見切り発車

先日、知り合いから突然「ステイホームのお供に『誰もいそがない町』を読み返してます」というメールがきた。

かつて『誰もいそがない町』(ポプラ社)という本を出したのです。
収められているのは「ショートストーリー」と「童話」と「詩」と「エッセイ」が混ざったような、ちいさな話たち33話。自分でもジャンルはよくわかりません。というか、そういうものを書きたかったのです。

この本はファンタジーとか懐かしさとかの要素が強く、「藤井青銅らしからぬ本」と言われました。仲のいい編集者は「ウソの藤井青銅」と言ってましたね。あはは…。ウソかもしれないし、ホントかもしれない。そんなの本人だってよくわからない。
でも案の定あまり売れず、そこのところは「藤井青銅らしい本」でしたが。

その後「YUBIO」というケータイサイトで、同じシリーズを連載しました。スマホ時代になる少し前です。ここでの評判がとてもよかった。
「ふだん本は読まないけど、ケータイだから読んでみました。面白かった」
という感想が多かった。
「そうか。いま街の本屋さんは減っているし、本を読まない人が増えているという。でも実は、出会うチャンスがないだけなんだ」
と気がつきました。
「本は売れなかったけど、ケータイの画面というパーソナルなスペースに直接届けば読んでもらえるんだ」

ケータイサイトでの連載終了後、電子書籍ブームがきました。
そこで、これまでに発表したものの中から10本ほどを選んで『これはみんな、きみの話』(日本文芸社)として電子書籍をリリースしました。これも評判がよく、電子書籍のランキングベスト10入り。ビックリしました。
第二弾『これはきみが、失くした話』(日本文芸社)も出しました。

現在、紙の本『誰もいそがない町』も二つの電子書籍も、すでに手に入りません。けれどいまも時々「あの本が好き」と言ってくれる方がいる。…とここで、冒頭の「ステイホームのお供に」につながります。

「ならば、もう一度あらためて読者に届けたい!」
と思ったのです。…が、藤井青銅ごときが「もう一回本を出したい」とどこかの出版社に提案しても、引き受けてはくれないでしょう。なにせ売れない作家ですからねえ……(カナシイ)。
それに、このシリーズは読者に直接届けた方がいいとわかっています。

うん、そうだ!
これまでの全話からセレクトして、ここで販売しよう。手作りで、ちいさな話にふさわしく、こじんまりと。どうやらそういう時代になってきているようだし。
というわけで、これからリリースしていきます!(と表明しとかないと、いつまでたってもやらないから)

お読みいただき、ありがとうございます。本にまとまらないアレコレを書いています。サポートしていただければ励みになるし、たぶん調子に乗って色々書くと思います! よろしくお願いします。