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32.エディターとは

「今日から私は技師になります」と宣言したその日からエディターになれます。
もう助手の仕事はしません、と言い、助手の仕事を受けないで、仕事を待ちます。

「エディターは、その作品の最初の観客だ」と教えられました。
撮影された素材を見て、監督の意図を汲みつつ、素材のいいところを伸ばし、悪いところを目立たなくして、一つの作品へとつないでいきます。

台本通りにつなげば終わり、ではなく、分かりにくいところや話の流れが悪いところなどは構成を変えてみたり、なくしてみたりします。そのシーンだけでなく、全体のバランスを見て、映画という1本の作品を面白くするために緩急を付けていきます。

撮影中の苦労も、監督や他のスタッフさんの思いも、役者さんの頑張りも関係なく、すべては上がってきた画と芝居の力を見て判断していきます。
自分がつなぐ物語をすばらしいものにするために、エディターは日々考え、つないでいるのです。

さらに、エディターは、編集にまつわるすべてを把握していなければいけません。
カメラのこと、画質のこと、エフェクトのかけ方やデータの管理について。
デジタル化された頃は、助手の方がエディターより技術面に関して詳しい時期がありました。私もその時期に助手をやっていたひとりでした。当時は、新しい技術の分からないエディターを支えている自分に自信を持っていましたが、最近は、それではいけないと思っています。
エディターが編集を続けるならば、今の技術とワークフローを学び続けなければいけないと思うのです。

画と、物語に対しての責任を持つエディターは、そのために必要な技術とスケジュールについても把握しなければ、本当の意味での責任を持てません。

ワークフローを管理でき、助手の仕事を見守る余裕を持てる、フィルム編集の際のエディターはそういう存在で、助手が未熟な時は自分でも作業ができる人ばかりでした。

そして、エディターは編集部の長です。いざとなったら助手を守らなければなりません。
他の部署からとんでもない量の素材のデータ出しを1日でやってくれとか、
キチンと出したデータがおかしいなどのクレームが来た場合、助手が話をしても聞いてもらえない場合があります。
そんな時、その部署と戦うのはエディターの役目です。

その時に、ワークフローや必要な知識がなければ、太刀打ちできなくなってしまいます。

また、助手が他の部署に失礼なことをした時もエディターの責任になります。
それは自分の教育がダメなのであって、周りと一緒に助手を責めたりしてはいけません。
作品と自分の編集のために動いてくれる助手を育てるのも、エディターの仕事です。
すべては自分の責任なのです。


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