118.法廷画家

 法廷画家――と呼ぶのだろうか? 裁判の時、いつも被告の絵を描いている人たちのことだ。ああした絵には、
①似顔絵ほど本人に似てなく
②微妙にイラスト風で
③微妙に芸術風で
④誰が描いてもみんな似た絵
 という共通点がある。
 あの方たちは法廷専門の画家なのか? 普段どんな生活をしてるのか? あの独特な画風はどこで学ぶのか? 一号いくらの画料なのか?……と、法廷画家の謎はつきない。 

 ところで、注目の裁判が重なった時なんか、
「いつもの画家の先生を他社にとられました」
「なんだと!」
「でも、代わりの絵描きを連れて来ました」
「でかした」
「アニメ同人誌のイラストを描いている人です」
 ……なんてケースはないのか?
 この場合、目がキラキラして、ヘンに洗練されてキャラが立ったアニメ調の被告の絵になるのだろう。楽しみだ。
 すべての分野で規制緩和が進んでいる世の中。法廷の絵も、もっと違うタッチがあってもいいのではないか。たとえば、
○本格的な洋画家――傍聴席で、ベレー帽かぶった男がイーゼルを前に絵筆で遠近感を計っていると、うっとうしい。
○CG画家――傍聴席にでっかいパソコンを持ち込み、これもうっとうしい。
○ピカソみたいなキュビズムの画家――アナウンサーが「被告は目に涙を浮かべ」と言っても、どれが涙だか。いや、その前に、どこが顔なんだか。
○山藤章二――個人名で申し訳ないが、絵の横に「泣く泣くも/減刑をとる/被告席」なんて戯作文がついてるんだろう。

【モンダイ点】
◎法廷画家の個展には、どんな絵が並ぶのだろうか?

(ステラ/2000/7/26)

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