ほどよい抵抗感

 フランス人は、あのフランス料理を生んだほどだから、食べ物に関してはこだわる国民。そのフランスではわりと一般的に食べられるようだ。馬肉は。
 フランス、イタリア、スイス、ベルギー……といった国々では、馬の肉を食べることにあまり抵抗がない。

 一方、イギリス、アメリカという国は「馬を食べるなんて」という風潮がある。馬と人間との歴史的関係で、国民感情が違うのだろう。
 特に、馬を唯一のパートナーとして、共に西部を開拓してきたアメリカにおいて抵抗が強いのは、わかる気もする。近年、馬を食肉として禁止する法律までできてしまったほどだ。

 もっとも、食文化というのはそれぞれの国で、人々の歴史と共にある。お互い、他人に対してあまりさしでがましいことは言いたくないし、言われたくもないものだろう。

 日本でも、地域によって違う。昔から長野県伊奈地方や、山梨県、福島県会津地方、青森県南部地方、それに熊本県では、馬肉に対する抵抗感が少ない。
 あの細川ガラシャを妻に持つ細川忠興が食べたという記録もあるので、四百年前から食べられているようだ。

 個人的に抵抗感のあるなしはちょっと置いといて、では馬肉の栄養はどうなのかというと?……これが凄いのだ。栄養価が高いのに、低カロリー、低脂肪、低コレステロール、低アレルギー食品である……と、なんだか健康食品の宣伝をしてるみたいだが、実際にそうであるらしい。
 とくに、女性や高齢者にうってつけの食品として注目されている。フランスでは、「医者が病人に馬肉の食事を勧める」というから、なるほど効果があるのだろう。
 ズバリ、端的に言ってしまえば、「太りにくい肉」なのだ。

 これがあまり有名になってしまうと、女性たちが殺到するに違いない。なので、これはあまり大っぴらにしないでおきたい。今ぐらいの「ほどよい抵抗感」の中、我々はゆっくりと、うまいさくら鍋や馬刺しをいただこうではないか。

この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

6

藤井青銅

食の歳時記

我ながら珍しい「料理エッセイ」。元はラジオ番組のために書いたものです。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。