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夏のひとり旅大冒険記〜南フランス・スペイン編〜

5月12日に春学期の授業が終了し、長い夏休みに突入した。なんと9月まで授業がないので、実に3ヶ月以上もある。夏休みの間、留学生の多くは家族に会いに一時帰国する。私もニューヨークで一緒に住む夫と一時帰国しようかと日本行きのチケットを一度は予約したが、英語もまだへなちょこなのに呑気に日本に戻って一休みしている場合ではない!と思い返し、私だけチケットをキャンセルしてバックパックひとつで旅に出た。もう実は旅に出てから3週間ちかく経ち、現在私はアムステルダムにいるのだが(7カ国目)、ここらでここまでの旅を振り返ってまとめておきたいと思う。

雨の南フランス

行きたいところはやまほどあるのだが、留学中に会いに行くねと約束していた南フランスに住む友人に会うため、とりあえずプロヴァンス行きの片道切符を入手。

搭乗口に並んでいるとき前にいた青年に撮ってもらった。記念すべき初一人旅の始まり!

5月17日朝、ニューヨークJFK空港からマルセイユ・プロヴァンス空港に到着。バスで友人宅の最寄り駅まで。マルセイユを少し観光。

空をどんより雲が覆っている(嫌な予感)

在宅ワークの友人に邪魔しないようにするねえと言いながらリビングソファをしっかり陣取り爆睡(時差ボケ毎回ひどめ)。翌日完全復活を果たすが、雨が降らないことで有名な南フランスが、なんと以後一週間ほどずっと雨予報。雨の南フランスで一体なにすればいいんだよ…?となり、友人が仕事休める週末には南フランスに戻ってくる約束をして、急遽天気が良さそうなスペインのバルセロナに深夜便で飛んだ。ちなみにマルセイユからバルセロナまで1時間半くらいでついちゃうので、東京→大阪くらいの感覚。さらにスペイン入国時にパスポートも見られなくてまじで国内線みたいなかんじ。え?このまま出ちゃっていいの?ほんとに?私不法入国で捕まらない?とビビりながら空港をあとにする。調べたら、EU圏内でもシェンゲン圏というまた別のスペシャルグループに加盟している国同士の移動はスーパー楽ちんにしてるっぽい。

EU加盟28カ国内の22カ国と欧州自由貿易連合(EFTA)加盟4カ国の計26カ国は「シェンゲン圏(The Schengen Area)」という領域を形成し、これら26カ国の間では、EU市民であるかEU域外国の人であるかにかかわらず、旅券(パスポート)検査などの出入国審査(域内国境管理)が廃止されています。・・・ EUの基本目標のひとつは、市民がEU内を自由に移動し、居住し、働くことを可能にする「域内国境のない領域」を作ることです。

EU MAG Vol. 29 ( 2014年06月号 ) European Union, 2011, EP-EP

太陽の街バルセロナ

バルセロナ空港に深夜12時過ぎに着き、バスに乗って空港近くのドミトリーに泊まるため移動。知らない人がもうすでに寝ている二段ベッドの上の段に、起こさないように静かに荷物をあげてから水を買いにラウンジに降りた。すると女の子がスペイン語で誰かと電話をしながらインスタントラーメンを食べていたので、私も真似して自販機でラーメンを買って食べることにした。

「WAIWAI」という日本を思わせる初見のブランド

その子の前に座って食べようとしたとき、ちょうど電話が終わったようだったので「どこから来たの?」と英語で聞いたら、コロンビア(南米の国)と言ったみたいだった。どうやら英語は全く話せないようである。彼女は翻訳アプリに必死でなにかを打ち込み始め、それを英語に翻訳してスマホがその文章を読み上げた。それによると、彼女は今からオーストラリアで心理学者として働きたいので留学するらしい。その前に一人でいろんな場所を旅しているという。「明日の午後の便でシンガポールに行きます」と翻訳アプリが読み上げた。

私は、日本人だけどいまニューヨークで認知科学を学んでいる大学院生であること、南フランスから急遽バルセロナに来たこと、急に来たのでとくにスペインでの予定は立てていないことなどを翻訳アプリでスペイン語にして読み上げてもらった。お互いが話す言語が全くわからず、知っている単語がひとつもないため会話内容を憶測することすらできないのは初めてだった。わたしたちは翻訳アプリに頼り切って、通常の7倍くらい遅い速度で会話を楽しんだ。相手が次に伝えたいことを翻訳アプリに打ち込んでいる間、「次は何を言うんだろう…!」と変にワクワクしながら待っている時間が妙に面白かった。

「近くにいい公園があるそうだから、明日の朝よかったら一緒に行かない?」と彼女が誘ってくれたので、インスタグラムでつながって翌日朝8時にそのラウンジでまた会う約束をした。一人旅ってすげえ、こんなにすぐ友達ができちゃうのか…!と感動しながら部屋に戻った。

他人と一緒の部屋に寝るドミトリー(ホステルとも言う)で寝るのは人生でたぶん3度目くらい。この日は私が一番夜更かしだったので、とにかく誰かを起こさないようにめちゃくちゃ気を使って忍び足で自分のベッドまで戻り、明日に備えて全電子機器を充電器に繋いで寝た。朝のアラーム音で誰かを起こしてしまわないように目覚ましもバイブレーションタイプに切り替えたり、って色々考えながらこうやって他人のことを気遣いまくるの、すごい日本人っぽいなと自分で思った(本当日本人って素晴らしいよ自画自賛していこうよ)。

朝8時。時間通りにラウンジに降りたらまだ彼女は来ていなかった(想定内)。そういえばニューヨークで仲良しのコロンビア人の友人から「コロンビア人は時間にルーズ」という情報を得ていたので、気長に待つことにした。ここでついでにもうひとつ日本の皆さんに全力で伝えたいのは、「時間守るのまじ日本人くらいだよ」ってこと。これは、海外で社交活動をすると誰でも気づくと思う。外国人と約束すると、時間通りに来るのはだいたい決まって日本人だけ。どうやら日本人以外の時計は狂ってるらしい(ドイツ人は結構時間守るらしい)。

そして、結局彼女は現れなかった(これはさすがに想定外)。1時間待ってもメッセージが既読にならないのをみて、まあまだ寝てるんだろうなと思いひとりで街に出ることにした(3時間後、いま起きたまじごめん!とDMが来た)。

完璧な青空に満足しながら、市場で昼ご飯を調達して公園で食べたり、街を歩きまわったりした。ガウディ建築の前はどこも長蛇の列ができている。

バルセロナで出くわす人だかりはだいたいガウディ建築の前(名前は知らない)


9年前にも一度バルセロナに来たことがあって、そのときに一通りガウディ建築は見学させてもらったのだが、どうも「おおおなんかすげえなあ」以上の感想が出てこない。わさびもしょうがも柚子胡椒も社会人になってから美味しいと感じるようになったし、ビールとワインは夫の影響でほんの最近美味しさを理解し始めた私なので、アートの深みみたいなものを理解できるようになるには、たぶんあと20年くらいはかかるんだろうなと思っている。となると、バルセロナでやることオプションが途端に少なくなる。

友達何人できるかな in バルセロナ

そもそも、この旅の目的は、「世界中の面白い人に出会って自分をアップデートさせる!」であって、観光ではない。そこで、Meet upというソーシャルイベントの情報が得られるサイトで地元の人と出会えそうなイベントを探してみたところ、Language Exchange(違う言語を話す参加者たちが対話しながら言語を練習し合う場)がちょうどバルセロナ中心地で1時間後に行われるようだったので、急遽行くことにした。

そこには10人前後の人たちが集まっていて、国籍は見事にバラバラだった。ウクライナ、チリ、アフガニスタン、イギリス、イタリア人などなどだが、全員現在はバルセロナに住んでいるとのこと。彼らは私がただの旅行者だと知ると「観光せずになんでここにいるの?」とみんな不思議そうにしたが、地元の人たちに出会うほうが楽しいから来たと説明すると、とても歓迎してくれた。

みんな普通に平均4か国語喋れるらしい(え??)

たまたま隣になったCamilaというとても優しいチリ人の女の子が、英語でスペイン語を教えてくれた。彼らは全員、当たり前のように英語も流暢に話す(練習したいのはスペイン語とかアラビア語の人が多かった)。「ここではみんながそんなにたくさんの言語を話せるの?」ときくと、「うん、だいたいみんな平均4カ国語くらいは喋れると思うよ」とさらっと言うイタリア人男性。Language Exchangeというただでさえ言語習得に意欲的な人たちの集まりなのでバイアスかかってそうな気もするが、色んな言語が飛び交うその空間はかなり異次元で刺激的だった。

そのイベント後、地元のダンスパーティー?的なものがあるから行こうと誘われた。イケイケのクラブを想像した私はビビって一旦は断るが、そういうのじゃないと説明されおそるおそるついていくと、たぶん日本の盆踊り的なイベントが広場で催されていて大勢の地元の人が踊っていた。

このバルセロナを含む一体の地域はカタルーニャ州と呼ばれ、スペインのそれとはまた違う言語や文化を持つ人々が古くから住んでいる。彼らはスペインから独立を望み、5年ほど前に独立宣言をしたらしいが、スペイン政府がそれを拒み今も揉めているらしい。カタルーニャ人の多くはスペイン語ではなくカタルーニャ語を話し、自分たちはスペイン人ではない!と主張し続け自分たちの文化と歴史に誇りを持っている。このダンスイベントもどうやらカタルーニャのものだったらしく、彼らの伝統的なダンスと音楽を真夜中近くまでみんなで楽しんだ。私も「参加したい!」とその環に入れてもらったはいいものの、ダンスって本当に苦手で何度説明されても(しかもカタルーニャ語)結局できるようにはならなかったが、とにかく踊りまくった。

海外で出会う面白日本人たち

翌日、近所のバルで朝食をいただいた。スペインは、バルが朝早くから空いていたりして朝食を食べることができる。

もうなんでもないパンになにかが挟まっているだけで泣けるほど美味しいのなんでなの…

そのあと、SNSでDMをくれた日本人の方とランチをすることに。偶然にも同い年で現在バルセロナのビジネススクールに通っているのだという。すぐに意気投合し、ランチだけじゃ足りなくね?ってなって、そのビジネススクールを案内してもらうことになった(予約していたグエル公園はすっぽかした(お金だけ払った))。

ていうかバルセロナのごはんどこも美味しすぎ天国

彼も卒業後起業をする予定だそうで(私もその予定)、山の上にあるビジネススクールの芝生からバルセロナの街を見下ろしながら語り合って、気づいたら6時間も話していた。志ある人と話すのは本当に楽しい。

世界的に有名なビジネススクールIESE(お金持ちの別荘だったんかな?という綺麗で上品なキャンパス)

寂しくない一人ごはん

バルセロナといえばサッカー!な人も多いと思うが、ここもやはりあまり興味が湧かず(なんでバルセロナ来たんや)、多くのサッカーファンが応援歌を合唱しながら陽気に向かうサッカースタジアムを横目に通り過ぎ、地元の人たちに愛されているというバルに寄って夕飯を食べることに。

これめっちゃ美味しかった…

ひとりカウンターに座って、その店名物のフォアグラが乗っているお肉と少しのタパスとビールを頂いていると、隣に仲良しそうなカップルが座った。Camilaに教えてもらった数少ないスペイン語のレパートリーを駆使して「キセエラ アワ ポルファボール?(お水くれませんか?)」と店員さんに頼むと、その店員さんと隣のカップルがまるで孫が初めて立ったときに遭遇したみたいにほほえみながら私を見ている。やはり、どれだけ英語が通じる場所でも、その土地の言語や文化を学ぼうとする姿勢は現地の人に大変喜ばれる。日本でも、外国人観光客の方が一生懸命日本語話してくれると、嬉しいもんね。

何言ってるか全然分からなかったけどどうやら気に入られた様子。

久しぶりのひとり部屋

実はこの日の前日、ホステルで一睡もできず寝不足だった私は、この日は早くホテルに帰ってゆっくりすることにした。バルからホテルまで徒歩30分くらいの距離だったので歩いて帰ることに。海沿いを歩いていると、目の前に大きな虹が出現してなんか泣けた。

みんな虹に夢中

最近はどこもホテルが高くて、ここまでずっとホステル(だいたい30ドル〜80ドル)に滞在をしていたが、このときの私は「もう2度とホステルになんか泊まるもんか!」という気持ちだった(結局そのあとも度々泊まってるのだが)。

前の日泊まったバルセロナのホステルは4人部屋で、3人グループ(内2人はカップル)と私、という構成。夜中3時に酔っ払った3人がバタバタと帰ってきて、寝ている私を完全無視で普通のトーンで話し、そして超絶酒臭く、さらにそのカップルはそれぞれベッドがあるにもかかわらず私が寝ている下の段のシングルベッドに一緒に寝始めた。すぐにふたりとも大きないびきをかきながら寝始め、2時間後の朝5時には陽気な音楽の爆音アラームが鳴り出した(しかも全然起きなくて寝続けやがる)。朝6時頃その三人が出ていく頃、私はその日の夜泊まる一人部屋のホテルを必死で探していた。なのでこの日は、久しぶりのプライベート空間。涙が出るほど快適だった。一人旅はこうやって、試練と喜びが交互に来る。

幸福学×ガイドツアー

久しぶりにぐっすり寝た翌朝、エアビーで予約していた市内ツアーに参加。Positive Psychology(幸福心理学)を学んだというツアーガイドAidanが、バルセロナの歴史と「Exploration of Happiness(幸せの探究)」をかけあわせガイドツアーをしてくれた。ただのガイドツアーではなく、心理学をかけあわせた、というのが面白そうだなと思って予約をしたのだが、これとてもよかった。

資料を見せながら心理学の知識を教えてくれるホストのAidan

世界各国からバルセロナに観光に来ている人たちが10名ほど一緒に参加していて、ツアーは終始英語で。私の英語ヒアリング力がまだ乏しいので全部ききとれたわけではないが、スペインの歴史と心理学を巧みにつなげて説明してくれていて、とてもおもしろかった。

プチピクニックしたり瞑想したり


みんな超いい人だったまた会いたい!

サグラダさんと、広がる同志の輪

この日の夕方には南フランスに戻る飛行機に乗らないといけなかったので、ギリギリで、一応行っとくか的なノリでサグラダ・ファミリアへ(やっぱりなんかすげえ)。

9年前からかなり工事が進んでいて中がすっかり完成していた

数日前、私がバルセロナに来ているのをインスタで見つけてくださったフォロワーさんがDMをくれて一瞬だけでも会おうとなり、サグラダさんの前まできてくれた。

サグラダさんの前で記念写真を

彼のほうはいまマドリードのビジネススクールに通っているらしいが、来年スペインのビジネススクールを受験したいという彼の後輩(写真の女の子)が日本から来ていて案内して回っていたのだそう。

彼らとも意気投合し、一度はサグラダ・ファミリアいってらっしゃい!と見送ってくれたのだが、話足りないねってなって見学を早めに切り上げて(10分だけ見た)また合流してお茶しながら色々話した。このとき彼女が、「さやかさんがアメリカ留学に挑戦するっていう記事を何年か前に読んで、すごく背中を押してもらった。もう学生ではない年齢で海外に挑戦するのは無理かもとちょっと思っていたから、同世代の女性が挑戦する姿は、本当に励みになった」という言葉をくれた。

なんか、これ実はすごくうれしくて。これまでビリギャルって、「大学受験」の話という認識が強くて、中高生や子育て中の親御さんたちからメッセージをもらうことが多かった。それが、3年前私自身30代で初めて英語を真剣に勉強し始め、それから人生で初めての留学に挑戦したことで、私と同じ世代の方や人生の先輩たちからもメッセージをもらうことがめちゃくちゃ増えた。

何歳になっても、学び続ける!そういうかっこいい大人であり続けたい!というメッセージが多くの人に届いたようで、そして、その想いを共有してくれる同志が増えた気がして、すごく、すごくうれしかった。その同志に、このバルセロナでも会えて、わたしのほうがすごく励まされた気分だった。また挑戦して、本当に良かった。

また、世界のどこかで

ニューヨークに住んでもう少しで1年。当たり前だけど、「日本」と「ニューヨーク」は全然ちがったし、同じ外国でも「ニューヨーク」と「スペイン」も全然違うし、同じヨーロッパでも「スペイン」と「フランス」だって、全然違う。その土地独自の気候と歴史があり、地元の人が好んで食べる食べ物の傾向があり、ユニークな国民性が根付いている。比較対象が多ければ多いほど、日本のことも自分のことも少しずつ理解できるようになる気がするし、理想とするものもみえてくる。

片道切符だけとってヨーロッパの地に降り立ち、具体的な計画なく行きたいところに行き、会いたい人に会い、偶然の出会いやハプニングを楽しむ一人旅。この旅で出会ったひとりひとりに、「また、世界のどこかで必ず会おうね!」って言ってバイバイする。その度に、少しの寂しさと、次はどこで会うことになるんだろうというワクワクを胸にする。次はどんな出会いが待ってるだろう。一人旅は、私を大きくしてくれる。



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