124.何もしていない?

 肌が美しく、いつまでも若々しいことがウリの女優さんたちがいる。先日もある番組でそういう女優がゲストに来て、
「どんなお手入れをしているんですか?」
 という質問に対し、
「いえ、ほんと、何もしていないんですよ」
 と答えていた。
 ま、よくある答えである。それでもしつこく尋ねると「洗顔をマメに」とか「ファンデーションだけ」とか「睡眠はたっぷりとりますけど」といったおざなりな回答が返ってくる。もうずっと前から、女優たちはたいてい、こう答えてきた。
 ここに違和感を覚えないだろうか? この感覚は以前どこかで経験した……とぼくはずっと感じ続けてきて、最近ようやく思い当たった。

 学生時代。成績のいいやつに「何時間勉強してるんだ?」「家庭教師つけてるのか?」などと聞いて、
「いや、ほんと、何もしてないんだよ」
 と答えられた時の感じに似ていたのだ。それでもしつこく尋ねると「教科書をじっくり読むだけ」とか「ちゃんと寝てるよ」とか「いやぁ、ゆうべもテレビ見ちゃった」というおざなりな回答。やっぱり似ているではないか!
 こっちは単純だから「そーか。別にガリ勉しなくてもいいのか」と安心して教科書だけ読んで、たっぷり寝ていた。と、もちろん実は必死に勉強していたそいつは、一流大学から一流企業にちゃんと就職。そしてぼくは、このていたらく。
 やっぱり、何もしなくてそんなにいい点数がとれるわけがなかったんだ!

【モンダイ点】
◎「作家って、アイデアを得るためにいろいろ本を読んだりするんでしょう?」「いえ、ほんと、何もしてないんですよ」

(ステラ/2000/9/13)

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