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【3人目のさや】

3人目は、私が小学校高学年くらいの頃に出会ったクラスメイトだ。

彼女は絵が上手かった。当時流行っていたマンガのキャラクターをサラサラと描く姿がかっこよく、彼女の眼差しも好きだった。それは今思えば、私の憧れる大人、あるいは芸術家の目だ。その人だけが没頭できる世界を持ち、どこか遠くを見つめる夢うつつな面と、現実的で鋭く硬質な面も忘れずに併せ持つ、美しい目だ。

中学生の頃、授業中に手紙を書いて、人づてに回すのが流行った。手のひらサイズの紙に、今の気分や思いついた事、好きなものについて書くのだ。貰った手紙を、プラスチック製の収納ケース(洋服用)にポンポン入れていたら、中学を卒業する頃には、神社でおみくじを引く時の様に、ガサガサと漁れる位には溜まっていた。一つひとつ、折り方が工夫されていて、ハート型だったり長方形だったりして、可愛くて捨てられなかったのだ。

彼女とは中学校も同じで、手紙のやり取りをしていた時期があった。手紙のやり取りの細かいところはもう覚えていない。ただ、手紙の中で、当時好きだった物語の二人組の男の子の名前をあだ名として呼び合っていた事は覚えている。

そして名前。漢字も響きも先進的に感じてかっこよかった。一九九九年の当時は、マンガのキャラクターの様な名前もチラホラ同級生にいた頃で、キラキラネーム過ぎない新しさが好きだった。私の名前が性別が分かりにくい漢字と響きで、ややキラキラ寄りだったので、余計に憧れたのだろう。

そんな訳で、三人目だけは、実在する人物だったのである。

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