178.バランス

 このコラムで米のテロ事件に端を発するテレビ報道について書くべきかどうか、迷った。しかし、歌手は歌うことによって、野球選手は野球をすることによって自分の勤めを果たすしかないように、ぼくも普通に書くことしかないのか……と思ったわけです。

 今回に限らず、なにか大変な事件・事故がおきた時は、現場から誰かがレポートする。
 レポーターは現場の大変さをスタジオのキャスターに、そしてそれを通して各家庭に伝えたい。しかし、どうしても伝えきれない部分がある。さらに、各局・各番組でみんなが同じことをするわけだから、他よりも強い印象を与えたい。
 だから現場レポートというのは、必要以上に興奮した「自己アピールの興奮合戦」になってしまうんですね。で、その興奮ぶりについては、
「やりすぎだ」
「はしゃいでいるんじゃないか?」
 という批判の声があがりやすい。
 ところが、それを受けるスタジオのキャスターは、反動として必要以上に冷静になろうとするんですね。冷静な態度そのものはいいのだが、それは実は、(みなさん、冷静になりましょう)
 ではなく、
(私は、こんなに冷静です。動揺してません。どう、人間の器が大きいでしょ?)
 とアピールしてるように感じることがないか? これまた同様に「自己アピールの冷静合戦」ではないかと思うのだが……。

【モンダイ点】
◎カメラやマイクの前で普通でいることが、いかに難しいか……。

(2001/10/10)

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