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知らないことを、知った 映画「サーミの血」(ネタバレ)

・北欧の先住少数民族の話
・映画から受け取った課題感
・結局アイヌの関連文献を読み始めた

スウェーデンの少数民族をテーマにした映画。
唐突に終わった感じのある映画だったし、あまりに背景を知らなすぎてちょっと理解が追いつかないところもあったが、スウェーデンの自然が広大で綺麗だった。

全く知らなかったのだが、スウェーデンのラップランド地方に住むサーミ族は、迫害を受けていた。基礎教育だけは受けさせるという国の方針なのだろうか?自分たちの言葉を封印され、標準スウエーデン語を強制される寄宿舎生活をさせられる。高等教育を受けることは許されず、そのまま部族の元に返される?のだろうか。映画からはそう読み取った。

このお話は、その寄宿舎を脱走して都市で育ったサーミが主人公だ。映画冒頭、彼女はすでに孫のいる白髪で腰が曲がった、老女だ。長年会わなかったサーミの妹の葬式に主人公が自分の子供?と参加しようと会場まで行くが葛藤があり、叔母の家に泊まろうという息子と孫に嫌だと行ってホテルに泊まる。葛藤があるんだな、とわかる描写がたくさん出てくる。国立公園の中に建つこのホテルでは”スウェーデン人”がサーミのことを嫌そうに話すシーンなどが挿入されていて、今でも差別意識が根底に残っていることが分かる。

最初の方は、親子の物語として見た。このまま族のしきたりに従って生きることが幸せで、外に出ることは不幸せになる、という母と、外に出たい娘。見ている方にもどちらが幸せなのかは分からないけれど、母が知らない場所に行かせたくない、傷つく娘を見たくないという思いは痛いほど分かる。

主人公は、妹にひどいこと言ってそのままラップランドを後にするのだが、その後の展開はちょっと理解が難しかった。どうやって学校に潜り込んだんだろう?主人公はドイツから移住してきたということになっていたがスウェーデンではいけば学校は入れるものなのか?

いずれにしても、課題があるんだ、ということはわかった。

・差別問題
・古い暮らしを「守る」わけではなく、モトクロスやトラックも利用して「伝統的な暮らし」を国定公園の中で営む権利を主張する現代サーミ良いか悪いか問題
・「国」と少数民族のあり方の問題
・母が子供をどう手放すか、子供が親をどう手放すか、という問題
・自由が幸せなのか、という問題

回答は示されないけれど、映画の主人公は(おそらく)息子も孫もいて(嫁は謎)、都市で仕事を得て、都市で年齢を重ねてそれなりの幸せは掴んだんじゃないかなと思われた。

タイトルの「サーミの血」は1人1頭鹿を持ち、その印に鹿の耳を傷つけるというサーミの慣習、主人公が迫害を実際に受けた際の傷跡に由来する。

「先住(少数)民族」はほとんどの近代国家に存在し、大抵迫害されている。この映画を見てから、日本の先住民族「アイヌ」についてほとんど知らないことに思い至り、関連文献を読み始めた。

世界は知らないことだらけだな。でもこうやって、圧倒的な表現力で知らなかったことを教えてくれるから、映画は面白い。

・公式サイトより
「サーミ人とは、ラップランド地方、いわゆるノルウェー、スウェーデン、フィンランドの北部とロシアのコラ半島でトナカイを飼い暮らし、フィンランド語に近い独自の言語を持つ先住民族。映画の主な舞台となる1930年代、スウェーデンのサーミ人は他の人種より劣った民族として差別された。」
http://www.uplink.co.jp/sami/

・北海道には北方民族の資料館や関連施設がたくさんある。ちょっとづつ行ってみたい
http://www.irankarapte.com/content/facilities.html

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