥さん大好き変わり者の感動話ではなく、偏見との戦いの話であり、そしてゼロから始めるビジネスの物語でありますよ、という感想でございました。

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