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試験英語と実用英語

英語学習相談にいらっしゃる方は、もちろん初級者が一番多いのだけど、英検1級とか、TOEIC900点代のかなりの上級者で、そこから先を相談されることもある。
私も実感として思うのだけど、かなり英語が出来ると言うレベルに達しても、本当の意味での「実用」にはまだ手が届かない。ニューヨークタイムズのような高級紙の記事にはじき返されると、これだけ勉強しているのに・・・と、もどかしい思いが募って当然だ。

そこまで英語が出来る人は、みんな努力家なので、何が足りないのだろう?と考えてしまい、かなりの確率で「ボキャブラリー・ビルディング」か「文法」に目を向けてしまう。正直言うと私もそうだった。語彙が豊富な人、文法を間違わない人にコンプレックスがあって、勉強に余裕も出てきたここで補っておこうと思ったこともあったかもしれない。

だが、残念ながら、分厚いボキャビル本は正解ではない。

問題は身に染みついてしまった「受験勉強体質」と「受験向け勉強法」なのだ。

受験英語じゃダメだと言う人は多いが、どこがどうダメなのかをわかりやすくあげている人は少ない。実際は使わないことを多く覚えなくてはならないので無駄でぐらいのイメージで「受験英語はダメだ」と言っている場合が多いのではないか。また、正確に英文和訳することに目を向けすぎて、一度和訳しないと不安になるので、無駄に脳の作業量を増やしてしまっているのは間違いない。

では、英文和訳以外にも受験英語は無駄なことを教えているから役に立たないのだろうか? 受験向け勉強法の問題は、当たり前のことだが、テスト対策だという点だ。テスト用に製作された「英語力を判定するのに最適な」英文を対象にして、出題意図に沿って正解を出す。対策用問題集で練習するうちにこのスキルが鍛えられていくのが、受験向けの勉強だ。

問題集でなくても受験に役立つことを考えている教材であれば、テストには出ないような部分はそぎ落とした、コストパーフォーマンスの良い英文になっている。また、英語が教科であるため、例文製作では、数学や理科や社会の知識がないとわからないような英文にしないように気を配っているはずだ。

現実の世界で使われている英語は自分の書きたいことを書くためのツールで、英語の実力を測るためのものではない。読者をがっちり掴みたい文学以外にも新しいプログラミング言語や新システムのマニュアルも理系の論文、マニア向けの記事からポルノまで、およそ日本語で書かれているものなら英語でも書かれている。読む人に向けて書かれてはいるが、読む人が英語学習中かどうかなんてことはまず考慮されていない。

人間であれば母語は自然に使えるようになる。だが、自然に読めるようにはならない。識字率が高い国で暮らしていると忘れそうになるが、読み書きができるようになるには、また別の学習が必要だ。学校教育は主にそのためにあって、英語が母国語の人も、子どもの時から学習を重ねて、様々な英文が読めるように自分を鍛えていく。

すごく幸いなことに「読解力」は、使う言語が何であれある程度共通して使えるスキルなので、日本語で読解のスキルを手に入れた人は、これから読解力を鍛えようとする英語圏の子どもたちよりずっと早く英文が読めるようになる。

そうは言っても、ボキャブラリーと文法がわかれば「自然に読める」わけではないのだ。実際にたくさんの英文を読む実地訓練はどうやったって必要。

ということで、結論

使える英語を身につけたかったら、なるべく早く試験勉強と英語教材にサヨナラして、自分が読みたいものを読み、書きたいことを書き始めましょう。もちろん、たくさん話を聞いて、たくさん話すでも構いませんが、時間とチャンスを考えると、たぶん読み書きの方が現実的です。(この辺は私が読み書き大好きなので、割り引いて受け取って下さいね)

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