115.リサーチャー

 リサーチャーという職業がある。これはたとえば、ある番組で年の差夫婦の特集をやるとする。
「奥さんの方が二回り年上の夫婦、いないかな」
「で、もちろん奥さんは美人ね」
「元教師と教え子だったとか、そういう出会いのドラマが欲しいな」
「うん、欲しい欲しい」
 などと、ディレクターとぼくたち放送作家が勝手なことを言う。
 すると一週間後に、
「見つかりました」
 という返事がかえってくるのだ。さらに、
「年齢差は二回りより上ですが、いいですか?」
 とまで言ってくる――リサーチャーとは、こういう職業だ。

 どんな無理難題を出しても、彼らはちゃんと該当する人々を探し出してくる。いま、多くのテレビに登場しているちょっと変わった人生や珍しい境遇を持つ市井の人たちは、みんなこうしたリサーチャーたちの努力によって発掘されているのだ。
 だが、この仕事はまだ、いったい何をやる職業なのか世間に認知されていない。番組によっても放送作家のジャンルに入れられたりADのジャンルに入れられたり、評価が定まらないケースがある。作家とも演出とも違う別の働きをしたということで、きちんと評価すべきだと思う。
 なにせ調べものはおろか、電話取材ですら苦手なぼくにとっては、驚嘆すべき調査能力なのだ! ひょっとしてリサーチャーは、この国の公安組織よりも豊富なデータを持っているのじゃないかしらん。

【モンダイ点】
◎ぼくたち放送作家の認知度だってたいしたことないというのに、人のことを心配してる場合か?

(ステラ/2000/7/5)

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