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「旅のまなびデザイン」という面白さ 

日野社会教育センターと作った旅
『「人が育つ国」デンマークに学ぶ旅 23』のレポート第3段

 昨日7月4日、デンマークの旅zoom報告会を終え、旅のプログラムはすべて終了しました。「旅のまなびデザイン」にフォーカスして、旅を振り返ります。

ひの社会教育センターらしい旅


 学生時代からお世話になっているひの社会教育センター。社会教育施設であるセンターと、教員(Educater)である私が作る旅。「学ぶこと」について、うんと考えました。
 「来てよかった!」と思っていただけるよう、学びを最大限引き出せるよう、旅の学びをトータルデザイン。「仲間と学ぶ」「楽しく学ぶ」「もっと学びたくなる」を旅の学びのキーワードとしました。

大切な仲間たち

旅の学びを最大限にする仕掛け作り


 旅の仲間は、貴重な時間とお金を使ってデンマークまで来てくれました。忙しい仕事や学校をやりくりしたり、ご家族の協力を得ての参加。初めての海外旅行という仲間も。
 貴重な1週間の学びを最大に引き出すために、何ができるかとことん考えました。ネットで調べられるごく基本的な情報は事前に学ぶ。基礎情報をデンマークに来てから学ぶのはもったいない。基礎情報を日本で頭にいれた上で、何が知りたいかを頭に描きながら旅に参加する。旅の最中は五感をフルに使って学び、現地でしか聞けない事、本質に迫る質問ができるよう、学びを「旅の前」「旅の最中」「旅の後」に分けてデザインしました。


説明会でも事前学習会でもデザインをシェア


「旅の前」 事前学習で基礎情報と仲間作り


 オンライン事前学習を2回実施。旅の仲間が分担した見学先について調べ、3分ずつ発表。基礎情報を事前学習でインプットしました。事後報告会の練習も兼ねていました。
 2回の事前学習とも少人数で話をする時間を作り、出発前に何となく全員と声をかわした事があるようにしました。成田空港で会ったときに、初めましての自己紹介から始まらない仕掛けを作りました。コペンハーゲン空港で皆さんをお迎えした時に「わ!ホンモノだ!」と、私はミーハーな気持ちに。皆さんのバックグラウンドや住んでいる場所を知っていたので、初日からお話しがしやすかったです。


やっと会えた!コペンハーゲンでお出迎え


「旅の最中」 「ホンモノ」にデンマークで会う。


 澤渡夏代ブラントさんのご著書「デンマークの子育て・人育ち」を課題図書にし、事前学習で本を参考に民主主義についてお話しました。夏代さんには、金曜日の夜のさよならパーティーにも参加していただきました。夏代さんへの質問を事前に準備してきた仲間、持参してきた本にサインをもらった仲間も。

夏代さんのサイン会

 コペンハーゲンの廃棄所施設コペンヒル建設のドキュメンタリー映画が、今年の春日本で公開されていました。この映画を課題映画として観ていただき、木曜日の1日遠足ではホンモノを見に行きました。

建築家ビヤケの哲学が詰まったコペンヒル

「旅の最中」 様々な方法でふりかえり


 月曜日は、ソーシャルダイニングでの夕食後、車座になってブリーフィング。私が長めの自己紹介をし、その後デンマークに関する質問にいくつかお答えしました。隣の人同士で、初日の感想のシェアもしました。誰もいない静かな裏庭で、車座になってのおしゃべり。とても印象的な旅のシーンとなりました。

月曜日夜 車座になって

 水曜日の朝は3日目のふりかえり。まずは1分間静かに自分の声に耳を傾け、その後浮かんできたことを書き出します。書き出したあとは、2人一組で2分ずつシェア。一方は聞き手に徹し、話を遮らないよう伝えました。パートナーをチェンジして、何度か行いました。朝日の中、穏やかな良い時間が流れました。

水曜日の朝 フェリーのりばの待合広場で

 金曜午後は最後の振り返り。前回同様、1分間自分の声に耳を傾けた後、一週間の学びを絵に表しました。「絵なんて描けないー」と言う仲間も。「良いも悪いもない。みんな絵はかけるし、みんなアーティスト」と、私が日常的に生徒に言っている言葉をかけました。皆さん熱心に描いています、1人1分ずつ、絵を使いながら一週間の学びを発表して振り返りは終わり。
 図書館の一角にある、この大きな机。地元の工房の作品で、図書館でずっと大切にされている机です。3月に下見に来た時に、最後の振り返りはこの机で!と決めていたので、大切な仲間と絵を書きながら振り返りができたのは、本当に幸せなひと時でした。

皆さんの豊かな絵
大きな机を囲んで最後のふりかえり


「楽しく学ぶ」


 デンマークにいるだけで、見るもの感じるものがたくさんあります。学ばなきゃ!と気負いすぎず「ただデンマークにいること」をとことん楽しむのも大切です。ご機嫌でヒュッケで良い雰囲気作りのプロ、ひの社会教育センターの二人のスタッフ。仲間に気を配りつつも、いい感じでゆるく、真っ先に楽しむ姿勢。彼女たちの「楽しく学ぶ」姿勢に本当に感謝です。そして、旅の仲間が皆いい感じに混じり合い、一緒におしゃべりしたり、大笑いしたり、全力で遊びも学びも楽しむ大人の姿、かっこよかったです。中学生と大学生の仲間に、カッコ面白い大人を見せられたと思います。

「旅のあと」 報告会までが旅


「帰るまでが旅」ではなく、今回は「報告会までが旅」です。学びが一番定着する方法は「人に伝える・教える事」だと言われています。帰国後noteで担当見学先についてまとめてもらいました。ネットで分かる情報ではなく、皆さんの気づきや驚き、学びを書いてもらいました。

 noteに書き記した後は、報告会です。報告会は事前学習と同じ形式で、スライドを使って1人3分ずつの発表。仲間が知り合いや友人にお知らせしてくれたお陰で、当日は90人を超える方にご参加いただきました。「皆さんの報告が、とても生き生きとわかりやすかった。」と報告会に参加してくださった方からとても嬉しい感想をいただきました。
 緊張しながらも、それぞれの個性と感性の感じられる発表。終わった後のほっとした顔。「宿題が大変だった」との声も聞こえましたが、自らの学びと仲間の学びを知る、よい機会になったと思います。私は旅を思い出しながら、しみじみ仲間の発表を聞いていました。

「旅のあと」 緩く繋がり続ける

 濃密な1週間を共に過ごし、語り合い、大笑いし、遊んで学んだ仲間。旅の後も緩く繋がり続けられるよう、オンラインサロン「PYT(ピュット)」を立ち上げました。
 仲間がお互いの挑戦を応援したり、繋がって何かを一緒にしたり、相談しあったり、ただただおしゃべりする場。今後旅を重ねる度に、サロンメンバーが増えて、いずれは全国組織?なんて夢見てます。

目指したのはwin-winの関係

 事前説明会で、何度も「私達は見学先の日常にお邪魔する身」ということをお伝えしました。どこの見学先も忙しい日常の1−2時間を割いて、私達を案内してくださいます。「来てもらってよかった」と思われるゲストで有りたい、一方的に私達が受け取るだけではなく、見学先にも何か残せる存在でありたいと考えていました。仲間が事前に学び、それぞれの知識や経験や好奇心から、本当に深い質問をたくさん投げました。見学先の方たちも、時にアツく、考えたり立ち止まったりしながら、真剣に答えてくださいました。  
 最終日に見学したカルチャーハウスのケネットさんは、2時間の案内が終わった後、「こんなに熱心なグループは、デンマークを探してもいない。皆さんの質問のお陰で、僕も新しい視点ができた。」と言ってくれました。
目指していたwin-winの関係になれた、とこの時深く感じました。


カルチャーハウスのケネットさん


ラーニングピラミッドに当てはめると


 「旅」を軸に、様々な方法で学びを深められる仕組みをデザインしました。ラーニングピラミッドに当てはめてみると、様々な感覚刺激を通じ、受動的・能動的に学ぶ仕掛けになったと思います。学びのトータルデザイン。いろんな学びの仕掛けが良い方向に動いたと感じる場面が多く、旅の学びのデザインの面白さに気付きました。

学習の定着率のモデル「ラーニングピラミッド」

最後に旅の仲間の感想をシェアします。

ツアー中の振り返りは頭の整理ができて良かったです。振りかえりをする手法も真似したいと思いました。久しぶりというか何十年ぶりに絵を描きました。

事前に皆さんと少しでも面識があったのが旅のスタートとしてとても安心できよかったです。

事前学習や途中、最後の振り返りと、全て違った手法で面白かったです。頭の中が整理出来ました。

事前勉強会をするという初めての経験でしたが、この意味はとてもあったと思います。

事前学習会は宿題が大変でしたが、皆さんの発表を聞くことがとても有意義でした。

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